【天風録・04.29】:「政治とカネ」選挙
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・04.29】:「政治とカネ」選挙
35年前の今月スタートした消費税。生きていれば、100歳になっていた竹下登氏が導入した。「政界のおしん」と呼ばれたほどの忍耐強さや野党を含む人脈の広さで、多くの異論を粘り強く説得した
▲大平正芳氏や中曽根康弘氏ですら、やり遂げられなかった大仕事である。ところが、1カ月もしないうちに退陣表明に追い込まれる。内閣支持率がリクルート事件で急降下したのだ。カネを巡って高まった政治不信という強い逆風に吹き飛ばされた
▲そんな記憶がよみがえったのは、派閥の裏金事件で自民党に再び逆風が吹いているからだろう。きのう投開票された全国三つの衆院補選のうち、二つは不戦敗を強いられた
▲候補を立てられたのは島根1区だけ。竹下氏を生んだ島根県は「自民王国」と呼ばれる厚い支持基盤を誇ってきた。前衆院議長の弔い合戦でもあり、余裕の戦いのはずだったのに、逆風はここでも強く、議席を失った
▲地方を大事にしつつ、野党を含む異論への目配りを忘れない―。そんな竹下流の政治は、どこに行ったのか。数頼みの手法が幅を利かし、東京一極集中は加速する一方。変わらないのは、政治とカネの問題だけだとしたら情けない。
元稿:中国新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】 2024年04月29日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。