高齢少子化の状態は老若男女全員の労働力化として※1、日本経済における過渡期の状況として現れざるを得ない。労働力化による供給力が、医療費等の増大に追いつかなければ福祉、医療費の増大で財政赤字は増え続けていくのだろう。前者は「働き方改革」、後者は準市場体制※2でカバーするとはいえ、「公的負担は増加」せざるをえないであろう。公的負担は所得の再分配でもあり、内需を高めることもできれば、経済成長を維持することもできるが、医療費に流れる公的負担は、内需を高めることにはつながらないのかもしれない。
※1 老若男女全員の労働力化
少子高齢化は、しばらくは労働力率を低下させる。この状況をカバーするために、ロボットの導入や移民が考えられるが、現時点からしばらくは老若男女全員の労働力化「一億総活躍社会」が図られる時期であろう。年金の支給開始時期との関係のためだが、移民の安易な導入は後に社会問題を残す恐れがある。むしろ外国からは能力ある人材が集まってくることが望まれ、そのような魅力が現在の日本には求められている。そうした魅了化の一つとして国連大学本部が東京にあることを活かし、国連大学を中心とした世界政策の学問の府を日本に建設することもあるだろう。
ロボットの導入や移民の協力を得たとしても、すべての日本人の老若男女を労働力化するのは無理であろう。少子化からの回復に従い、年金支給開始時期があまりに遅くならないような形で、経済が回っていくようにしていくことが理想かもしれない。
※2 準市場体制
医療保険や介護保険が高齢少子化社会ではおそらくは財政的にひっ迫してくる。労働力率に大きく依存しているからだ。これら保険制度は保険料と公的負担によって人工的に市場が創生されてきた業界である。保険料による負担が足らなくなるのであれば、公的負担によって支えることになるが、日本の場合、マクロ的な意味においては海外資産を持っている民間からの税(国債)の収集ということになってきた。しかし外国の影響力によって海外資産が失われたらそうしたこともできなくなるので、日本がいずれ(外交による安全保障関係を主にするにしても)軍事力を高めていくことはさけられないのかもしれない。そういうことを考えると国内にある程度、産業(特に製造業)が残っていることは重要であり、円高よりも円安の方が理想的なのかもしれない。医療や介護保険を支える準市場体制はあくまで実質的な市場体制の上に成立しているものだからである。それぞれ経済の一部を構成しているが、より本質的な経済基盤という概念があるべきなのであろう。
こうした不安定性を大きく変える可能性があるのは「新産業革命」であり、これに成功すれば、あるいは労働力不要の経済にさらに近づくことになる※1。そのことによって、むしろ公務の内容が改めて問い直されることになるのかもしれない。現在、公務といわれている業務がワークシェアリングされる時代※2になっていくことも考えられるだろう。ベーシックインカムと公務、準公務のワークシェアリングである。その様相は、大まかには古代ギリシャ的なものになっていくのだろうか。
※1 労働力不要の経済
AIが特殊汎用化、一般汎用化と進展していくにつれて民間にはC(creative)、M(management)、H(hospitality)以外の人材以外は不要になるという意見がある。そうなると産業に投入される要素は資本要素と技術要素のみということに近づくわけである。そうなると人間は生産要素から収益だけもらい、余暇を過ごすようになるという極端な仮説も生まれてくる。しかしそこまでにはならず、しだいになんらかのかたちでワークシェアリングが生まれてくることがむしろ予想されるのではないだろうか。労働も人間の欲求のひとつであるからだ。その一つの業種が公務もしくは公共的な業務だろう。
※2 公務という業務がワークシェアリングされる時代
公務の多くの部分は高齢少子化の時代には医療保険や介護保険によって支えられた準市場によって制度設計される。しかしこれらは福祉も含めてしばらくは多くの部分を公的支出によって支えられなければならないのかもしれない。しかしそうした保険、福祉以外でも生活に身近な公務はたくさんある。そうした公務も現在においてもまだ比較的少数の人間によって担われている。(例えば15万人単位の都市で防災担当者が1~2名など)、まだまだ多く地域でボランティアが必要な状態である。その一方でボランティアという奉仕活動はめんどくさいだとか、しがらみがあったりするので、そうしたボランティア的なことも含めて公務あるいは公共的業務が職業としてワークシェアリングされていくのではないだろうか。北欧などを参考にして、公務というものを再定義して、業務としてワークシェアリングしていくことが必要になってくる、ベーシックインカム+ワークシェアリングで生活が成り立つ社会というわけである。
All rights reserved to M Ariake、