神戸大OBの山中伸弥教授「破天荒に過ごした6年間、自由な発想をもたらした」 120周年式典で講演
自身の神戸大医学部時代やiPS細胞研究の軌跡を語った山中伸弥京都大教授=神戸ポートピアホテル
神戸大学の創立120周年記念式典が25日、神戸市内のホテルであった。医学部OBで2012年にノーベル医学生理学賞を受けた山中伸弥京都大教授が、約600人を前に講演し、自身の学生時代を「変わっていた。多少破天荒に過ごした6年間が、その後の自由な発想をもたらした」と懐かしんだ。 【写真】 大学紛争で開かれず…神戸大学で52年ぶり卒業式 神戸大は1902年、官立の神戸高等商業学校として設置された。
山中教授は大学でラグビー部に所属し、毎日のように練習に励んで体を鍛えた。結婚の際、仲間から贈られたラグビーボールには「体ばっかりでもね 頭もね」などと寄せ書きがあったと紹介し、笑いを誘った。 医学に携わったのは、大阪府東大阪市で町工場を営んでいた父がきっかけだった。仕事中のけがで輸血を受けた際、当時治療法がなかった肝炎にかかり「僕のような患者を治してほしい」と頼まれた。
だが、研修医時代に父は亡くなり「何もしてあげられず、無力感を覚えた」。研究で病気の克服を-と志したという。 大阪市立大大学院を経て渡米し、研究を深めた。帰国後は、奈良先端科学技術大学院大などで後の飛躍の土台を築いた。 ヒトの皮膚細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製に成功して15年がたち、ヒトの血液から拒絶反応が起きにくい同細胞を作って提供する取り組みを進めており、「マラソンでいう後半戦。早くて5年でより一般的な治療になれば」と期待を込めた。 将来の世の中について、人工知能(AI)の発達で人間の仕事は減る一方、健康寿命は延びるとの見方を示し「かつて経験したことのない変革が求められる。神戸大からしなやかな人材の輩出を」と、母校にエールを送った。 式典では、神戸大の藤澤正人学長が「輝く未来に躍動する知の拠点として、世界に誇れる先端研究大学を全構成員で目指す」とあいさつした。OBで経済法の確立に貢献した根岸哲名誉教授も講演した。