読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

今野敏著「脈 動」 

2024-05-27 | 今野敏
鬼龍光一シリーズ。「警視庁本部が患っているということですか?」庁内で刑事が記者を殴る、更衣室で性行為を行うなどの非違行為が発生。事態の悪化をおそれた警視庁生活安全部少年事件課の巡査部長・富野輝彦は旧知のお祓い師・鬼龍光一を呼び出す。その結果常時ではあり得ない不祥事の原因は、警視庁を守る結界が破られており、このままでは警察組織は崩壊するという。一方、富野は小松川署で傷害事件を起こした少年の送検に立ち会い、半グレ集団による少女売春の情報をつかむ。一見無関係なふたつの出来事は、やがて奇妙に絡み合うことに。トミ氏の血を受け継いでいる警察官の富野が、不思議な事件を解決する展開。黒の鬼龍と白の阿部孝影と、性交で霊力を得る亜紀と陰陽道の宗家と、霊力に定評のあるメンバーで警察の破られた結界の謎を解く。警察小説と伝奇ミステリーが融合した物語。伝奇小説は読者の好みが別れると思うがまぁよくわからない分ご都合主義と説明不足が目立つ。いろんなことが書ける著者に感心です。
2023年6月角川書店刊 


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今野敏著「探花 隠蔽捜査9」

2024-04-29 | 今野敏
シリーズ9弾。神奈川県警刑事部長となった竜崎のもとに現れた、同期入庁試験トップの八島という男。福岡県警から赴任してきた彼には、黒い噂がつきまとっていた。さらに横須賀で殺人事件が発生、米海軍の犯罪捜査局から特別捜査官が派遣されることに・・・。横須賀~福岡のフェリー就航に端を発した殺人事件。表題の「探花」は紫色のバラ探しかと思ったが中国の科挙において、第3位の成績だった者の名称のことらしい。首席及第者の「状元」で、第2位及第者の「榜眼」。もっと日米地位協定のことが深堀されるかと思ったが問題点指摘だけで終わり残念だったが、ポーランド留学中の息子との音信不通問題や八島、伊丹のキャリアの思惑が絡み事件解決までの展開は、さすがに面白く、いつも通りの竜崎の思考と行動力、竜崎節は痛快だった。
2022年1月新潮社刊
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今野敏著「遠火 警視庁強行犯係・樋口顕」

2024-04-19 | 今野敏
事件解決愚直に走る平凡な男が輝く、警察小説シリーズ。現代日本の歪みを照らし出す社会派ミステリー。東京・奥多摩の山中で全裸の他殺体が発見された。警視庁捜査一課の樋口班は現場に急行。調べを進めていくと、殺されたのは渋谷署の係員が職質をしたことがある女子高生で、売春の噂があったことが判明する。樋口顕は被害者の友人である美人女子高生成島喜香に呼び出されて戸外で面会。すると、その様子を撮影した何者かによってインターネット上に写真を流され、同僚やマスコミから、あらぬ疑いをかけられてしまう。名刑事が陥った最大の危機。罠を仕掛けたのは女子高生なのか、秀でた能力があるわけではなく、他人を立てることを優先し、家族も大切にしながら、数々の難事件を解決してきた樋口。どうやって事件の真相に辿り着くのか。女性の貧困、性の商品化、SNSの悪意、親子関係の変質・・・。樋口の姿勢、自己の心に正直に向かい合って生きることのむずかしさと大切さがよくわかり、一気読み出来た。
2023年8月幻冬舎刊


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今野敏著「秋麗 東京湾臨海署安積班」

2024-03-01 | 今野敏
青海三丁目付近の海上で遺体が発見される。身元は、かつて特殊詐欺の出し子として逮捕された70代の戸沢守雄という男だった。安積たちが特殊詐欺事件との関連を追う中、遺体発見の前日に戸沢と一緒にいた釣り仲間の猪狩修造と和久田紀道に話を聞きに行くと、二人とも何かに怯えた様子だった。何らかの事情を知っていると踏んだ安積たちが再び猪狩と和久田の自宅を訪れるも既に誰もおらず、消息が途絶えてしまう・・・。老いがテーマの今回の事件、”老い”の哀しみ、寂しさとあの昭和世代のベテラン記者のセクハラ話が絡んでくる。人生の秋麗、歳を取って誰からも相手にされなくなった孤独な老人が、久しぶりに胸が張り裂けるほど興奮し、その興奮がもとで殺された。東京湾臨海署の安積剛志係長の働きすぎと離婚は気になりました。
「自分が誰からも必要とされなくなる。それでも毅然としていられるかどうか・・・。それが怖い」「人は生きている限りは枯れたりしませんよぉ・・・枯れる必要なんてないさ」「人は若くても老いても、本人の気持ち次第で輝ける」(本文より)
2022年11月角川春樹事務所刊


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今野敏著「黙 示」

2023-12-23 | 今野敏
萩尾警部補シリーズ第3弾。
渋谷区の高級住宅街で窃盗事件が発生! 警視庁捜査三課の萩尾警部補は、相棒の秋穂と現場に向かった。被害者はIT長者の館脇で、盗まれたのは伝説の「ソロモンの指輪」、4億かけて入手したものだという。
事件には「暗殺教団」らが関わっており、館脇は命を狙われているというが・・・。
登場人物も限られていて結末も途中で見当が付く割に,
こねくり回しで展開が遅い。古代の歴史物の諄い会話の繰り返しで、個人的には面白くなかった。
2020年6月双葉社 


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今野敏著「トランパー 横浜みなとみらい署暴対係」

2023-11-11 | 今野敏
横浜みなとみらい署シリーズ第7弾。「トランパーとは、不定期航路に就航するバラ積み貨物の輸送船のこと」。神奈川県警みなとみらい署刑事第一課暴力犯対策係係長・諸橋夏男。〈ハマの用心棒〉と呼ばれ、暴力団から一目も二目も置かれる存在だ。県警本部永田課長から問い合わせがあり、管内の暴力団の情報提供を求められる。高級食材の取り込み詐欺事案だ。大量の商品を注文して代金を支払わない「取り込み詐欺」に管内の暴力団・伊知田組が関与しているらしいが、確証がないという。県警本部と合同で張り込みを開始、伊知田が所有する倉庫に品物が運ばれたのを確認するが、ガサ入れは空振りに終わった。倉庫にはあるはずの高級食材は無かった。誰かが捜査情報を漏らした疑いがある。物語の鍵となるのが船舶輸送用コンテナ。・・・中国の公安スパイや中国の政治事情とコンテナ争奪戦を取り上げたのはタイムリーな話でリアル感がある。人間関係の妙と会話形式の話がテンポよく進む展開で一気読みができた。最後の詰めの自供の展開も痛快だった。
2023年5月徳間書店刊
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今野敏著「無明 警視庁強行犯係・樋口顕」

2023-06-03 | 今野敏
樋口顕シリーズ。東京の荒川の河川敷で高校生の水死体が見つかった。所轄の警視庁千住署が自殺と断定したが、遺族は納得していない。高校生は生前旅行を計画しており、遺体の首筋には引っかき傷があったという。両親が司法解剖を求めたものの千住署の刑事に断られ、恫喝までされていた。本部捜査一課の樋口は別働で調べ始める。しかし、「我々の捜査にケチをつけるのか」と千住署からは猛反発を受け、本部の理事官には「手を引け」と激しく叱責されてしまう。特別な才能はなく、プライドもないが、上司や部下、そして家族を尊重する樋口顕は警察組織のルールを破ってまで、真実解明のために必死に取り組む。組織は、なんのためにあるのか?そして、上に逆らっても戦える勇気があるのか?忖度では、事態を変えることはできない。樋口顕の芯の強さに感心する。信念を曲げない点では竜崎とよく似ていると思った。
2023年3月幻冬舎刊


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今野敏著「石礫 機捜235」

2022-11-29 | 今野敏
初端の仕切りをする機捜が主人公のシリーズ第2作目。
渋谷署に分駐所を置く警視庁第二機動捜査隊所属の高丸卓也と、一見白髪頭で風采のあがらない男だが捜査共助課見当たり捜査班(独特の能力と実力を求められる専門家集団)出身の縞長省一。
日々事件解決を陰で支える機捜隊員コンビが巡回中に 発見した指名手配犯はタクシー運転手を人質に取り立てこもる。
やがてそれが爆弾テロ計画とつながりを疑い彼らは成行きから特捜班入りとなり事件を追う展開に・・・。所轄と役割も違う、他の捜査員たちと、爆破事件未遂犯人を逮捕するテンポよい運びで面白かった。
2022年5月光文社刊

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今野敏著「任侠楽団」

2022-11-25 | 今野敏
ヤクザが人と会社を立て直す「任侠」シリーズ第6弾。不器用な奴らの痛快世直し話。出版社・病院・映画館・学校・銭湯と立て直してきた一本独鈷のヤクザ阿岐本組親分スキンへッドの阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々舞い込んでくる。今度は公演間近のオーケストラ。ヤクザということがばれないように、コンサルティング会社の社員を装う代貸の日村。慣れないネクタイを締めるだけでもうんざりなのに、楽団員同士のいざこざが頻発する。そんな中、イースト・トウキョウ管弦楽団指揮者が襲撃される事件が発生! 警視庁捜査一課からあの刑事碓氷警部補がやってきて・・・。謎解き部分が大半で日村以外の子分たちの活躍を読みたかったのだが少なかった、クラッシックとジャズ、弦楽器奏者と菅楽器奏者、指揮者と奏者団員、オーケストラの裏側など垣間見れたのでよかった。マル暴甘糟刑事や仙川係長も登場しての任侠シリーズは面白い。
2022年6月中央公論新社刊

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今野敏著「ボーダーライト」

2022-10-20 | 今野敏
伝奇アクション小説。前作「わが名はオズヌ」の続編。なぜか神奈川県内で薬物売買や売春などの少年犯罪が急増しはじめた。県警少年捜査課の巡査部長高尾勇と部下の丸木正太巡査が一連の事件を洗い始めると、彼らは"普通の高校生"で、いずれも人気バンド「スカG」のボーカルの女性「ミサキ」の信奉者だった。圧倒的なカリスマ人気を誇るミサキの歌を直接聞くことによって、若者が街頭犯罪への躊躇いが無くなっていくと推察する。果たして、彼女は事件に関係しているのか? 一方、高尾のよく知る高校生・赤岩猛雄が薬物売買の疑いで逮捕されようとしていた。彼は元暴走族リーダーだったが、かつての仲間が犯罪に手を染めるのを阻止したという。高尾は、オヌズの憑依者(修験道の開祖役小角の呪術力を操るという謎の高校生)・賀茂晶の協力を得て、事件の背後に潜む黒幕の正体をあぶり出そうとするが・・・・・。未来に期待が持てない若者たち。そんな日本社会、政治が悪いのか展開・解決方法はコミック的だし、前作を読んでいないのだが十分楽しめた。前作機会があれば読んでみたい。
2021年10月小学館刊
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今野敏著「ロータスコンフィデンシャル」

2022-10-17 | 今野敏
公安のエース、倉島警部補の活躍を描くシリーズ第6弾。公安外事一課の倉島は、「ゼロ」の研修帰りのエース。ロシア外相が来日し、随行員の行動確認を命じられるが、同時期にベトナム人の殺害事件が発生。容疑者にロシア人ヴァイオリニストが浮かび上がる。一方、外事二課で中国担当の盛本もこの事件の情報を集めていることがわかる。倉島は、ベトナム、ロシア、中国が絡む事件の背景を探るが・・・。題名ロータス(その果実を食べると、楽しく、忘我におちいり、故郷に帰ることも忘れるという植物。ロトス。蓮 。)通リ倉島警部補の愚鈍さが際立ち、本当に今までの倉島警部補と同一人物なのかと疑ってしまう。優秀な人の陥りがちな事「慢心」。ペアの白崎に指摘され、偉いさんに怒られ、直属の上司にも怒られる。そこでようやく目が覚める。そのような状況に陥ってしまった理由の描写、犯人検挙までのスリル感がなく淡々と描かれる。伊藤の頭の良さに感心、日本のインテリジャンスは大丈夫なのか心配になる。あいも変わらず縦社会、縄張り意識、階級意識、どうして警察組織機構というのはこうなんだろうと思う。
2021年7月文藝春秋社刊

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今野敏著「暮鍾 東京湾臨海署安積班」

2022-08-07 | 今野敏
臨海署安積班シリーズ第20弾。10編の短編。短編でありながらそれぞれのストーリーで、安積班のメンバーの得意分野や個性や人間を伝えている。安積の仲間を大事にする姿と個性的なキャラのメンバーたち。第1編「公務」では働き方改革がテーマ。刑事の残業問題って難しい。第2編表題作「暮鍾」では、事件が起きて凶器を持ってすぐ自首してきた犯人に疑問を抱く須田に佐治係長が・・・。桜井が活躍する第5編「大物」。第6編「予断」では、安積班と鑑識の石倉さんの飲み会が描かれており、石倉氏の推理問題にいどむ話がおもしろかった。フィギュア好きな須田が光る第8編「防犯」。第10編「実戦」では黒木の強さと理由がわかり、安積が交通機動隊速水の運転する車で犯人とのカーチェイスを演じる楽しい展開。TVで安積=佐々木蔵之介のイメージで読んだ。
2021年8月角川春樹事務所刊

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今野敏著「大 義 横浜みなとみらい署暴対係」

2022-07-23 | 今野敏
「ハマの用心棒」諸橋と陽気な相棒・城島、人間味溢れる刑事たちの活躍を描くスピンオフ集。みなとみらい署シリーズ。7つの連作短編。神奈川県警監察官の笹本に、県警本部長から呼び出しがかかった。みなとみらい署暴対係長、通称「ハマの用心棒」こと諸橋と、地元のヤクザである神風会組長・神野の癒着を懸念した本部長に、笹本は調査、報告を命じられる。折しもみなとみらい署管内で暴力団同士の傷害事件が発生。笹本は諸橋に会うため現場へと向かった・・・表題作「大義」。他に、テキヤがいなければ祭りが成立しなかった。ウェブ掲示板と暗殺計画・・・「タマ取り」。桜木町と伊勢佐木町・・・「謹慎」。マルBと見分けがつかない刑事・浜崎。強面に必要なこととは・・・「やせ我慢」。笹本監察官。報告・連絡・相談。自分に変えられないものを受け入れる。日本丸メモリアル・パークで・・・「内通」。ヤクザの本分・・・「表裏」。署の兵器、倉持の技・・・「心技体」の6編。面白く読み易い。一気に読み終えた
2021年3月徳間書店刊


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今野敏著「宋 棍」

2021-08-21 | 今野敏
「義珍の拳」「武士猿」「チャンミーグヮー」「武士マチムラ」に続く琉球空手シリーズ。 
幕末、琉球王国が滅びゆく時代に、国王の武術指南役を務めた松村宗棍。「手(ティー)」を学ぶ実在の武術家。強さとは何かを追い求め、琉球空手の礎を築いた男の生涯を描いた物語。「他人に勝つことなど、どうでもいい。自分の中に、絶対の強さを培え」・・・ 松村宗棍(そうこん)は13歳の頃、友だちをいじめる少年たちを打ち倒した。それによって高名な武術家・照屋に武の才を見出され、彼に弟子入りする。元服を迎えて首里王府の役人となるが、強さが評判を呼んで、国王に御前試合への参加を命じられる。思いがけず琉球屈指の強豪たちに挑むことになり・・・国王との交流、「最強」の妻との出会い、好敵手との決闘、猛牛との闘い、弟子の自害等々様々な出来事に直面しながら、彼は本当の強さを追い求めていく。東京五輪で空手の形で金メダルを取り一躍有名になった場面を思い浮かべながら一気読み。妻のチルーや親のことは書かれているが仕事と武術のことが中心の構成で個人的なことも知りたかった。
2021年6月集英社刊
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今野敏著「任侠シネマ」

2021-08-18 | 今野敏
任侠シリーズ第5弾。義理人情に厚いヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々と舞い込んでくる。今度の舞台は、北千住にある古いミニシアター映画館。TVやネットに押されて客足が落ち、映画館を経営する千住興行の増原社長も閉館を覚悟している様子。その上、存続を願う「千住シネマ・ファンの会」へ嫌がらせをしている輩の存在まで浮上する始末。「永神のオジキは、映画館の話でいらしたんですか?」興味津々の若い衆に、阿岐本組代貸の日村は心の中で溜め息をつく。困った人をほっとけず、さらには文化事業が大好きな親分の性分、暴対法でヤクザも生きにくい世の中、マル暴の甘糟に監視されながら、阿岐本組の面々は、存続危機の映画館をどう立て直すのか・・・。今回は乗り込んでではなく会社を取り巻く状況に対応して立て直す展開で、今回も笑わせてもらいました。2020年5月中央公論新社刊
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