独白

全くの独白

求人倍率と賃金と好不況

2017-05-01 15:12:39 | 日記
従来人手不足に成ると、賃金というのは上がるものであった。
上げなければ人が来る筈は無いからである。
ところが近頃は求人倍率が高止まりしているのに、賃金の上がり方は相対的に穏やか過ぎる様である。
非正規を正規にという動きもある一方で、広義の非正規とも云える女性や高齢者の就職も増えているから、総体として上がらないらしい。
官製春闘や普通の賃金闘争などに依る、賃金そのものの上昇の仕方が小さいのも、勿論因子としてある。
賃金そのものを上げる事に企業家が消極的なのは当然である。
個人の生活でも隣人や住む町や国の事を考えられるのは、自身や家族の暮らしが安定して居ればこそである。
企業の活動でも先ずは己が城の中の住民を守り果せて初めて、公的経済を慮る事ができよう。
守りが堅過ぎて悪い事は無い。内部留保を容易く取り崩す気に成れないのは情として自然である。
剰え近頃は賃金を上げなくとも人は来るのである。
夫の賃金が上がらないので妻も稼ぐしか無い。正規の従業員も老後の保証が先細りしつつ在り、定年を迎えても退職する気には成れない。国に尻を叩かれる迄も無く、総活躍せざるを得なく成りつつあるからで在る。
ところで従来なら、人手不足に依る賃金上昇が巡り巡って好況を呼んだ訳であるが、近頃の賃金上昇は総計としてのものに過ぎず、個を潤しては居ないので、そのような力を持って居ない。
先ず割合余裕のある独身者は上に述べたように、昇給が然程では無いので購買意欲の上がり方も然程では無い。それが更に高齢に成れば先行きに不安を覚えざるを得ないような世相であり、自衛の為貯蓄を増やす必要に迫られて益々購買欲は損なわれて行く。
高齢者や主婦も、抑も働く理由が主には上述のように不足を補う事に在るに過ぎず、新たな消費には無いので、当面の不足を補った後に残る収入の殆どが内部流保されてしまうのは寧ろ当然である。
当然支払った賃金の殆どは、企業に還流する事が無いという事に成る。
企業の中にも他の企業より強く社会的責任感を抱く所はある。
併し利己的責任感にも存在理由はあり、企業特有の正義というものも在る。
そして利己性は利他性より自然であり、放って置けば企業も利己的活動を優先する傾向を有するのは言う迄もない。
更に内部留保するか、設備投資するか、賃上げするか等、選択肢の数には限りが無い。結果として賃上げ等は二の次、三の次にされてしまう。
自然の流れを変えるには制御する人為が必要であり、今の我が国で企業を制御する力は公に在るのみである。
制御の具体策も幾つも考えられようが、「官製春闘」や個別の企業への政治家からの働きかけ等には賛成し得ない。不純な匂いがするからである。公としての、より純粋な遣り方としては矢張り、税制での誘導等が在ろう。