読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

佐々木譲著「時を追う者」

2023-09-12 | 佐々木譲
タイムトラベルで過去に行き戦争を阻止しようとする冒険サスペンス。「もし過去に戻って開戦を阻止できるとしたら、どうする?」1949年、終戦から4年が経った東京。陸軍中野学校出身でかつて破壊工作員だった藤堂直樹は、歴史学者の守屋淳一と物理学者の和久田元から過去に時間を遡る手段を発見したと聞かされる。さらに二人は直樹に思いがけない依頼をしてきたのだ「過去に戻って、戦争を始めた者たちを排除して欲しい」。目指すは満州事変の阻止。未来は、それで本当に変わるのか?最初は拒否した藤堂だったが、直後に巻き込まれてしまった事件から逃れるために、同じように事件に巻き込まれた仲間2人とともに過去への旅に同意せざるを得なくなる。過去へと渡った直樹たちは、船で満州に渡り、大連そして奉天で憲兵や関東軍の警戒をかいくぐりながら機会を窺うのだったが、そこには中国の抗日組織も絡んで来て・・・。彼らの目的は果たして達成されるのか?この国の未来はいかに変わるのか?ストーリーは、アグレッシブに直線的に爆走する歴史改変物です。タイムトラベルの原則で過去での歴史の改変は出来ないといわれる、たとえ変えられたとしてもその後のイベントで修正されるらしい。しかしそうしたとしても息つく暇もないスピーディーな展開と圧倒的なクライマックス大変面白かった。
2023年5月光文社刊
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佐々木譲著「樹林の罠」

2023-05-15 | 佐々木譲
道警・大通警察署シリーズ。Covid-19禍の札幌。轢き逃げの通報を受け、臨場した北海道警察本部大通署機動捜査隊の津久井卓は、被害者が拉致・暴行された後に撥ねられた可能性が高い事故ではなく事件の可能性があることを現場で知る。その頃、生活安全課少年係の小島百合は、駅前交番で保護された、九歳の女の子を引き取りに向かう。その子は、旭川の先の町から札幌駅まで父親に会いたいと出てきたようだった。一方、脳梗塞で倒れた父を引き取るために百合と別れた佐伯宏一は、仕事と介護の両立の生活に戸惑っていた。そんな佐伯に弁護士事務所荒らしの事案が舞い込む・・・。それぞれの事件がひとつに収束していく時、隠されてきた闇が暴かれていく展開。コロナ禍に見舞われながらも過去の事件によってメインを外され遊軍にいる刑事たちの閉塞感と矜持がそこはかとなく描写され地味な事件の地道な捜査の様子と、そんな彼を支える仲間たちの熱い思いや行動が丁寧に描かれた道警シリーズ、最新作に静かに感動。中国人の土地の買い漁り、原野商法と無断伐採などリアル感ある話で面白かった。
2022年12月角川春樹事務所刊


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佐々木譲著「闇の聖域」

2023-04-22 | 佐々木譲
舞台は、満州、大連。「張作霖爆殺事件」の二年後、警視庁を退職して満洲・大連警察署特務巡査となった河村修平は、初勤務早々、殺人事件の捜査に携わる。被害者男性の首には頸動脈を狙ったような傷があり、修平は東京で起こった殺人事件との類似に気づく。一方、新進画家の中村小夜は街で偶然出会った青年ルカへの想いを深めてゆくが、彼には一族にまつわる秘密があった。やがて小夜は警察が事件の容疑者としてルカを追っていることを知る。犯人を追うミステリが途中からファンタジーに結末も最後は幻想小説風の幕切れでガッカリ。リアリズムの映画と思って観ていたら突然別のファンタジー映画に変化した感じ。サスペンス×ロマンス長篇とあるが佐々木譲氏には本来の社会派リアル・ミステリのテーマでの著作を期待したい。なんとなくルーマニア吸血鬼・難病ALS・中医薬不思議な漢方薬。なんなのかな?
2022年11月角川書店刊
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佐々木譲著「裂けた明日」

2022-12-19 | 佐々木譲
改変歴史小説、舞台は、近未来のパラレルワールド、朝鮮半島に高麗連邦という国が出来、日本国は分断され国民融和政府と国連平和維持軍が統治する国と敵対する盛岡政府側との内戦にあって、福島の二本松で隠居生活を送る元公務員の沖本信也が主人公。盛岡政府側の地上軍、民兵部隊、平和維持軍、入り乱れる戦闘のさなか、東北民間防衛隊に追われる避難民の酒井真智とその娘・由奈が沖本の下へと救済を求めてきます。酒井真智は、大学時代の旧友たちの娘であり、断ることができず、役所勤めの経験をいかし逃亡することになった三人は、二本松から原発の高濃度汚染地域を通過し、軍事境界線を越えて、迫りくる危機をかい潜りながら、東京へ向けて南下していきます。スリリングな逃避行と、創造力を駆使して構築された背景と巧緻な街の描写を俯瞰的に描写されていく中で物語の背景が、小出しに現れてきます。理解しがたい事態、明確に示されない何故の曖昧さが実はこれからの日本の未来だと著者は言いたかったのか不確かで決して独立した国家としての体をなしていない「日本」という国を憂えているようで共感出来ます。何故そこまで2人に身を懸けるのか?後半明らかになります。 緊迫の頂点で、秘めた言葉が血と嗚咽とともに迸る展開ですが、特異な環境設定で最後まで感情移入で出来ず読了。
2022年8月新潮社刊

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佐々木譲著「雪に撃つ 道警・大通警察署」

2022-08-04 | 佐々木譲
道警シリーズ9作目、さっぽろ雪まつり開幕前日に起こった、自動車窃盗事件、少女の家出、そして発砲事件。無関係に見える事件が、一年で一番賑わう札幌でひとつに収束していく。虐待、不正、外国人労働者など、刑事たちの執念は届くのか・・・「さっぽろ雪まつり」の数日前、長万部駅。札幌へ逃亡するベトナム人女性たち。自動車窃盗事件に遭遇する佐伯と新宮。一方、少女の家出事件に巻き込まれる生活安全課少年係の小島百合。そして、津久井巡査部長は、降る雪の中、ある発砲事件を追跡します。それぞれが追いかける事件は、「さっぽろ雪まつり」前夜祭の張り詰めた騒乱に向けて、次第にそのピースを寄せ合いながらやがて一つに収束されていきます。静けさのなかの立ち上がりながらスピーディーな運びでいつもの面々の活躍が面白かった。
2020年12月角川春樹事務所刊

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佐々木譲著「偽装同盟」

2022-05-12 | 佐々木譲
改変歴史小説「抵抗都市」に続く第2弾。日露戦争に負けた日本、ロシアの属国と化した東京。日露戦争終結から12年たった大正6年。敗戦国の日本は外交権と軍事権を失い、ロシア軍の駐屯を許し、欧州戦線に日本軍を派遣していた。3月、ロシアとの「二帝同盟」の下、主人公・特務巡査新堂は連続強盗事件の容疑者を捕らえるが、身柄をロシアの日本統監府保安課に奪われてしまう。新たに女性殺害事件の捜査に投入された新堂だったが、ロシア首都での大規模な騒擾が伝えられ・・・「もうひとつの大正」新藤は、警察官の矜持を貫けるのか。国家を背負いながら、二国間の軋轢の中、捜査を全うしようとする新堂には前作でも登場したロシア・コルネーエフ大尉の「侠気」が国家を超えて描き込まれています。平行世界の東京の風景が圧巻。あり得ない世界が、現実と置き換わっていくような感じがして、露国のウクライナ侵略の現実と重ね合わせて読んで楽しかった。
2021年12月集英社刊

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佐々木譲著「帝国の弔砲」

2021-05-06 | 佐々木譲
改変歴史(オルタネートヒストリー)SF。なぜ彼は、工作員(スリーパー)として日本に潜伏したのか・・・1895年(明治28年)、日本人移民の子として極東ロシアに生まれ育った主人公小條登志矢が、ロシア帝国軍に徴兵され、第一次大戦を戦い、後に起こったロシア革命に翻弄される話。ロシア沿海州に開拓農民として入植した小條夫妻の次男・登志矢は、鉄道工科学校で学び、念願の鉄道技能士となった。だが世界大戦のさなか帝国軍に徴兵されて前線へ送られ、激戦を生き延びる。そして復員すると、帝国には革命の嵐が吹き荒れ、やがて登志矢もいやおうなしに飲み込まれていく。悲嘆、憤怒、そして憎悪が、運命に翻弄された男を突き動かすのだった。シベリア出兵や日露戦争史実を織り交ぜながら語られるので本当にあった史実かと読み進めたが・・・改変歴史小説だったようです。
しかし、戦争の悲惨さ国家に翻弄させる個人の悲嘆など良く伝わって来て思わず主人公に感情移入して読んでしまいました。
2021年2月文藝春秋社刊
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佐々木譲著「抵抗都市 Resistance city」

2020-12-05 | 佐々木譲
歴史改変警察小説。舞台は日露戦争に「負けた」日本。終戦から11年たった大正5年、ロシア統治下の東京で、身元不明の変死体が発見された。警視庁刑事課の特務巡査・新堂裕作は、西神田署の巡査部長・多和田善三と組んで捜査を開始する。だがその矢先、警視総監直属の高等警察と、ロシア統監府保安課の介入を受ける。どちらも、日本国内における反ロシア活動の情報収集と摘発を任務とする組織だった。身元不明の変死体は誰?何故、殺害されたのか?そして、その死体は・・・一体何を「この国」にもたらそうとするのか?ひとつの死体の背後に、国を揺るがすほどの陰謀が潜んでいることをやがて二人は知る。「今の日本への問題意識を示すために」というのが作者のモチーフだが、まぜ日露戦争に負けた後のロシア統治下を舞台にしたのか、よく分からない。天皇制は保たれているものの、警察権力も統治者であるロシアの監視を受け、これに逆らえば日本そのものが失われてしまうという極めて危うい亡国の状況の下で、反ロ派、親ロ派、日本軍、ロシア軍の間で、民族主義も織り交ぜた複雑な主導権争いが繰り広げられるのだが、最後まで違和感が邪魔して楽しめなかった。 
2019年12月集英社刊
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佐々木譲著「降るがいい」

2020-10-16 | 佐々木譲
朗読会で「読む」ために書き上げた作品含む人間ドラマ、全13篇の短編集。就職直前の不採用に年末のクレーム・・・「降るがいい」。海外旅行中偶然見つけた美しい中庭を求め再訪を試みるが見つからない・・・「迷い街」。本番当日に失踪した舞台女優と数年ぶりに再会した脚本家の心に去来したもの・・・「不在の百合」。かつての仕事仲間の訃報を私に告げた、意外な人物・・・「隠したこと」。自堕落な生活を続ける後輩との会食で、私がとったある行動・・・「反復」。痛快75歳のマンション清掃の女性の物語『ゴミの扱いにはずいぶん習熟してきた』・・・「分別上手」。世話になった先輩の私的写真集を選考編集中に見つけたかって愛した女の写真を・・・「リコレクション」。SNSの友達申請で昔の記憶が蘇った・・・「時差もなく」。スーパーの食品売り場で偶然出くわした社長の奥さんが・・・・・「ショッピングモールで」。お別れの会に飾られた遺影の写真と悪意・・・「遺影」。あまり出たくなかった同級生の藍綬褒章受章を祝う会・・・「褒章と罰」。コロナ・ウィルス禍最中に書き下ろされた2編が今時で新しく感じた・・・客がすっかり減ったスナック。今宵も御客がなくもう閉めようかと思った時・・・「3月の雪」。こだわりがあった距離をとっていた父が危篤と連絡が来て・・・「終わる日々」
都会の片隅で生きる人々の埋もれた真相が明かされるとき、過去の重みが忍び寄る。人々の苦い経験や切ない過去、日常の出来事の話などどの作品も余韻が濃く残った。
2020年8月河出書房新社刊
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佐々木譲著「図書館の子」

2020-10-03 | 佐々木譲

時とたたかい、時に翻弄される者たちを描いたSFのような短編六編。とある北の国。猛吹雪の夜、図書館に母親の迎えを待ちながら手違いで一人の少年が取り残された。暖房もない極寒の館内。そこに突然現れた謎の男は少年を救い、やがて大切なことを伝え始めた。・・・表題作「図書館の子」。1937年の東京で照明弾のような光源が見えた日。隅田川で拾われた男が病院に運ばれてくる。その身元不明の男は記憶を失っていたが、なぜかこれからやってくる戦禍の時代を知っているかのようだった。・・・「遭難者」。戦災を免れた谷中。二人の少年の冒険は、防空壕の奥深くの廃駅へ。・・・「地下廃駅」。フィレンツェの伝説。天体図。カララの石切場で助けられた錬金術師が予言した500年後。・・・「錬金術師の卵」。満州・大連、クラシック・ホテルで行われたユダヤ人ピアニストの演奏会で・・・「追秦ホテル」。満州の大連からハルピンまでの女一人の傷心の列車旅。・・・・「傷心列車」。どれもタイムスリップをテーマにした短編集ですが、短編ゆえの物足りない中途半端感は否めない。
2020年7月光文社刊
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佐々木譲著「犬の掟」

2019-03-10 | 佐々木譲

「迷わず撃て。お前が警官ならば」。緊迫の40時間を描いた警察小説。7年前籠城事件で死の危険に遭った警官波多野、そして、それを間一髪で救った同期の松本。数年後、所轄の刑事、本庁捜査一課の若手刑事となった2人は同じ事件を捜査を担当する。東京湾岸で小橋組の幹部深沢が射殺体で発見された。蒲田署の波多野涼刑事と門司刑事は事件を追い、警視庁捜査一課の松本章吾刑事と綿貫刑事には伏島管理官から内偵の密命が下される。所轄署より先に犯人を突き止めよ。浮かび上がる幾つもの過去の不審死、ヤクザ同士の抗争か見え隠れする半グレグループの暗躍、そして公安警察の影。二組の捜査が交錯し、刑事の嗅覚が死角に潜む犯人をあぶり出していく。

二組の刑事の視点を入れ替えて緊迫の展開。そして衝撃のクライマックスは、警察の不祥事が連日をマスコミ、新聞、テレビなどで見たり聞いたりしていると、こんな事件も現実に起こりえるかもと諦めのような気分にさせられたが久々に濃厚なミステリーサスペンスを楽しめました。

2015年9月新潮社刊

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佐々木譲著「英龍伝」

2018-03-11 | 佐々木譲

『武揚伝』『くろふね』に続く、幕臣三部作。開国か戦争か。いち早く「黒船来航」を予見、未曽有の国難に立ち向かった伊豆韮山代官・江川太郎左衛門英龍(1801-1855)。領地の伊豆韮山では徹底して質素・倹約を貫き、有事には蜀江錦の野袴に陣羽織姿で銃士達を率い、英国船と交渉、それを退けた。

「黒船来航」をはるか前から予見。自ら蘭学、西洋砲術を学び、海防強化を訴え、反射炉造築、江戸湾の台場築城を指揮した。誰よりも早く、誰よりも遠くまで時代を見据え、近代日本の礎となった希有の名代官の一代記。黒船ショックをよく目にする維新のヒーロー達とはまた違った観点から丹念に描いている感動物語でした。

20181月毎日新聞出版刊

 

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佐々木譲著「真夏の雷管 道警・大通警察署」

2017-11-06 | 佐々木譲

道警シリーズ。真夏の札幌の小さなホームセンターで発生した肥料窃盗事件と少年の万引き事件の捜査が、やがて交錯し大掛かりな爆破事件に繋がっていく警察小説。

盗まれた追肥は爆薬製造に繋がるものであり、警察署に一度は保護したあと逃げ出した万引き犯の少年を追う内にJR北海道の不祥事で解雇されたある人物の姿が浮上した。工事現場からなく無くなった信管。爆弾製造、何を爆破するのか。タイムリミット迫る命懸けの任務。佐伯が警官の覚悟を見せるなど懐かしい面々の活躍、現実に有ったJR北海道の不祥事事件やブームの鉄道マニア鉄ちゃん、アイドルイベントを絡めた展開で面白かった。いつでもどこでも起こるテロの可能性を秘めた格差社会の日本の現状に警鐘だ。

2017年7月角川春樹事務所刊

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佐々木譲著「沈黙法廷」

2017-07-22 | 佐々木譲

警察小説と法廷小説が融合。東京・赤羽で絞殺死体で発見されたひとり暮らしの初老の男性。親譲りの不動産を所有する被害者の周辺には、多くの捜査対象が存在した。地道な鑑取り捜査の過程で、家事代行業の女性が浮上した。しかし彼女の自宅に赴いた赤羽署の捜査員の前に、埼玉県警の警察車両が。彼女の仕事先では、他にも複数の不審死が発生していたのだ。ワイドショーは「またも婚活殺人か?」と騒ぐ。やがて舞台は敏腕弁護士と検察が鎬を削る裁判員裁判の場へ。一方、この事件を知った仙台市の工務店で働く弘志は、ある理由から会社も辞めてまでもこの裁判を傍聴する。やがて無罪を訴える彼女は証言台で突然、口を閉ざした。有罪に代えても守るべき何が、彼女にはあるのか。彼女は何を守ろうとしたのか。

有力な物証がなく、ほぼ状況証拠で展開される裁判員裁判、検察はこの法廷闘争を前提に事件を組み立てているのかのよう。裁判を通じて、一人の女性の人生を浮き彫りにする展開に、裁判もリアリティがあり事件の真実の謎解きと十分楽しめた。

2016年11月新潮社刊

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佐々木譲著「代官山コールドケース」

2016-09-06 | 佐々木譲
特命捜査対策室の水戸部をはじめとした刑事たちが挑んでいく警察小説シリーズの第二弾。
コールドケースとは迷宮事件のこと。
1995年(平成7年)オウム事件で忙殺されていたころ代官山で起きたカフェ店員殺人事件が“冤罪”の可能性出てきた。
2012年川崎で起きた女性殺人事件の現場に遺されたDNAが18年前に代官山で起きた事件で採取されたものと一致。
当時被疑者となったカメラマンは変死。
「17年前の事件の真犯人を逃して、二度目の犯行を許してしまった、となると、警視庁の面目は丸つぶれだ」。
かくして警視庁・特命捜査対策室のエース・水戸部に密命が下された。
「神奈川県警に先んじて、事件の真犯人を確保せよ!」。公訴時効撤廃を受け、再捜査の対象となった難事件だ。
あの代官山にまだ緑深き同潤会アパートがあったころ、一人の少女の夢と希望を踏みにじった犯人の痕跡や
殺された少女が徐々に浮かび上がっていく展開はさすが。
刑事たちの息遣いが胸に響く展開に濃密な警察小説を堪能できました。
2013年8月文藝春秋刊
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