解決の糸口
こうした問題を解決するためにはどうしたらいいか。二つの視点があるだろう。一つは首都圏を再編成すること。北関東から東京圏への流入がかなり多い※1からである。もう一つは可能性のある地方を選び、そこを活性化すること。この地方の活性化はもっと前であれば、他に方法があったかもしれない。しかしあまり残された時間がないので、次第に限定されてきたかと思われる。東京圏への流入人口が多い関西圏、中京圏※2はそれぞれ独自に活性化することは可能であろう。しかし東日本大震災に遠因をなす、北日本からの流入も多かった※3。北日本を活性化するためには、復興ではなく新しいビジョンが必要だと思われる。第二太平洋ベルト構想がそれである。第二太平洋ベルト構想は東日本大震災の復興と重なるテーマでもあるが、復興でなく未来を見据え、前向きにとらえるためのビジョンである。
※1、※2、※3地方創生第1期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に関する検証会(第1回)H31.1.28配布資料4
首都圏の再編成
首都圏の再編成とは具体的には何をするのか。北関東から東京圏への人口流入を止め、むしろ戻す流れを作り出す。そのためには以下の問題を考えていく必要があるだろう。それぞれ個別の問題であり、それを結合していく中で首都圏の再編成というテーマが浮かび上がってくるだろう。
1 東京の下町一帯を元の広大な緑地(江戸時代)に戻していくこと。かつこのエリアに東京西部の住宅を移設していく。全体としての東京の防災力を高める。
2 幕張と水戸を軸とした首都圏の第二軸を形成する。横浜、東京、さいたま(京浜東北線経済)を第一軸とすれば、これらは自国の資金、人、物で成立したかっての経済圏の軸といえるかもしれない。それに対して第二軸はシンガポールのように他国の資金、人、物※1で成立するようにする。
3 第二軸をシンガポール型にするために、千葉県においてまずは観光に力を入れる。東京湾観光※2と北総四都市江戸紀行※3を中心として、外国人にアピールする地区を形成する。幕張が第二軸の一つの起点になるのは東京湾観光と北総四都市江戸紀行が重なる交点となるからである。
4 第二軸では花見川、印旛沼、利根川、霞が浦、涸沼などの水路の上空を活用する。東京湾、成田空港、筑波研究学園都市を結合しドーロン等を最大限に活用※4した都市、住宅地を建設。
5 こうした都市住宅モデルの下、東京下町の住民を第二軸に分散して住むようにしていく。東京の下町を広大な緑地兼西部住宅の移転地とするわけである。
6 千葉県と茨城県を首都圏の第二軸にするのは、首都圏全体では国全体に対する比重を変えることにはならないかもしれない。しかし神奈川、東京、埼玉を中心とした第一軸に対して新しい経済産業モデルを提起すると同時に、東京の防災力を高める百年の計ともなりえるだろう。北関東への人口シフトにも影響があるかもしれないが(つくばエクスプレスのように)、それは第二太平洋ベルト構想との関連性があるだろう。
※1 シンガポールのように他国の資金、人、物
シンガポールはよその国から、資本、物、人を調達して発展してきた。そうせざるをえない事情があったこともあるし、多民族であり、地理的にハブであったこともあるだろう。ロンドン、ニューヨークもそういうところがあるが、日本の場合、そういう場所を創るのならば特区構想なりで意識的にやる必要があるのではないか。新東京としてハブ機能を狙うわけであるが、太平洋経済のハブということになるだろうか。
※2 東京湾観光
シンガポールはマリーナ湾の昔の写真を見ればわかるが、汚い港だった。海外から観光で人を呼び込むことで経済を発展させてきた。東京湾にはすでにディズニーランドから木更津のアウトレットモールまでさまざまな観光施設ができている。ただこれらを結び付けたり、外国人にパッキングして売り込む力は弱いのかもしれない。
※3 北総四都市江戸紀行
千葉県で日本遺産として認められた佐倉(城下町)、成田(門前町)、佐原(商人町)、銚子(産業町)の四つの江戸のまちの観光のことだが、京都、奈良と比べて、武士文化、江戸文化を濃厚に学べるエリアだろう。霞ケ浦でやっているようなサイクリングコースを作れば四国のような巡礼地になる可能性もあるかもしれない。
※4 ドーロン等を最大限に活用
新しい都市、住宅地がどのようになっていくか考えた時、ドローン、無人自動車の活用が重要になってくるだろう。その際、重要になってくるのはいずれも「道」ということになる。既存の市街地では規制も高くなるだろう。このエリアの水路帯を活用し、ある程度ドローンで運び、小さいコンビニエンスなコミュニティを無人化した自動車で移動するような都市、住宅地が望まれるのかもしれない。
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