チビのおしゃべり日記

お星さまになったチビへ
どんぐり母ちゃんが語りかけます。
ねえ、チビ・・・聞こえる?

手術は無事に終わりました。

2017年05月15日 | 日記
私たちを乗せたエレベーターは目的の階で止まりました。
シーンと静まり返った廊下。他に人は見当たりません。
廊下中央には『中央放射線部受付』があり、二人のスタッフが待ち受けていました。

どんぐり母ちゃんの左腕には、個人を認証するリストバンドが装着されてます。
リストバンドには患者の識別番号とバーコードが印字され、
小さなセンサーのようなもので読み取れるようになってます。
(入院から退院するまでの間、治療、検査、点滴、薬、体温、
血圧、等々、全てが認証番号で管理されます)

受付では口頭で自分の名前を伝えた後、リストバンドを提示しました。

万が一同姓同名の方がいた場合の誤認を防ぐ為です。
この事はどの場所においても徹底していました。

受付の横には、幾つもの長椅子が用意され、
家族が待機できるように部屋も用意されています。

どんぐり父ちゃんも、ここから先は行けません。ここで待つ事になります。
『母ちゃん、あの事シッカリ覚えたか?』
『大丈夫!シッカリ覚えてます』
※読者の皆さまの中には、お気付きの方もいらっしゃると思いますが
今日はまだ秘密です。

私も父ちゃんも、お互い心の準備はしておりましたが、見送られるよりも、
見送る父ちゃんの方が一番辛いのを分かっておりました。

私が感傷的になってはいけない。ここは敢えて明るく振舞いました。
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広い廊下を進んだ先が『中央放射線治療室』です。

大きなドアが開くと同時に、目の前には主治医と多くの医療スタッフが
私の到着を待っていました。

手術台は踏み台を使わないと上がれないほどの高さがあります。

『寒いッ』カゼ引いたらどうしよう・・・。
なのに・・・たった一枚身を隠してた手術着をまたもや開かされ
胸のあたりに何本もの線をつながれました。
まるで、たこ足配線のよう・・・。

お願いだからヨダレとか汗水たらさないでね。感電死しちゃうから・・・。
心底そう思いました。

『どんぐりさん、心配しなくても大丈夫です。
喉への管は麻酔が効いてから通します。眠っている間に終わりますからね』
主治医と麻酔科の医師が、私の緊張をほぐすように軽く手を握ってくれました。

全身麻酔の為、自発呼吸が出来ないので、
麻酔が効いてから喉の奥へ管を通し肺に直接、酸素を送るようです。

しっかりと目隠しをされた後、何人かのスタッフに身体を支えられ、
頭を何かにすっぽり挟み込まれたような・・・そんな感じがしました。

そして右手に鋭い痛みが・・・麻酔の点滴が打たれたようです。

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誰かの声がして、喉に激しい痛みを感じました。
後になって、この時の痛みは麻酔から目覚めると同時に酸素を
送り込んでた管を抜かれた事によるものだと知りました。
(痛みは5日間ぐらい続きました)

『どんぐりさん、どんぐりさん、分かりますか?
手術終わりました。良く頑張りましたね』

ぼんやりとした視界の中に、主治医と麻酔科の医師の顔が見えました。

もうろうとした意識の中で頷いたのは覚えていますが
また眠ってしまったようです。

次に気が付いた時は集中治療室の中でした。

そして私たちが予想してた事がズバリ的中したのです。

続く。

手術当日。愛らしいカバーと共に・・・。

2017年05月13日 | 日記
手術を翌日に控え、主治医が数名の医師とスタッフを伴って病室へ入って来ました。
ここに居る全員が明日の手術に立ち会うようです。

『どんぐりさん、気分はどうですか?
今夜はシッカリ睡眠をとって下さいね。明日は一緒に頑張りましょう!』

そして翌日の手術開始時間が、午後1時から午前9時に変更になったことを告げると
緊張してる私を気遣うように、軽く肩を叩き静かに病室を出ていきました。
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手術前日の夕食は、魚の照り焼きと柔らかく煮込んだ野菜の煮物です。
デザートには、消化の良いプリンが添えられてました。

術後は、しばらく食事が出来ないと聞いてましたので、
前日からの食事も含め、その夜も残さずシッカリ完食。

その後、夜の8時以降は食べ物は勿論、水一滴も口に入れる事は一切出来ません。

全身麻酔の場合、胃腸の動きも止まってしまう為、
胃の中を空っぽにする必要が有るからです。
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そして手術当日の朝を迎えました。
どんぐり父ちゃんは、手術の2時間前には病室に入ってきてました。
緊張してるからでしょう。夕べは眠れなかった様子で硬い表情をしています。

手術一時間前になると準備の為、処置室へ連れて行かれました。
そこで手術着に着替え、医療用の弾性ストッキングを履かされました。
両親指の先だけすっぽりと空いてます。
術後の血栓を防ぐ事と、指の動きや皮膚色を確認するためのようです。

一人の看護師さんが何枚かの布を私の目の前へ持ってきました。
『どんぐりさん、可愛いでしょう。気に入った方を選んでください』
目の前に差し出されたのは、可愛い動物の写真がプリントされたカバーでした。

『可愛い~♪ ゴマちゃんにします!』
生まれたばかりの真っ白なゴマフアザラシの写真がプリントされてました。

最初は枕カバーかと思ってましたが直ぐに違う事に気づきました。

術後は、何日か集中治療室へ入れられ絶対安静を強いられます。
歩く事は勿論、起き上がる事も出来ません。

尿はビニールのオシッコ袋に貯めます。
その為、手術室へ行く前に尿道に管を通しオシッコ袋を装着されました。

そうです!愛らしいゴマちゃんのプリントは、オシッコ袋のカバーだったのです。

ゴマちゃんの可愛いプリント生地なら、他に色々喜ばれる用途があったでしょう。
例えば、幼稚園児の手提げ袋にしたり、小学生の上履き入れ・・・等々。
『ゴマちゃ~ん』っと言って小さな子供は大喜びするはずです。

まさかゴマちゃんだってオシッコ袋のカバーにされるとは思っても見なかったでしょう。
心なしかゴマちゃんの顔が悲しそうなに見えてきました。

そして準備が終わり病室に戻ると、どんぐり父ちゃんと数名の看護師が
車椅子を用意して待っていました。

これから、いよいよ手術室へ向かいます。

どんぐり母ちゃんの膝の上には、可愛いゴマちゃんのお洋服を身にまとった
オシッコ袋が満足そうに鎮座しています。

手術室へ向かう間は膝掛けで覆われていますが、万が一ずれてしまった場合、
他の人にオシッコ袋が見えないようにする為のカバーだったのです。

どんぐり父ちゃんには、手術室へ向かうエレベーターの中で
少しだけゴマちゃんカバーを見せてあげました。

『おお~可愛いね。手術の後に使う枕か?』

どんぐり母ちゃんは、ゴマちゃんカバーを優しく撫でてあげました。

そして、エレベーターは『中央放射線治療室』のある階で止まりました。

入院当日。手術を二日後に控えて・・・。

2017年05月04日 | 日記
掌に伝わる小さな鼓動・・・。
そーっと頬を近づけると、フワッとした暖かさが伝わって来ました。
『チビちゃん、母ちゃん行ってくるね。
お利口さんしてお留守番しててね・・・』

入院当日の朝、いつもとは何か違うのを察したのでしょう。
チビの小さな体が緊張でこわばってるように感じました。

ケージに戻そうとしても足を踏ん張ったまま掌から出ようとしません。
無理に入れようとすると必死になって胸元にしがみついてきました。

いつもなら大好きな父ちゃんに、まとわりついて離れないのに
その日は、わたしから離れようとしませんでした。

チビの不安そうな表情を見ているうちに、
愛おしさと切なさで、とめどなく涙がこぼれ落ちてきました。

涙はチビの背中を伝わってスーッと流れ落ちました。

手のひらサイズの小さな命。
その小さな背中に何度も何度も頬ずりしてからチビをケージの中に戻しました。

『ごめんね・・・母ちゃん必ず帰って来るからね。
帰って来たらいっぱい抱っこしてあげる・・・それまで待っててね』

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5か所に仕切られた入院の受付コーナーには、既に数名の方が順番待ちをしていました。
皆さん、ご家族らしき方に付き添われ一緒に説明を受けています。

入院される半数の方は、どんぐり夫婦と同じ年代のように見えます。
それぞれ病名は違えど何らかの病を持ち、治療または手術を受ける方々でしょう。

入院されるご本人よりも付き添われる方々(多分ご家族)の方が
疲れ切った様子に見えました。

どんぐり父ちゃんも同様です。心なしか一回り小さくなったように見えます。

まともに歩けなくなった母ちゃんの手を引きずりながら、
もう片方の手には大きなカバン。

2人でヨタヨタ歩く後ろ姿は、傍から見たらどちらが倒れても
おかしくない状態に見えたでしょう。

入院の手続きも済み、病室へ着くと丁度、昼食の時間になっていました。

ドアをノックする音と共に、配膳係の方が入って来ました。
『どんぐりさん、お昼をお持ちしました。このお名前でお間違えないでしょうか』

見るとトレーに置かれた用紙には部屋番号と私の名前が記されてました。

『間違いありません。ありがとうございます。いただきます!』

一つひとつの容器には蓋がしてあり、温かい物は温かく、
ゼリーなどのデザートはヒンヤリと冷たく温度管理がされてました。

美味しそう~♪
自分がイメージしてたのとは大違い。おかずもの品数も多く、
薄味を感じさせないくらい美味しく調理されてました。

病院の外には食事するお店が沢山あります。
どんぐり父ちゃんにも外で食事をしてくるように言いましたが
結局はコーヒーだけを飲んで早々に戻ってきてしまいました。

これから長丁場になります。
チビの為にも父ちゃんには健康で居てもらわないと困ります。

どんぐり母ちゃんは、添えられたおかずと、
どんぶりに盛られたご飯を米粒一つ残さずシッカリ完食!

傍から見れば手術を控えた患者とは思えないほどの食べっぷりです。
胃腸は至って健康。血色の良い健康優良児のような顔をしてるのに、
父ちゃんの方は、消化器系が悪そうな顏で今にも倒れそうに見えました。

父ちゃん!シッカリして! 父ちゃんの今月の小遣い2倍にしていいですよ。
好きなように使ってね。

一瞬!父ちゃんの顏が嬉しそうに緩むのが見えました。

続く。