石ころ

猟犬




 初冬のきっりっとした空気の中に、一枚脱いだ上にパーカーを羽織って飛び出した。
すると、向かって行く先にリードを付けない白犬の群れが・・1、2、3、4、5頭!人の姿は見えない。穏やかな感じだけれどこれは猟犬だ。有害鳥獣駆除を日曜日に時々やっていることを聞いていた。

群れは私の前を行く。近付くと立ち止まり、振り返ってじっと見ている。
「どうしよう・・でも、此処で後ろ姿を見せるほうが怪しまれそう・・、吠えないからたぶん大丈夫。何気ないふりで通り過ぎよう・・。恐くない。恐くない。出来るだけ自然に・・」

でも、近付いて来た・・みな近付いて来る。
そこで気づいた「黒いパーカーにフードをかぶっているから、熊と思われているかも・・」
急いでフードを脱ぐと2頭は目を反らしてくれた。しかし、まだ近付いて来るのが居る。
その時、車が走って来た。
「危ない。轢かれるで!」と怒鳴ってしまったら犬たちはみな去って行った。「え・・私の声が恐かったの?」

「良かった・・」とほっとして少し行くと、近くの山で激しく吠える犬の声と、バーンバーン。バーン。と地響きのような銃声を聞いた。
とても近くで聞こえたので「このまま歩いて居ていても大丈夫かな・・」とは思ったけれど足が止まらなかった。

 近頃は1時間コースを歩いている。足も痛まず疲れもせず、心が晴れて気持ちよいから少しくらいのことでは止まらない。
めったに人に出会わず、広々と舗装されたなだらかな坂道を登り詰め、大きく回って後は緩い下り坂というお気に入りのコースなのだ。

錦に色づいた山に向かって迫って行き・・いや、近頃はずいぶんセピア色になったけれど・・、帰りは、遙か藍色に重なり合う山の峰・・目の上には夕焼け雲を見て、広い道を独り占めして下っているとなんて贅沢なことだろうと感動するのだ。
その頃になると手袋を脱いで腕まくりをしたくなる。肌にじっとりと汗ばむのを感じる。だから一枚脱いで来るのだけれど・・。

 あの時「猟犬君に狙われているのかも・・」とちょっと恐い思いをした、「カカオ70」のチョコレートを口に放り込む。
「お菓子なんてね、絶対に上げてはいけないだろう・・彼らはお仕事中だから。」あの時は、ブラブラしている様に見えたけれど銃声の前後に吠え立てる声には迫力があった。

猟犬君に出会った場所まで戻って来たとき、脇道に止まったトラックの荷台に白い犬が入ったゲージが数個積まれていて、軽トラの荷台にチラッと何かが見えたように思った。
「あるいは・・」と後戻りしてのぞき込むと、イノシシらしきものが見えた。

「わーお、すごい!あの猟犬君やるなぁ、漁師もすごい腕なんだ。」本当は側で見たかったけれど、婆さんだし・・邪魔だろうし・・とあきらめる。
頭の中で「ジビエ」という言葉が広がった。いや、いや・・決して欲しいわけではなく、好きなわけでもなく・・単なる知識。

このことをはっきりしておかないと、近頃頭の中で「欲しい」と思った物が次々と届いてしまうので・・、あまりにそういうことが続くので・・思わないようにしなければならないのだ。
白菜が「美味しそう」とか、喉が渇いて木に成っている蜜柑を「美味しそう」と思っただけでどさっと届いたのだ。万一、イノシシがどさっと・・それは困る。非常に困るから。

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