読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

大沢在昌著「黒石(ヘイシ) 新宿鮫Ⅻ」

2024-05-24 | 大沢在昌
新宿鮫シリーズ12。シリーズ最悪の殺人者黒石。冷酷な〝敵〟認定で次々に出される殺人指令を受け、戦慄の手段で殺人を続ける、どこまでも不気味な謎の相手に、新宿署・鮫島刑事と前作から続く人間関係が深まり、中国と日本の混血であるアナーキーな多重国籍者たちで成り立つ秘密結社「八石」の暗躍を、そのメンバーの統一を図る暗号名「徐福」なる正体不明の人物と、彼の手足として冷血で残忍な殺しを請け負う「黒石」なる謎の人物を中心とした連続殺人を、鮫島、公安からの出向者・矢崎が追う。前作から桃井に代わって登場した女性上司・阿坂課長、鑑識の薮などの新しいチームが必死の捜査で挑む。複雑に張り巡らされた伏線が後半次々に回収され物語に引き込む展開は流石30年以上続くシリーズだ。「犯罪も捕まらなければいいという中国人、割に合う悪事なら捕まっても構わない中国人」隣国でありながら何故か不気味な中国人犯罪者。前作11を読んで大分たっているので殆どうろ覚えだったがそんなことに関係なくスリリングで面白かった。
2022年11月光文社刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大沢在昌著「晩秋行」

2023-04-05 | 大沢在昌
大沢ワールド全開バブル期の郷愁漂うドラマ。主人公円堂はその不動産業の男に雇われていた元地上げ屋だ。自分の恋人が、雇い主と二股をかけていたのかと苦しみながら現在まで居酒屋業を営んでいる。1960年前後にわずか100台程度生産されたフェラーリ2500GTカリフォルニア・スパイダーは、最近のオークションで時価20億円もするらしい。バブル崩壊時に不動産業を営んでいた、「地上げの神様」と言われた二見興産の二見社長が、その車に円堂の恋人であった六本木のホステス君香を乗せてどこかに消えた。それから二人は消息不明になるが、円堂のもとに、バブル時代、ともに荒稼ぎをした盟友の中村から電話が入る。姿を消した社長の愛車であるクラシックカーの目撃情報が入ったという。忘れようとして忘れられぬ30年前の思い出が円堂の胸に蘇り、中村と二人でそのクルマの持ち主と、一緒に消えた女性を探し始めるが・・・。団塊の世代の古き良き思い出と、古い昭和の男性中心の価値観のドラマ。過去のバブルとスーパーカーの行方を巡る純愛・裏切り、友情、当時の債権者のヤクザなどが絡み読ませてくれました。
2022年6月双葉社刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大沢在昌著「悪魔には悪魔を」

2022-03-07 | 大沢在昌
マトリとして潜入捜査中の麻薬取締官の加納良が失踪し姿を消した。アメリカで兵隊をしていて20年ぶりに故郷に戻った双子の弟・加納将は捜査協力を求められ、兄の身代わりとなり本人失踪の真相を追い潜入捜査を継続することに。ひとり凶悪な密売組織に挑む男を待ち受けるヤクザ・ベトナム人組織・警察やマトリの内通者裏切り者など。やがて悪の正体が・・・。ミステリー要素の中に恋愛小説仕立てのアクロバティックな内容で正体を隠すことで味わう緊張感のハラハラドキドキの面白さで一気読み出来ました。敵絡みも中国人からベトナム人に今の日本状況を捉えていてリアル感があった。米陸軍の退役軍人の主人公は強くてカッコイイ、大沢ワールドたっぷり楽しめました。
2021年4月毎日新聞社刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大沢在昌著「熱風団地」

2022-02-20 | 大沢在昌
外国語が得意でフリーの観光ガイドをしていた佐抜克郎は、外務省関係者名乗る人物から東南アジアの小国“ベサール”の王子を捜してほしいと依頼を受ける。軍事クーデターをきっかけに国王の日本人第二夫人が日本に逃れていたのだ。佐抜は“あがり症”だが、ベサール語という特技があった。相棒として紹介された同国人の元女子プロレスラー「レッドパンサー」ことヒナとともに、家出した王子の行方を求めて多国籍の外国人が多く暮らす「アジア団地」に足を踏み入れる。ベサールの現政権を支持する中国と民主化を支持する組織やアメリカの顔色を伺いながら何もしない外務省外郭団体など団地での攻防で、あがり症の佐抜とズバリ物言うぬ物言うヒナ。 ヒナに影響を受けて、どんどんと大胆に思い切った交渉や行動に出るようになる佐抜。素人然だった佐抜も終盤はまるでエージェントのように見える活躍で面白かった。日本の少子高齢化&人口減が加速すると、古い大規模団地が、外国人に占拠されて熱風化するアジア団地の描写は、匂いや生命力、逞しさまで感じられ、日本の年寄りばかりが住み中国人や外国人に多数住みはじめ占拠されてしまうような団地が出てきているような懸念もリアル感があった。
『のんびりにもほどがある。独裁政権だろうが民主政権だろうが、うすらぼんやりしている国民のほうが為政者はやりやすい。声の大きな政治家がのさばるようになったら、要注意ということだ』(P82)。
2021年8月角川書店刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大沢在昌著「暗約領域 新宿鮫Ⅺ」

2020-10-08 | 大沢在昌
シリーズ11作目。犯罪者に食らいついたら離さない「執拗な捜査」で闇社会の住人から「新宿鮫」と恐れられる新宿署刑事・鮫島。信頼する上司・桃井が死に、恋人・晶と別れた新宿署生活安全課の刑事・鮫島は、孤独の中、仕事に没頭することで虚ろな気持ちを誤魔化し捜査に没入していた。北新宿のヤミ民泊で男の銃殺死体を発見した鮫島に新上司・阿坂景子は、単独捜査をやめ、機動隊出身の新人刑事・矢崎と組むことを命じる。一方、国際的犯罪者・陸永昌は、ヤミ民泊で殺された友人の死を知って来日する。彼は闇のコネクションを駆使し、真相究明に奔走する。地を這うような鮫島の捜査と怜悧な永昌の動きが次第に交錯していく中、公安も密動を開始『東亜通商研究会』・香田も前に立ちはだかる。怪しい人物が次々と鮫島の前に現れる。708頁に及ぶ長編も渋味を加味し益々カッコいい鮫島にワクワクして読了した。暴対法に窮する暴力団、ヤミ民泊で荒稼ぎするフロント企業・極道より得体が知れない中国残留孤児の2世3世たちのグループ、北朝鮮のスパイ・在日朝鮮人・脱北者・今どきの世相を反映した事柄を背景に取り込み展開される感動のサスペンスミステリー小説です。
「新宿鮫」(1990年)「毒猿」(1991年)「屍蘭」(1993年)「無間人形」(1994年)「炎蛹」(1995年)「氷舞」(1996年)「風化水脈」(1999年)「灰夜」(2000年)「狼花」(2001年)「絆回廊」(2010年)以来八年ぶりのシリーズ最新作。
2018年11月光文社刊
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大沢在昌著「漂泊の街角」

2020-05-19 | 大沢在昌
失踪人調査・佐久間公シリーズ第2弾6つの連作短編。シリーズは姉妹編短編が「感傷の街角」、長編が「標的走路」(94年)「追跡者の血統」(96年)「雪蛍」(99年)「心では重すぎる」(04年)など有。早川法律事務所二課失踪人調査のプロ・佐久間公のもとに草野球チーム“城西ファイアーズ”の監督から、若きエースピッチャー・三杉純一を探して欲しいとの依頼。純一はあまり他人づきあいもせず、ひっそり暮らしていたようだ。純一の連帯保証人を訪ねるとそこはソープランドで・・・『ランナー』。隻腕の黒人元傭兵が失踪した親友の娘。ローラを探してくれと。「別の生き方は考えられないの?考えるのは出来る。生きるのができない」・・・『ダックのルール』。“宗教法人炎矢教団総本部”この教団から娘・葉子を連れ戻してほしいという依頼。原宿にあるその教団へ娘を迎えに行くと、彼女は意外にも素直に教団を後にした。教団幹部の“オーラの炎によって彼女の身に恐しい出来事が起こる”という不気味な言葉を背に受けながら。依頼はあっさり解決した。但し、その日のうちに葉子が喉を裂いて冷たくなっていなければ・・・『炎が囁く』。引退した名女優がハードなポルノ写真集(裏本)で見た妹を探してくれと・・・『スターダスト』。若くて有能な新人タレントが失踪した。・・・『悪い夢』。他に『ベースを弾く幽霊』。街を彷徨う様々な人間たち、事件を通じて人の人生が綴られる。主人公が魅力のハードボイルド小説です。
1995年10月角川文庫刊。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大沢在昌著「漂砂の塔」

2020-02-03 | 大沢在昌

近未来2022年、雪と氷に閉ざされた北方領土の歯舞群島・春勇留島(納沙布岬の東北東40キロ)という離島で発見された日本人の変死体。ロシアが実効支配するため捜査権もない、武器も持てない圧倒的に不利な状況で孤軍奮闘する警視庁組織犯罪対策課・国際犯罪捜査官石上が真相を追う。閉鎖空間での複雑な利権構造と人間関係の中に送り込まれてしまった主人公の孤軍奮闘が見物。日中露合弁のレアアース生産会社「オロテック」で働く日本人技術者が、死体となって発見された。凍てつく海岸に横たわる死体。何者かに抉りとられていた両目。送り込まれたのは、ロシア系クォーターで中国語とロシア語が堪能な石上(イシガミ)。元KGBの施設長、美貌の女医、国境警備隊の若き将校、ナイトクラブのボスたち。誰が敵で味方が分からない中、日中露三ヵ国の思惑が交錯し、人間たちの欲望が渦を巻く閉じられた空間でのアクションミステリー。90年前その島では島民38人が殺される大量殺人事件があり、そのときの死体も両眼が抉られていたという言い伝えが、ハバロフスクには残っていたという。ロシアの情報機関、中国の情報機関やマフィアも絡んで、展開も早く656ページを一気読み出来ました。今では簡単には行けない北方領土でさもありなんと思わせるのは流石。「パンドラ・アイランド」や「売春島」「軍艦島」など特殊空間・孤島シリーズは作者のお得意分野か。

2018年9月集英社刊  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大沢在昌著「帰去来」

2019-09-01 | 大沢在昌

SF風パラレルワールド警察小説。「殺されたのか・・・」。目を開けると、そこは見た目や名前の似た人間が暮らす異次元の「光和26年のアジア連邦・日本共和国・東京市」という戦禍で経済発展が遅れ、犯罪者が跋扈するもう一つの荒廃した世界だった。警視庁捜査一課に抜擢され3年目の志麻由子は、連続殺人犯の囮捜査中に、何者かに首を絞められ気を失う。その世界のもう一人の自分は異例の出世をした“東京市警のエリート警視”だった。さらに、部下だと名乗る男性は、かつて付き合っていたボーイフレンド・里貴にそっくりだった。やがて部下から聞いたもう一人の自分は闇組織からは命を狙われ、警察内部でも汚職警官の摘発など、非情な捜査方法が非難を浴び、孤立無援の存在であることを知る。戸惑いながらも彼女は、“エリート警視・志麻由子”となって捜査を継続するしかその世界で生きる方法がないと悟り・・・。

タイムトリップしたのが戦後の東京を彷彿とさせる、ヒロインの由子は最初弱虫だったが並行世界で強い自分になりきることで情けあり勇敢で理知的でかっこいい人間に変わっていく。レトロでノスタルジーを感じさせる世界。二つの世界に類似点と異質を持たせつつ、しっかりと因果関係を設定し、現実には起こりえないシチュエーションの展開を楽しませてくれる。由子が自分の過去と向き合いつつ元の世界からなぜパラレルへ飛んだかいつもとに戻れるかと興味を持たる展開はハードボイルドながら生き様が描かれ深い絆の物語でもありました。

2019年1月朝日新聞出版刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大沢在昌著「俺はエージェント」

2019-02-01 | 大沢在昌

それは下町の居酒屋にかかってきた1本の電話からだった。23年ぶりにオメガ・エージェントの極秘ミッション「コベナント」が発動され、スパイ小説好きの俺村井は、元凄腕エージェントで40才以上も年の離れた白川老人と行動を共にするはめになる。ところがオメガの復活を阻止すべく、敵対するアルファ・エージェントの殺し屋たちが次々と俺たちに襲いかかる。だが、何かがおかしい。裏切り者は誰か?誰が味方で誰が敵なのか、黒幕は誰なのかわからない。そして、裏切られた裏切り者とは・・・?

登場人物が次々と現れ新たな事実も判明するのだがストーリーの展開が目まぐるしくオメガの復活の必然性と、殺し合いまでする意義が理解できず後半は読書が苦痛で折角面白いキャラたちが登場するのだがリアル感喪失気味で楽しめなかった。冷戦終結後の諜報機関の役割がテロとの戦いに移行して新たな緊張を作り出すべく世界を股に新たなスパイたちが動いているのは理解が出来るのだが・・・。

201612月小学館刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大沢在昌著「爆 身」

2018-12-16 | 大沢在昌

前作「獣眼」の凄腕のボディガード・キリシリーズ。警護を依頼されたニュージーランド在住のフィッシングガイド・トマス・リーが目の前で爆死した。事前の打ち合わせ場所に指定されたホテルのレストランだった。リーにキリを紹介したという大物フィクサー・睦月から死の真相について調査を依頼されるキリ。リーの正体は増本貢介という日本人で、生前「自分は呪われている」と話していたという。増本は呪い殺されたのかさぐりはじめるが?

本名年齢不詳・キリ、ボディガードが本業のはずですが、調査・探偵のストーリー。依頼者になるはずの人物の謎の焼死をめぐり、現在と過去の登場人物たちが複雑に絡み合って展開。古武術修行や怪しい宗教儀式、オカルトめいた始まりですがが、前作よりは現実味を持った結末につながっているため、スッキリ感をもって読了。さらに続編がありそうで、次回作にも期待。

20185月徳間書店刊 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大沢在昌著「覆面作家」

2018-08-11 | 大沢在昌

性別や年齢など一切秘密という正体不明の作家。デビューしてまもなく文学賞の候補になる実力の持ち主の覆面作家が、「私」のファンだという・・・表題作他ある日、作家の「私」に接触してきた真野と名乗る正体不明の男。彼が語る内容を小説にして欲しいと言うが。・・・「幽霊」、学生時代の友人が語る、携帯が圏外になり思いもよらぬ人物が集う「村」の秘密・・・「村」、キャバクラの勤め終わりの女性を、家まで車で送り届けるドライバーは何を隠しているのか・・・「確認」妊娠できるか出来ないか・・・「カモ」甘酸っぱい思い出・・・「イパネマの娘」地中に埋められたい大金を見つけた土建業者が取った行動・・・「大金」CIAに殺された?・・・「不適切な排除」など8つの短編集。実話か虚構か静かで淡々と描かれた作家生活を垣間見られるサスペンス。8つのいろんな読後感が味わえる。

201710月講談社刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大沢在昌著「極悪専用」

2018-04-01 | 大沢在昌

やんちゃが少し過ぎた俺こと望月拓馬は、ヤクザの大親分の祖父の差し金でマンションの管理人見習いに押し込められる。だがそこ「リバーサイドシャトウ」は、極悪人しか住まない反社会的勢力による反社会的勢力に属する人のための専用高級住宅「なんでもアリ」の殺し屋専用住居だった。清掃、点検、管理、補修に、爆弾処理。このマンションなら、何でもアリ。規約さえ守れば、ヤクザでも刑事でも戦車でも、不測の訪問者は、すべてシャットアウト。まさにそこは悪人たちのオリンピック会場だ。俺はそんな最凶最悪マンションの管理人助手。ゴリラに似た管理人白旗との一年間の不思議な共同生活が始まった。だがこの仕事危険すぎるサボりは即廃棄処分つまり「死」を意味する。

命懸け試練をどう乗り越えるかの不良青年成長物語。

明らかになる白旗の過去や住人の経歴に謎の美女同士の暗殺ゲーム・・・連作短編風に描かれたコメディーコミック。

2015年6月文藝春秋刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大沢在昌著「魔女の封印」

2017-10-22 | 大沢在昌

魔女シリーズ(「魔女の笑窪」「魔女の盟約」)第3弾。男の人間性を一目で見抜く特殊能力を活かし、裏のコンサルタントとして生きる水原。国家安全保障局(NSS)の湯浅より依頼され、堂上保という男について調査したところ、その正体は、一億人に一人しかいない新種の頂点捕食者(頂捕)であることが判る。頂捕は容易に人間の命を奪うことも可能で、中国ではすでに、頂捕を利用した要人暗殺事件が起きていた。やがて、この暗殺事件衣関与した頂捕グループが、日本に潜伏していることが判る。彼らは政府に身の安全を保証するように求めてくる。それを断れば日本の安全保障が脅威にさらされるとなるため水原は頂捕との捨身の戦いが始まる。

・・・読んでいて「人の過去を見抜き、未来を予知する特殊能力者を扱った著者の「獣眼」を思い出した。頂捕の孤独感は理解できるがSF風というかファンタジー・オカルト風というか、超常現象とも云える能力を持つ人間を中心に話が展開され、ストーリー展開がどうにでも出来る都合のよさが気になる。ただ承知でその世界に嵌れば572ページそれなりに楽しめる。2015年12月文藝春秋刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大沢在昌著「夜明けまで眠らない」

2017-04-15 | 大沢在昌

主人公は「夜、寝ていると、隣に寝ていた同僚の首がカ切っきられる」怖い体験以来の不眠症。夜、闇の中では眠れない為夜番しかやらないタクシー運転手。元自衛隊→元フランスの傭兵の経験者の久我晋。彼はある夜、血の匂いのする男性客を乗せた。その男はかつてアフリカの小国アンビアで傭兵として戦っていた久我の同僚らしい。客は車内に携帯電話を残して姿を消した後日首なし死体で発見される。その携帯を奪おうとするヤクザが迫り、久我は縁を切ったはずの激しい戦いの中に再び呑まれていく。

キャラの設定が面白い。アフリカの首狩り族や事件の背景もリアル感あり展開も早く後半の息つく暇のない闇の中の闘いまで一気に読める程面白い。迷惑男のフィアンセの妹との絡みやヤクザとの駆け引きなど謎解きしながらのお駆けっこが貯まらなかった。

 2016年12月双葉社刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大沢在昌著「ライアー」

2015-11-29 | 大沢在昌
主人公は、国家から極秘に殺人ライセンスを与えられた41歳の神村奈々。
優しい夫と可愛い息子。表向きは大学教授の神村洋祐の妻で小学5年生の智という子供がいる。
裏の顔は対象人物の「処理」を専門とする政府組織の工作員。幸せな生活を送る妻の本当の顔は、殺し屋。彼女にとって、家庭とは偽りだった。
任務・ 殺人の代償は、誰も愛さないことだった。夫が謎の死を遂げるまでは・・・
夫の死に疑問を持った彼女は真相を突き止めるため孤独な闘いを始める。
感情を持たない故に無敵だった彼女だったが、愛を知るこの一連の探索行動が、壮絶な騙し合いと殺し合い、
その果てに明らかになる慟哭の真実に向けての第一歩だった。一見荒唐無稽な裏社会の出来事。
決して表には出ないように隠蔽された世界の話として展開されるがリアル感を持たせるため中国を絡めた政治情勢やヤクザの抗争、
病院での院内感染などを持ってくることにより死亡者は処理されていく。
11歳の息子が少し幼過ぎることやご都合主義的に処理された感はあるが面白く物語の世界に嵌りこめた。登場人物の殆どが嘘つきなのは題名通リか。
2014年4月新潮社刊
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする