中国は先日、ロヒンギャ問題を解決するため、仲裁に入った。その直後、11月
22日にミャンマーとバングラディシュの代表団が会い、中国が提案した3段階
の解決策を開始することで合意した。合意を仲裁したのは中国なのに、なぜか
国際マスコミの報道には、中国が仲裁したと一言も書いていないものが多い。
★ミャンマー「ロヒンギャ」問題の深層
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
インド洋に面したミャンマーの西部、ラカイン州の北部に住む数十万人のイス
ラム教徒(ムスリム)の勢力、欧米日などのマスコミで「ロヒンギャ」という名
称で報じられている人々は、ミャンマーにとって、まさに「まつろわぬ民」であ
る。彼らが住むラカイン北部は、バングラディシュと長い国境を接しており、彼
らは戦後ずっと、断続的に武装蜂起しながら、仏教徒の国であるミャンマーから
分離し、ムスリムの国であるバングラディシュの一部になろうとし続け、失敗し
ている。
かつてこの地域は英国の植民地だったが、第二次大戦中に日本がやってきた。
仏教徒の組織が日本を支持したのに対し、英国はラカイン(当時はアラカン)の
ムスリムたちに、日本を追い出したらムスリムの国として独立させてやると約束
し、仏教徒とムスリムの戦いとなった。戦後独立したビルマ(今のミャンマー)
は国民の9割が仏教徒だった。ムスリムは、ビルマでなくバングラディシュ(当
時は東パキスタン)の一部になろうとしてパキスタン政府に掛け合ったが、内政
干渉はしないと言って断られたため、独自に武装蜂起した。
http://en.wikipedia.org/wiki/Rohingya_insurgency_in_Western_Myanmar
Rohingya insurgency in Western Myanmar From Wikipedia
ビルマ政府は、自国から分離してバングラ編入したがるラカインのムスリムを
敵とみなし、国籍を与えないできた。北ラカインのムスリムは、バングラディシ
ュのベンガル語とは異なるロヒンギャ語を話し、昔からラカイン州に住んでおり、
外国ではロヒンギャ人と呼ばれている。だが、ミャンマーの政府と世論は、バン
グラ編入を目指して戦いを挑み続けてきた彼らを、ミャンマー国内の少数民族と
みなさずベンガル人の一部だと言い、「ロヒンギャ」という名称を使うことを
嫌っている。(ミャンマー側の意向に気を使うのはここまでにして、以後はロヒ
ンギャをカギカッコなしで使う)
独立から最近までのミャンマーはずっと、中央政府と各地の少数民族との内戦
の歴史であり、北ラカインのムスリムと政府軍の戦いは、それらの内戦の一つだ
った。だからミャンマー人は、これを一方的な虐殺でなく内戦、反乱軍との戦い
だと言う。80年代にはアフガニスタンで米CIAに訓練されソ連軍と戦ったイ
スラム聖戦組織(のちのアルカイダ)が、北ラカインのムスリムの分離独立を支
援するなど、内戦が断続的に続いてきた。パキスタン、サウジアラビア、信仰が
過激化したインドネシアなど、イスラム世界の各地から支援された北ラカインの
ムスリムが、仏教徒のミャンマー政府に対し、イスラム世界の拡大のための戦い
(聖戦)を挑み、ミャンマー政府軍から反撃・弾圧されてきたのがロヒンギャの
歴史だ。
http://edition.cnn.com/2017/11/25/asia/myanmar-buddhist-nationalism-mabatha/
'It's not genocide,' say Myanmar's hardline monks
ミャンマーは2015年の総選挙後、アウンサン・スーチーの政党NLD(国
民民主連盟)と軍事政権が連立を組み始め、民主化が実現され始めた。それを待
っていたかのように、16年10月と今年の8月、北ラカインのムスリムが、地
元にいる政府の軍や警察に対して蜂起し、その後政府軍がムスリムを大弾圧し、
60万人が難民化してバングラディシュに逃げ込む事態に発展した。昨年と今年
のムスリムの蜂起を主導したのはARSA(アラカン・ロヒンギャ救世軍)とい
う新たな組織で、彼らは従来の組織よりも相当巧妙だ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Arakan_Rohingya_Salvation_Army
Arakan Rohingya Salvation Army From Wikipedia
ARSAは、北ラカインのムスリムの村々と協力関係を作り、村人たちと一緒
に、数百人規模で、自家製の粗末な武器を持って夜中に地元の警察や政府軍の拠
点を襲撃、今年8月の場合、北ラカインの30か所で同時多発で襲撃を挙行した。
驚いた政府軍は、これをムスリムの一斉蜂起とみなし、大規模な反攻を行った。
村人らは、粗末な武器しか持っていないものの大人数で襲撃し、軍や警察の側が
発砲したり、大げさな激しい反応をするように仕向けた。事件後、ARSAは
インターネットのソシャルメディアを活用し、ミャンマー政府軍がムスリムを大
弾圧、焼き討ち、虐殺、難民化させたことをイスラム世界に広く伝え、世界的な
ミャンマー非難運動を確立することに成功した。
http://www.irrawaddy.com/opinion/editorial/do-not-lose-sight-of-arsa.html
Do Not Lose Sight of ARSA
バングラディシュの難民キャンプでは、ミャンマー軍がいかに残虐で極悪かを
難民たちが語り、それがそのままアルジャジーラ、イラン国営メディアから米欧
の権威あるマスコミや国際人権団体までの喧伝機関によって流布された。ARSA
は、ミャンマー軍部を激怒させ、世界が人権侵害と非難する過大な弾圧をやるよ
うに仕向ける方法を知っていた。これまで熾烈な弾圧ばかりやってきたミャンマ
ー軍部は、簡単に引っかかった。大弾圧後、軍部は、外国人を現場に入れない
おなじみの政策をとり、難民の証言が誇張されていたとしても、それが事実とし
て世界に定着してしまう自業自得に陥った。
http://www.aljazeera.com/news/2017/09/myanmar-arakan-rohingya-salvation-army-170912060700394.html
ARSA: Who are the Arakan Rohingya Salvation Army?
くわえてARSAは、アラブの春や、ウクライナ政権転覆など米諜報界が黒幕
だったカラー革命の際に行われた、ソシャルメディアを使った国際政治運動の扇
動技能を身につけていた。米国ではマケイン上院議員ら軍産複合体の代理人たち
が、ミャンマーを経済制裁する法案を米議会に提出している。軍産の意向に沿っ
て、中東の独裁諸国の「極悪」さを誇張喧伝してきた欧米の国際人権団体も、ミ
ャンマーをさかんに非難している。どれもこれも、間抜けなミャンマー軍部の自
業自得であるとも言える。
http://www.reuters.com/article/us-myanmar-rohingya/myanmar-says-u-s-official-barred-from-rohingya-conflict-zone-idUSKCN1BQ0KU
Myanmar says U.S. official barred from Rohingya conflict zone
▼軍産のカラー革命と似た手口
しかし同時に感じられることは、このロヒンギャ問題が、軍産とその傘下の勢
力がこれまで中東やウクライナなどで展開してきた、覇権戦略(世界支配)とし
ての人権外交(経済制裁)、政権転覆、カラー革命などと手口が良く似ているこ
とだ。ジョージ・ソロスの影もちらついている。その意味で、ミャンマー軍部は、
(国際政治技能を磨いてこなかったことによる)自業自得であると同時に、軍産
系勢力の国際謀略に引っ掛かった被害者(カモ)であると言える。ARSAがミ
ャンマー軍部を挑発しなければ、60万人のロヒンギャ難民は発生しなかった。
事件以前の10年以上、北ラカインは何とか安定していた。それをぶち壊すきっ
かけを作ったのは、軍部でなくARSAだ。
http://sputniknews.com/analysis/201709051057098493-myanmar-rohingya-energy-china-soros/
Soros and Hydrocarbons: What's Really Behind the Rohingya Crisis in Myanmar
これまで、軍産の謀略によって政権転覆されるのはイスラム諸国が多かったが、
今回はイスラム世界が、軍産系の国際マスコミや人権団体と一緒になってミャン
マーを非難している。異教徒がムスリムを弾圧する構図は、ムスリムの「義憤」
のツボにはまる。アルカイダ(イスラム聖戦士)もかつて、ソ連=無神論者が
アフガンのムスリムを弾圧しているという図式で、スンニ社会で支持された。シ
ーア派のイランは、軍産から核武装の濡れ衣をかけられてひどい目にあってきた
のに、今回はイラン政府系メディアが誰よりも声高にしつこくミャンマーを非難
し続けている。先輩から受けた理不尽ないじめを、後輩に対してやる体育会の部
員みたいだ(そのくせイランは、ミャンマー軍政の背後にいる中国のことは決し
て批判しない。お金もらってるからね)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Arakan_Rohingya_Salvation_Army
Arakan Rohingya Salvation Army From Wikipedia
ARSAの指導者(Ata Ullah)はアルカイダと関係ないと言われるが、パキ
スタン生まれ、サウジ育ちで、サウジでは弁が立つことを評価されてモスクにつ
とめ、多くの聖職者と知り合った。彼は戦闘の訓練も受けている。こうした環境
下でイスラムの国際運動をやるとなれば、かならずアルカイダやISを生んだ米
諜報界、サウジ王政の諜報筋とつながる。アルカイダやISはテロ肯定の軍事路
線だが、アルカイダやISが下火になる昨今、テロを全否定しつつもっと巧妙な
政権転覆、国際政治を揺れ動かす策をやるのがARSAのような新手の組織だと
感じられる。
http://www.dhakatribune.com/world/south-asia/2017/10/20/ata-ullah-man-heart-myanmar-conflict/
Who is Ata Ullah the man at the heart of the Myanmar conflict?
ARSAやその背後にいそうなイスラム世界の諜報筋と米国の軍産は、どんな
目的でロヒンギャ問題を引き起こしたのか。ロシアの分析者は、3つの要因があ
りそうだと言っている。1つは、ラカイン州の沖合にある海底ガス田を中国が開
発しているが、それを妨害しようとしている、という点だ。習近平の「一帯一路」
戦略の一環として、中国企業が、ラカイン州から雲南省への石油ガスのパイプラ
インを建設している。中東から運んできた石油を、ラカイン州で陸揚げしてパイ
プラインで中国本土まで運ぶことで、海上輸送の隘路であるマラッカ海峡を通ら
ずにすむ。軍産はイスラム世界を挑発してロヒンギャ問題を起こしてラカインを
混乱させ、中国の勢力拡大を阻止したい。
http://www.economictimes.com/news/international/business/china-to-take-70-per-cent-stake-in-strategic-port-in-myanmar-official/articleshow/61120560.cms
China to take 70 per cent stake in strategic port in Myanmar: Official
http://www.thehindu.com/news/international/on-rohingya-issue-china-backs-myanmars-steps-to-protect-stability/article19894781.ece
On Rohingya issue, China differs with West, backs Myanmar’s steps “to protect stability”
2つ目は、東南アジアのムスリムを悲惨な目にあわせることで、インドネシア
やマレーシアのムスリムの義憤を扇動して過激化させ、サウジなどの保守的な信
仰をやらせたい。サウジ王政は以前、こういう謀略が好きだった。だが今の権力
者であるムハマンドサルマン皇太子(MbS)は、過激イスラムを放棄すると何
度も宣言し、過激派の聖職者を何人も辞めさせた。最近の記事に書いたように、
MbSはトランプに乗せられ、軍産のテロ戦争の一端を担ってきたサウジの過激
イスラムをやめようとしている。MbSは馬鹿者だが、サウジはもう過激イスラ
ムの扇動をしない。
http://www.zerohedge.com/news/2017-09-10/myanmars-rohingya-crisis-george-soros-oil-lessons-india
Myanmar's Rohingya Crisis: George Soros, Oil, & Lessons For India
http://tanakanews.com/171119saudi.htm
サウジアラビアの自滅
3つ目は、ASEANの中でインドネシアやマレーシアと、ミャンマーとの関
係を悪化させ、ASEANを分裂させたい、というもの。中国寄りになっている
ASEANに、軍産が意地悪をしたいのか??。ASEANは、内部分裂を回避
するため、ロヒンギャ問題を話し合わないようにしている。分裂策は効かない。
上記の3点を見て有力そうなのは、中国の台頭抑止策として、米軍産がイスラ
ム世界を引っ掛けてロヒンギャ問題を起こしたという見方だ。だが、実際の展開
を見ると、「国際社会」から非難されているミャンマー政府は、以前よりさらに
中国しか頼る先がなくなり、ますます中国寄りになっている。ロヒンギャ問題は、
ミャンマーを中国の傘下に押し込んでしまっている。中国の台頭は、抑止される
どころか、鼓舞されている。
http://www.mizzima.com/news-opinion/geopolitics-rakhine
The geopolitics of Rakhine
▼ミャンマー軍部の人気を引き上げてしまったロヒンギャ問題
ロヒンギャ問題に対し、ミャンマーの人々には、彼らなりの言い分がある。戦
後の独立以来、国内各地の少数民族との内戦続きだったミャンマーでは、先進国
が偉そうに言うような少数派への寛容を求めるのが困難だ。ロヒンギャ=国内の
仲間でなく、ベンガル人=外国の敵なのだ、というミャンマーの世論は、今後も
しばらくは変わらない。ベンガル人=ムスリム、ミャンマー人=仏教徒という図
式の中で、世界がロヒンギャ=ムスリムの味方をするほど、ミャンマー人は仏教
ナショナリズムを強く抱くようになる。
http://news.antiwar.com/2017/09/14/myanmars-military-political-leaders-united-against-rohingya-threat/
Myanmar’s Military, Political Leaders United Against Rohingya ‘Threat’
http://www.theguardian.com/world/2017/sep/06/aung-san-suu-kyi-blames-terrorists-for-misinformation-about-myanmar-violence
Aung San Suu Kyi says 'terrorists' are misinforming world about Myanmar violence
ミャンマーの仏教政党(マバタ)は、ロヒンギャを弾圧した軍部を称賛し、義
憤を感じているミャンマー人が、軍部と仏教政党への支持を強めている。ミャン
マーの最大政党はスーチーのリベラル政党NLDで、仏教政党よりはるかに支持
率が高いが、それでもNLDは仏教を敵視していないという言い訳に追われてい
るし、スーチーは「ロヒンギャはテロリストだ」と発言している。スーチーのこ
の発言は「国際社会」を激怒させたが、すでに書いたように、ミャンマーの側か
ら見れば、ロヒンギャのARSAは、やり方が巧妙・狡猾になったアルカイダで
ある。
http://www.atimes.com/article/misunderstanding-myanmars-ma-ba-tha/
Misunderstanding Myanmar’s Ma Ba Tha
http://www.mizzima.com/news-election-2015-election-features/myanmar-public-dismisses-buddhist-nationalism-ballot
Myanmar public dismisses Buddhist nationalism with a ballot
ミャンマーは88年以来、独裁の軍事政権と、スーチーNLDの民主化勢力が、
ずっと対立していた。ミャンマー人は軍部を嫌っていた。だが今、ロヒンギャ
問題がおきたおかげで、ミャンマーの世論が一気に軍部を支持するようになり、
軍部と連立政権を組むNLDも、仏教ナショナリズムの高揚に躊躇しつつ、この
流れに乗るようになっている。
http://www.mizzima.com/news-election-2015-election-features/rohingya-disenfranchised-nld-takes-nationalists-southern
With Rohingya disenfranchised, NLD takes on nationalists in southern Rakhine
http://www.irrawaddy.com/opinion/commentary/rakhine-unrest-pushes-buddhist-nationalists-closer-army.html
Rakhine Unrest Pushes Buddhist Nationalists Closer to Army
スーチーは15年の選挙で圧勝したが、それまで独裁していた軍部に妨害され、
大統領でなく外相にしかなれず、権力のかなりの部分を軍部が握り続けている。
米軍産がロヒンギャ問題を起こさなかったら、スーチーのNLDが高い人気を維
持し、不人気な軍部からしだいに権力を剥ぎとっていき、欧米が好む「民主化」
が進んだだろう。だがロヒンギャ問題が起きたことで、軍部への国民の支持が
高まり、NLDへの権力移管は進まず、事実上の軍事政権が続くことになった。
http://www.aljazeera.com/news/2017/10/thousands-rohingya-march-support-army-crisis-171029163411806.html
Despite Rohingya crisis, thousands march in support of military
http://www.theguardian.com/world/2017/oct/28/myanmar-fears-junta-return-rohingya-suu-kyi
Rohingya crisis may be driving Aung San Suu Kyi closer to generals
そして今、米国の軍産のマケイン議員らが、ミャンマーを経済制裁せよと息巻
いている。せっかくミャンマーが民主化しかけたのに、米国はミャンマーを敵視
している。そして、米国が敵視するほど、中国がミャンマーに近づいてくる。中
国にミャンマーを取られたくないインドも、対抗してミャンマーに近づき、ロヒ
ンギャ問題でミャンマーを批判しないようにしている。中国やインドが仲良くし
てくれる限り、ミャンマーは困らない。米国の制裁は全く効かない。それはすで
に明らかだ。マケインらは、軍産のふりをした多極主義者、トランプの敵のふり
をしたトランプの味方であると疑われる。
http://www.straitstimes.com/opinion/us-sanctions-not-the-solution-to-rohingya-crisis
US sanctions not the solution to Rohingya crisis
http://www.scmp.com/week-asia/geopolitics/article/2115839/why-do-china-india-back-myanmar-over-rohingya-crisis
Why do China, India back Myanmar over the Rohingya crisis?
中国は先日、ロヒンギャ問題を解決するため、仲裁に入った。その直後、11月
22日にミャンマーとバングラディシュの代表団が会い、中国が提案した3段階
の解決策を開始することで合意した。合意を仲裁したのは中国なのに、なぜか
国際マスコミの報道には、中国が仲裁したと一言も書いていないものが多い。
http://news.xinhuanet.com/english/2017-11/20/c_136764392.htm
China proposes three-phase solution to Rakhine issue in Myanmar: FM
http://www.dhakatribune.com/bangladesh/foreign-affairs/2017/11/22/bangladesh-myanmar-talks-begin-amid-high-hopes-rohingya-repatriation/
Bangladesh-Myanmar talks begin amid high hopes of Rohingya repatriation
中国の仲裁案は、国連や「国際社会」の仲裁や監督を受けず、ミャンマーとバ
ングラデシュだけで話し合って決めるのが良いというものだった。これは、国連
や「国際社会」が、ミャンマーの言い分を全否定しているので、スーチーが中国
に頼んでやってもらった方式だった。欧米マスコミは、国際社会の監督(=いち
ゃもんつけ)を拒否するのは許せない、という論調を喧伝している。米国務省も
ミャンマーに調査させろと要求した。スーチーは、かつて英諜報機関(軍産)と
親しかったのに、軍産はちっともスーチーを大事にしない。スーチーはますます
中国寄りになる。
http://www.presstv.com/Detail/2017/11/20/542822/Myanmar-politics-Rohingya-ASEM-Aung-San-Suu-Kyi-rakhine
Myanmar's Suu Kyi says ‘illegal immigrants spreading terrorism’
http://www.wsj.com/articles/tillerson-calls-for-independent-probe-into-myanmars-rohingya-crisis-1510750868
Tillerson Calls for Independent Probe Into Myanmar’s Rohingya Crisis
ロヒンギャ問題の解決は、かなり難しい。ミャンマーの世論は、難民の帰国を
歓迎していない。NLDの議員でさえ、ラカインのムスリムを収容所に入れてし
まえと言っている。バングラデシュはムスリムの国だからロヒンギャのムスリム
難民の定住を歓迎するかというと、全くそうでない。すでに人口が多いので、新
たに何十万人も受け入れたくない。ロヒンギャは両国から厄介者扱いされている。
両国は、2か月以内に難民の帰還を開始することで合意したが、うまくいくかど
うか怪しい。この問題を何とか解決できると、東南アジア・南アジアでの中国の
影響力がさらに強まる。
http://www.aljazeera.com/news/2017/10/myanmar-signs-deal-bangladesh-rohingya-repatriation-171025070235910.html
Myanmar signs deal with Bangladesh on Rohingya repatriation
この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/171128myanmar.htm
●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)
◆イスラム国の滅亡、中東非米同盟の出現
http://tanakanews.com/171125syria.php
【2017年11月25日】イランは、自国の西側でレバノン、シリア、イラ
クを影響圏に入れ、自国の東側ではアフガニスタンでロシアや中国と協力し影
響力を強めている。広大になったイランの影響圏は、中国の習近平が推進する
「一帯一路」と重なっている。イランやロシアが安定化した地域で、中国がイ
ンフラ投資、復興事業を展開する。製造業や建設業は中国企業、エネルギーや
軍事はロシア企業が担当し、使われる通貨は人民元だ。米国に依存しない「非
米同盟」の地域として、中央アジアや中東が発展していく。
◆バブルを支えてきたジャンク債の不安定化
http://tanakanews.com/171121junk.php
【2017年11月21日】日米欧のQEで08年のリーマン危機から10年
持たせ、さらにトランプの減税と規制破壊で2年持たせても、2020年には
すべてのバブル延命策が限界に達する。ちょうどトランプが再選されるころだ。
トランプの再選後、習近平の任期が終わる2022年までの間に、米日欧の巨
大なバブル崩壊が起こってドルの基軸性が壊れ、人民元やSDRの基軸制にと
って代わられ、覇権が多極化する感じか?。そんなに長く延命できるのか?
◆サウジアラビアの暴走
http://tanakanews.com/171115saudi.php
【2017年11月15日】イランやヒズボラと戦争するトランプの過激策に
本気で乗ってしまっているのは、サウジのMbS皇太子だけだ。他の諸国は、
新たな戦争に反対しているか、困惑しつつ黙っている。イスラエルは表向き
イランを敵視するが、ヒズボラとの戦争は避けたい。米サウジはレバノンと
国境を接していないが、イスラエルはすぐ隣だ。米国は助けてくれない。
ヒズボラとの戦争はイスラエルの滅亡(ハルマゲドン)になってしまう。
メール配信の中止は
http://tanakanews.com/cgi-bin/stop1.cgi?address=fanfanwindows@excite.co.jp
からお願いします。アドレスを変更する場合は、古いアドレスを解除した後、
http://tanakanews.com/
で、新しいアドレスで登録し直してください。
解除できない場合のみ、講読中のアドレスを明記し、経緯を書いてメールで
ご連絡ください。ご自分で解除を試みた経緯が書かれていない解除依頼は
お受けいたしません。
22日にミャンマーとバングラディシュの代表団が会い、中国が提案した3段階
の解決策を開始することで合意した。合意を仲裁したのは中国なのに、なぜか
国際マスコミの報道には、中国が仲裁したと一言も書いていないものが多い。
★ミャンマー「ロヒンギャ」問題の深層
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インド洋に面したミャンマーの西部、ラカイン州の北部に住む数十万人のイス
ラム教徒(ムスリム)の勢力、欧米日などのマスコミで「ロヒンギャ」という名
称で報じられている人々は、ミャンマーにとって、まさに「まつろわぬ民」であ
る。彼らが住むラカイン北部は、バングラディシュと長い国境を接しており、彼
らは戦後ずっと、断続的に武装蜂起しながら、仏教徒の国であるミャンマーから
分離し、ムスリムの国であるバングラディシュの一部になろうとし続け、失敗し
ている。
かつてこの地域は英国の植民地だったが、第二次大戦中に日本がやってきた。
仏教徒の組織が日本を支持したのに対し、英国はラカイン(当時はアラカン)の
ムスリムたちに、日本を追い出したらムスリムの国として独立させてやると約束
し、仏教徒とムスリムの戦いとなった。戦後独立したビルマ(今のミャンマー)
は国民の9割が仏教徒だった。ムスリムは、ビルマでなくバングラディシュ(当
時は東パキスタン)の一部になろうとしてパキスタン政府に掛け合ったが、内政
干渉はしないと言って断られたため、独自に武装蜂起した。
http://en.wikipedia.org/wiki/Rohingya_insurgency_in_Western_Myanmar
Rohingya insurgency in Western Myanmar From Wikipedia
ビルマ政府は、自国から分離してバングラ編入したがるラカインのムスリムを
敵とみなし、国籍を与えないできた。北ラカインのムスリムは、バングラディシ
ュのベンガル語とは異なるロヒンギャ語を話し、昔からラカイン州に住んでおり、
外国ではロヒンギャ人と呼ばれている。だが、ミャンマーの政府と世論は、バン
グラ編入を目指して戦いを挑み続けてきた彼らを、ミャンマー国内の少数民族と
みなさずベンガル人の一部だと言い、「ロヒンギャ」という名称を使うことを
嫌っている。(ミャンマー側の意向に気を使うのはここまでにして、以後はロヒ
ンギャをカギカッコなしで使う)
独立から最近までのミャンマーはずっと、中央政府と各地の少数民族との内戦
の歴史であり、北ラカインのムスリムと政府軍の戦いは、それらの内戦の一つだ
った。だからミャンマー人は、これを一方的な虐殺でなく内戦、反乱軍との戦い
だと言う。80年代にはアフガニスタンで米CIAに訓練されソ連軍と戦ったイ
スラム聖戦組織(のちのアルカイダ)が、北ラカインのムスリムの分離独立を支
援するなど、内戦が断続的に続いてきた。パキスタン、サウジアラビア、信仰が
過激化したインドネシアなど、イスラム世界の各地から支援された北ラカインの
ムスリムが、仏教徒のミャンマー政府に対し、イスラム世界の拡大のための戦い
(聖戦)を挑み、ミャンマー政府軍から反撃・弾圧されてきたのがロヒンギャの
歴史だ。
http://edition.cnn.com/2017/11/25/asia/myanmar-buddhist-nationalism-mabatha/
'It's not genocide,' say Myanmar's hardline monks
ミャンマーは2015年の総選挙後、アウンサン・スーチーの政党NLD(国
民民主連盟)と軍事政権が連立を組み始め、民主化が実現され始めた。それを待
っていたかのように、16年10月と今年の8月、北ラカインのムスリムが、地
元にいる政府の軍や警察に対して蜂起し、その後政府軍がムスリムを大弾圧し、
60万人が難民化してバングラディシュに逃げ込む事態に発展した。昨年と今年
のムスリムの蜂起を主導したのはARSA(アラカン・ロヒンギャ救世軍)とい
う新たな組織で、彼らは従来の組織よりも相当巧妙だ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Arakan_Rohingya_Salvation_Army
Arakan Rohingya Salvation Army From Wikipedia
ARSAは、北ラカインのムスリムの村々と協力関係を作り、村人たちと一緒
に、数百人規模で、自家製の粗末な武器を持って夜中に地元の警察や政府軍の拠
点を襲撃、今年8月の場合、北ラカインの30か所で同時多発で襲撃を挙行した。
驚いた政府軍は、これをムスリムの一斉蜂起とみなし、大規模な反攻を行った。
村人らは、粗末な武器しか持っていないものの大人数で襲撃し、軍や警察の側が
発砲したり、大げさな激しい反応をするように仕向けた。事件後、ARSAは
インターネットのソシャルメディアを活用し、ミャンマー政府軍がムスリムを大
弾圧、焼き討ち、虐殺、難民化させたことをイスラム世界に広く伝え、世界的な
ミャンマー非難運動を確立することに成功した。
http://www.irrawaddy.com/opinion/editorial/do-not-lose-sight-of-arsa.html
Do Not Lose Sight of ARSA
バングラディシュの難民キャンプでは、ミャンマー軍がいかに残虐で極悪かを
難民たちが語り、それがそのままアルジャジーラ、イラン国営メディアから米欧
の権威あるマスコミや国際人権団体までの喧伝機関によって流布された。ARSA
は、ミャンマー軍部を激怒させ、世界が人権侵害と非難する過大な弾圧をやるよ
うに仕向ける方法を知っていた。これまで熾烈な弾圧ばかりやってきたミャンマ
ー軍部は、簡単に引っかかった。大弾圧後、軍部は、外国人を現場に入れない
おなじみの政策をとり、難民の証言が誇張されていたとしても、それが事実とし
て世界に定着してしまう自業自得に陥った。
http://www.aljazeera.com/news/2017/09/myanmar-arakan-rohingya-salvation-army-170912060700394.html
ARSA: Who are the Arakan Rohingya Salvation Army?
くわえてARSAは、アラブの春や、ウクライナ政権転覆など米諜報界が黒幕
だったカラー革命の際に行われた、ソシャルメディアを使った国際政治運動の扇
動技能を身につけていた。米国ではマケイン上院議員ら軍産複合体の代理人たち
が、ミャンマーを経済制裁する法案を米議会に提出している。軍産の意向に沿っ
て、中東の独裁諸国の「極悪」さを誇張喧伝してきた欧米の国際人権団体も、ミ
ャンマーをさかんに非難している。どれもこれも、間抜けなミャンマー軍部の自
業自得であるとも言える。
http://www.reuters.com/article/us-myanmar-rohingya/myanmar-says-u-s-official-barred-from-rohingya-conflict-zone-idUSKCN1BQ0KU
Myanmar says U.S. official barred from Rohingya conflict zone
▼軍産のカラー革命と似た手口
しかし同時に感じられることは、このロヒンギャ問題が、軍産とその傘下の勢
力がこれまで中東やウクライナなどで展開してきた、覇権戦略(世界支配)とし
ての人権外交(経済制裁)、政権転覆、カラー革命などと手口が良く似ているこ
とだ。ジョージ・ソロスの影もちらついている。その意味で、ミャンマー軍部は、
(国際政治技能を磨いてこなかったことによる)自業自得であると同時に、軍産
系勢力の国際謀略に引っ掛かった被害者(カモ)であると言える。ARSAがミ
ャンマー軍部を挑発しなければ、60万人のロヒンギャ難民は発生しなかった。
事件以前の10年以上、北ラカインは何とか安定していた。それをぶち壊すきっ
かけを作ったのは、軍部でなくARSAだ。
http://sputniknews.com/analysis/201709051057098493-myanmar-rohingya-energy-china-soros/
Soros and Hydrocarbons: What's Really Behind the Rohingya Crisis in Myanmar
これまで、軍産の謀略によって政権転覆されるのはイスラム諸国が多かったが、
今回はイスラム世界が、軍産系の国際マスコミや人権団体と一緒になってミャン
マーを非難している。異教徒がムスリムを弾圧する構図は、ムスリムの「義憤」
のツボにはまる。アルカイダ(イスラム聖戦士)もかつて、ソ連=無神論者が
アフガンのムスリムを弾圧しているという図式で、スンニ社会で支持された。シ
ーア派のイランは、軍産から核武装の濡れ衣をかけられてひどい目にあってきた
のに、今回はイラン政府系メディアが誰よりも声高にしつこくミャンマーを非難
し続けている。先輩から受けた理不尽ないじめを、後輩に対してやる体育会の部
員みたいだ(そのくせイランは、ミャンマー軍政の背後にいる中国のことは決し
て批判しない。お金もらってるからね)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Arakan_Rohingya_Salvation_Army
Arakan Rohingya Salvation Army From Wikipedia
ARSAの指導者(Ata Ullah)はアルカイダと関係ないと言われるが、パキ
スタン生まれ、サウジ育ちで、サウジでは弁が立つことを評価されてモスクにつ
とめ、多くの聖職者と知り合った。彼は戦闘の訓練も受けている。こうした環境
下でイスラムの国際運動をやるとなれば、かならずアルカイダやISを生んだ米
諜報界、サウジ王政の諜報筋とつながる。アルカイダやISはテロ肯定の軍事路
線だが、アルカイダやISが下火になる昨今、テロを全否定しつつもっと巧妙な
政権転覆、国際政治を揺れ動かす策をやるのがARSAのような新手の組織だと
感じられる。
http://www.dhakatribune.com/world/south-asia/2017/10/20/ata-ullah-man-heart-myanmar-conflict/
Who is Ata Ullah the man at the heart of the Myanmar conflict?
ARSAやその背後にいそうなイスラム世界の諜報筋と米国の軍産は、どんな
目的でロヒンギャ問題を引き起こしたのか。ロシアの分析者は、3つの要因があ
りそうだと言っている。1つは、ラカイン州の沖合にある海底ガス田を中国が開
発しているが、それを妨害しようとしている、という点だ。習近平の「一帯一路」
戦略の一環として、中国企業が、ラカイン州から雲南省への石油ガスのパイプラ
インを建設している。中東から運んできた石油を、ラカイン州で陸揚げしてパイ
プラインで中国本土まで運ぶことで、海上輸送の隘路であるマラッカ海峡を通ら
ずにすむ。軍産はイスラム世界を挑発してロヒンギャ問題を起こしてラカインを
混乱させ、中国の勢力拡大を阻止したい。
http://www.economictimes.com/news/international/business/china-to-take-70-per-cent-stake-in-strategic-port-in-myanmar-official/articleshow/61120560.cms
China to take 70 per cent stake in strategic port in Myanmar: Official
http://www.thehindu.com/news/international/on-rohingya-issue-china-backs-myanmars-steps-to-protect-stability/article19894781.ece
On Rohingya issue, China differs with West, backs Myanmar’s steps “to protect stability”
2つ目は、東南アジアのムスリムを悲惨な目にあわせることで、インドネシア
やマレーシアのムスリムの義憤を扇動して過激化させ、サウジなどの保守的な信
仰をやらせたい。サウジ王政は以前、こういう謀略が好きだった。だが今の権力
者であるムハマンドサルマン皇太子(MbS)は、過激イスラムを放棄すると何
度も宣言し、過激派の聖職者を何人も辞めさせた。最近の記事に書いたように、
MbSはトランプに乗せられ、軍産のテロ戦争の一端を担ってきたサウジの過激
イスラムをやめようとしている。MbSは馬鹿者だが、サウジはもう過激イスラ
ムの扇動をしない。
http://www.zerohedge.com/news/2017-09-10/myanmars-rohingya-crisis-george-soros-oil-lessons-india
Myanmar's Rohingya Crisis: George Soros, Oil, & Lessons For India
http://tanakanews.com/171119saudi.htm
サウジアラビアの自滅
3つ目は、ASEANの中でインドネシアやマレーシアと、ミャンマーとの関
係を悪化させ、ASEANを分裂させたい、というもの。中国寄りになっている
ASEANに、軍産が意地悪をしたいのか??。ASEANは、内部分裂を回避
するため、ロヒンギャ問題を話し合わないようにしている。分裂策は効かない。
上記の3点を見て有力そうなのは、中国の台頭抑止策として、米軍産がイスラ
ム世界を引っ掛けてロヒンギャ問題を起こしたという見方だ。だが、実際の展開
を見ると、「国際社会」から非難されているミャンマー政府は、以前よりさらに
中国しか頼る先がなくなり、ますます中国寄りになっている。ロヒンギャ問題は、
ミャンマーを中国の傘下に押し込んでしまっている。中国の台頭は、抑止される
どころか、鼓舞されている。
http://www.mizzima.com/news-opinion/geopolitics-rakhine
The geopolitics of Rakhine
▼ミャンマー軍部の人気を引き上げてしまったロヒンギャ問題
ロヒンギャ問題に対し、ミャンマーの人々には、彼らなりの言い分がある。戦
後の独立以来、国内各地の少数民族との内戦続きだったミャンマーでは、先進国
が偉そうに言うような少数派への寛容を求めるのが困難だ。ロヒンギャ=国内の
仲間でなく、ベンガル人=外国の敵なのだ、というミャンマーの世論は、今後も
しばらくは変わらない。ベンガル人=ムスリム、ミャンマー人=仏教徒という図
式の中で、世界がロヒンギャ=ムスリムの味方をするほど、ミャンマー人は仏教
ナショナリズムを強く抱くようになる。
http://news.antiwar.com/2017/09/14/myanmars-military-political-leaders-united-against-rohingya-threat/
Myanmar’s Military, Political Leaders United Against Rohingya ‘Threat’
http://www.theguardian.com/world/2017/sep/06/aung-san-suu-kyi-blames-terrorists-for-misinformation-about-myanmar-violence
Aung San Suu Kyi says 'terrorists' are misinforming world about Myanmar violence
ミャンマーの仏教政党(マバタ)は、ロヒンギャを弾圧した軍部を称賛し、義
憤を感じているミャンマー人が、軍部と仏教政党への支持を強めている。ミャン
マーの最大政党はスーチーのリベラル政党NLDで、仏教政党よりはるかに支持
率が高いが、それでもNLDは仏教を敵視していないという言い訳に追われてい
るし、スーチーは「ロヒンギャはテロリストだ」と発言している。スーチーのこ
の発言は「国際社会」を激怒させたが、すでに書いたように、ミャンマーの側か
ら見れば、ロヒンギャのARSAは、やり方が巧妙・狡猾になったアルカイダで
ある。
http://www.atimes.com/article/misunderstanding-myanmars-ma-ba-tha/
Misunderstanding Myanmar’s Ma Ba Tha
http://www.mizzima.com/news-election-2015-election-features/myanmar-public-dismisses-buddhist-nationalism-ballot
Myanmar public dismisses Buddhist nationalism with a ballot
ミャンマーは88年以来、独裁の軍事政権と、スーチーNLDの民主化勢力が、
ずっと対立していた。ミャンマー人は軍部を嫌っていた。だが今、ロヒンギャ
問題がおきたおかげで、ミャンマーの世論が一気に軍部を支持するようになり、
軍部と連立政権を組むNLDも、仏教ナショナリズムの高揚に躊躇しつつ、この
流れに乗るようになっている。
http://www.mizzima.com/news-election-2015-election-features/rohingya-disenfranchised-nld-takes-nationalists-southern
With Rohingya disenfranchised, NLD takes on nationalists in southern Rakhine
http://www.irrawaddy.com/opinion/commentary/rakhine-unrest-pushes-buddhist-nationalists-closer-army.html
Rakhine Unrest Pushes Buddhist Nationalists Closer to Army
スーチーは15年の選挙で圧勝したが、それまで独裁していた軍部に妨害され、
大統領でなく外相にしかなれず、権力のかなりの部分を軍部が握り続けている。
米軍産がロヒンギャ問題を起こさなかったら、スーチーのNLDが高い人気を維
持し、不人気な軍部からしだいに権力を剥ぎとっていき、欧米が好む「民主化」
が進んだだろう。だがロヒンギャ問題が起きたことで、軍部への国民の支持が
高まり、NLDへの権力移管は進まず、事実上の軍事政権が続くことになった。
http://www.aljazeera.com/news/2017/10/thousands-rohingya-march-support-army-crisis-171029163411806.html
Despite Rohingya crisis, thousands march in support of military
http://www.theguardian.com/world/2017/oct/28/myanmar-fears-junta-return-rohingya-suu-kyi
Rohingya crisis may be driving Aung San Suu Kyi closer to generals
そして今、米国の軍産のマケイン議員らが、ミャンマーを経済制裁せよと息巻
いている。せっかくミャンマーが民主化しかけたのに、米国はミャンマーを敵視
している。そして、米国が敵視するほど、中国がミャンマーに近づいてくる。中
国にミャンマーを取られたくないインドも、対抗してミャンマーに近づき、ロヒ
ンギャ問題でミャンマーを批判しないようにしている。中国やインドが仲良くし
てくれる限り、ミャンマーは困らない。米国の制裁は全く効かない。それはすで
に明らかだ。マケインらは、軍産のふりをした多極主義者、トランプの敵のふり
をしたトランプの味方であると疑われる。
http://www.straitstimes.com/opinion/us-sanctions-not-the-solution-to-rohingya-crisis
US sanctions not the solution to Rohingya crisis
http://www.scmp.com/week-asia/geopolitics/article/2115839/why-do-china-india-back-myanmar-over-rohingya-crisis
Why do China, India back Myanmar over the Rohingya crisis?
中国は先日、ロヒンギャ問題を解決するため、仲裁に入った。その直後、11月
22日にミャンマーとバングラディシュの代表団が会い、中国が提案した3段階
の解決策を開始することで合意した。合意を仲裁したのは中国なのに、なぜか
国際マスコミの報道には、中国が仲裁したと一言も書いていないものが多い。
http://news.xinhuanet.com/english/2017-11/20/c_136764392.htm
China proposes three-phase solution to Rakhine issue in Myanmar: FM
http://www.dhakatribune.com/bangladesh/foreign-affairs/2017/11/22/bangladesh-myanmar-talks-begin-amid-high-hopes-rohingya-repatriation/
Bangladesh-Myanmar talks begin amid high hopes of Rohingya repatriation
中国の仲裁案は、国連や「国際社会」の仲裁や監督を受けず、ミャンマーとバ
ングラデシュだけで話し合って決めるのが良いというものだった。これは、国連
や「国際社会」が、ミャンマーの言い分を全否定しているので、スーチーが中国
に頼んでやってもらった方式だった。欧米マスコミは、国際社会の監督(=いち
ゃもんつけ)を拒否するのは許せない、という論調を喧伝している。米国務省も
ミャンマーに調査させろと要求した。スーチーは、かつて英諜報機関(軍産)と
親しかったのに、軍産はちっともスーチーを大事にしない。スーチーはますます
中国寄りになる。
http://www.presstv.com/Detail/2017/11/20/542822/Myanmar-politics-Rohingya-ASEM-Aung-San-Suu-Kyi-rakhine
Myanmar's Suu Kyi says ‘illegal immigrants spreading terrorism’
http://www.wsj.com/articles/tillerson-calls-for-independent-probe-into-myanmars-rohingya-crisis-1510750868
Tillerson Calls for Independent Probe Into Myanmar’s Rohingya Crisis
ロヒンギャ問題の解決は、かなり難しい。ミャンマーの世論は、難民の帰国を
歓迎していない。NLDの議員でさえ、ラカインのムスリムを収容所に入れてし
まえと言っている。バングラデシュはムスリムの国だからロヒンギャのムスリム
難民の定住を歓迎するかというと、全くそうでない。すでに人口が多いので、新
たに何十万人も受け入れたくない。ロヒンギャは両国から厄介者扱いされている。
両国は、2か月以内に難民の帰還を開始することで合意したが、うまくいくかど
うか怪しい。この問題を何とか解決できると、東南アジア・南アジアでの中国の
影響力がさらに強まる。
http://www.aljazeera.com/news/2017/10/myanmar-signs-deal-bangladesh-rohingya-repatriation-171025070235910.html
Myanmar signs deal with Bangladesh on Rohingya repatriation
この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/171128myanmar.htm
●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)
◆イスラム国の滅亡、中東非米同盟の出現
http://tanakanews.com/171125syria.php
【2017年11月25日】イランは、自国の西側でレバノン、シリア、イラ
クを影響圏に入れ、自国の東側ではアフガニスタンでロシアや中国と協力し影
響力を強めている。広大になったイランの影響圏は、中国の習近平が推進する
「一帯一路」と重なっている。イランやロシアが安定化した地域で、中国がイ
ンフラ投資、復興事業を展開する。製造業や建設業は中国企業、エネルギーや
軍事はロシア企業が担当し、使われる通貨は人民元だ。米国に依存しない「非
米同盟」の地域として、中央アジアや中東が発展していく。
◆バブルを支えてきたジャンク債の不安定化
http://tanakanews.com/171121junk.php
【2017年11月21日】日米欧のQEで08年のリーマン危機から10年
持たせ、さらにトランプの減税と規制破壊で2年持たせても、2020年には
すべてのバブル延命策が限界に達する。ちょうどトランプが再選されるころだ。
トランプの再選後、習近平の任期が終わる2022年までの間に、米日欧の巨
大なバブル崩壊が起こってドルの基軸性が壊れ、人民元やSDRの基軸制にと
って代わられ、覇権が多極化する感じか?。そんなに長く延命できるのか?
◆サウジアラビアの暴走
http://tanakanews.com/171115saudi.php
【2017年11月15日】イランやヒズボラと戦争するトランプの過激策に
本気で乗ってしまっているのは、サウジのMbS皇太子だけだ。他の諸国は、
新たな戦争に反対しているか、困惑しつつ黙っている。イスラエルは表向き
イランを敵視するが、ヒズボラとの戦争は避けたい。米サウジはレバノンと
国境を接していないが、イスラエルはすぐ隣だ。米国は助けてくれない。
ヒズボラとの戦争はイスラエルの滅亡(ハルマゲドン)になってしまう。
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http://tanakanews.com/cgi-bin/stop1.cgi?address=fanfanwindows@excite.co.jp
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