読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

相場英雄著「レッドネック」

2024-04-01 | あ行
表題のレッドネックとは米合衆国の南部やアパラチア山脈 周辺などの農村部に住む、保守的な貧困白人層を指す差別用語である。職業は肉体労働者や零細農家が多い。プアホワイトやヒルビリーと同様に差別的な意味を含む言葉。物語は、都知事選を目前に控えた東京。水面下ではあまりに危険な極秘プロジェクト「レッドネック」が始動していた。「あなたは、一日何回スマホを見ますか」?米系大手広告代理店・オメガエージェントに勤務している矢吹蛍子は、バンクーバーに出張し、ケビン坂田という人物と会って欲しいという社命を受けた。クライアントが60億円ものフィーを支払う謎のデータサイエンティストケビンは、無事来日し、高田馬場に仕事場を構えるが、担当の矢吹にも極秘プロジェクトの中味は知らされずいた・・・。残念ながら主人公の矢吹にもケビン坂田にも登場人物の多くに生活感が乏しく感情移入出来ずイライラする展開で面白くはなかったが、SNSの怖さがわかる小説でした。自分たちが行動を起こしたように思えて裏では上手く操作されている。気づいていない弱者が搾取され気づかないうちに利用されている現状。結局フォーカスされていた情報弱者の集団は、操作側が狙っている集団の1つに過ぎないし、簡単に操作される情報弱者たちの姿が痛々しい。読後感は不完全燃焼の小説でした。
2021年5月角川春樹事務所刊
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大倉崇裕著「一日署長」

2024-03-18 | あ行
タイムスリップのミステリー連作短編集。元看護士で警察学校を首席卒業の五十嵐いずみに課せられた仕事は、なぜか警視庁の一室での資料整理。地味な作業に彼女はふて腐れてばかり。しかしある日、旧式パソコンの画面が発する光に包まれたいずみは、自分が1985年の署長室にいて、署長の身体に憑依していることに気づく。折しも署では、資料で目にしたばかりの未解決事件捜査の真っ最中。狼狽している間もなく、いずみは思いがけず、“一日署長”として、現場の最前線に赴くことに!若い女性がタイムスリップでおっさんの身体に憑依ってショックだね。署長という権限はあるが過去に戻って未解決事件を一日以内に解決する設定は面白いしコミカルな設定でサクサク読めるのだが何も残らないのは残念。
2023年6月光文社刊
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五十嵐貴久著「サイレントクライシス」

2024-03-12 | あ行
品川桜警察署の刑事・橋口志郎は、あるマンションでのサラリーマン・高村の変死事件に臨場する。自殺という結論が出る中、志郎と同じ署の刑事である妹の紀子は、高村の婚約者の話を聞いたことから、その決定に疑念を抱く。橋口と紀子は高村に近親者がいないこともあり、八王子の山奥にある高村が勤務していた片山興産という建設会社を訪れることになります。そして・・・。その訪問後紀子が事故に遭ったと連絡が入り殺人事件も発生し、橋口は或る陰謀に巻き込まれ、指名手配を受け全警察からその身を追われることになります。逃亡を続ける志郎の前に徐々に浮かび上がる強大な「敵」と、事件の裏で進行する日本を揺るがす「ある計画」・・・・。某国を想像させる拉致・工作活動・テロ・原発、村上著「半島を出よ」を連想させる展開。後半はスピード感ある怒涛のアクションで意外な展開で幕が下りる。法務省入国警備官竹内有美、元ヤクザの北島が面白い存在だった。
2023年12月PHP研究所刊
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伊坂幸太郎著「マイクロスパイ・アンサンブル」

2024-03-05 | あ行
ファンタジー小説。エンジンのついていないグライダーと揶揄される小市民の僕と、暴力父と同年代からのイジメを受けて逃げ出す少年の二本立ての話が1年おきの区切りで続いていく。付き合っていた彼女に振られた社会人一年生、どこにも居場所がないいじめられっ子、いつも謝ってばかりの頼りない上司・・・。でも、今、見えていることが世界の全てでない。猪苗代湖の音楽フェス「オハラ☆ブレイク」でしか手に入らなかった連作短編を加筆書籍化。毎年恒例のフェスと小説のコラボという事で、視界が入れ替わりつつ、物語と歌詞がリンクしつつ話が進んでいきます。序盤は場面がころころ変わりブツ切り感が否めませんが、一方の主人公である社会人が同期への態度で自己嫌悪になり、切れ物の先輩や一件弱腰な先輩との絡みで成長していく姿、またもう一方の視点の主人公のスパイが、自身のいる組織の矛盾やスパイの仕事の中で折り合いをつけていき、強くなっていく姿、2人の主人公が交差する条件が面白い。過去に関わった人、行った事が数年先の出来事に少なからず関わってくる、主人公たちはうっすらと感じている何かしらの縁の様なものが感じられる展開ですが、伊坂ワールドになじめない読者には面白くないかも。「敗者と負け犬は違う。勝負に負けただけなら敗者だが自分を敗者として受け入れた時に負け犬になる。」「そんなもの、何の役に立つ。自分のことをちゃんと評価してやることは大事だけどな、謝って削れるようなプライドなんて、大したものじゃない。面子が、だとか、立つ瀬がない、だとか言っている奴ほど自信がないんだよ。本当に、自分を信じているなら、周りがどう思おうと関係がない」(P49)
2024年4月幻冬舎刊
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五十嵐貴久著「交渉人・遠野麻衣子ゼロ」

2024-01-08 | あ行
社会派警察ミステリー交渉人シリーズ第4弾。何故遠野麻衣子が交渉人になったのか彼女のスタートライン物語。麻衣子の冷静で口数の少ない性格は交渉人になる前から同じで、交渉人研修室へ突然配属されるところから物語が始まる。交渉人研修では、警視の石田が講師となり、実際の誘拐事件を元にしたディスカッションや、交渉人ならどんな対応をすべきかの講義が行われ。「トラブルの原因は何か、お互いの言い分に耳を傾け、解決策を考え、当事者同士が納得するように妥協点を探り、譲歩できる落とし所を示す。話し合いでも説得でもなく、交渉によって事件発生を未然に防ぐことができる。だが、地味で、目立たず、評価されることもない」「交渉人は中立でなければならない。警察組織の代理人として犯人と交渉するが、警察の側に立つわけではない。無論、犯人の味方をするわけでもない。どちらにとっても納得できる解決策を提示する」「交渉人は交渉をしない。説得もしないし、犯人に共感することもない。ただ、犯人の話に耳を傾ける。真摯に話を聞くだけで、多くの犯人が投降する」など、麻衣子の交渉人としての礎が、この研修で学んだものであることが良く分かる展開。中盤以降は、交渉人の補佐として大規模な特殊詐欺事件の捜査に投入され、自分の監視対象者が殺され内部情報が洩れている可能性が?
内通者裏切り者は誰なのかがハラハラドキドキ感の中で展開されて麻衣子の成長物語でもある。あらためて前作を読み返す必要を感じたが。この1作目の前の時代20年前とすると今回の特殊詐欺の内容が今時すぎて時間差があわないように感じたが物語としては楽しめた。

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安東能明著「ブラックバード」

2023-10-09 | あ行
朝鮮戦争下での原爆投下を阻止するべしと活躍する男とマッカーサー解任をめぐるトルーマン大統領との争いを題材にした航空冒険歴史小説。朝鮮半島を広島長崎に次ぐ第三の被爆地にしてはならない。昭和二十年、日本は連合国に敗戦を喫し、飛行機の操縦、航行、製造など、航空機に関するあらゆることを禁止されていた。五年後、旧日本軍でも卓越したパイロットだった堀江功は米軍関係者と思しき人物に声をかけられ、高給を条件に、GHQにも極秘の飛行訓練を開始する。その頃、朝鮮半島では朝鮮戦争が勃発し、北朝鮮の背後に中国人民解放軍やソ連軍の影がちらつき始めた。一方、マッカーサーの独断に怒り狂うアメリカ大統領のトルーマンは、彼の解任を考え、さらに共産主義の拡大を防ぐため、原爆による決着をつけようと動き出す。やがて、計画を知った堀江たちは、原爆の投下を阻止しようと決死の作戦に挑むが・・・・。マッカーサー解任劇は興味深かった。原爆投下阻止のアクションシーンは如何に砂嵐の中でもそんなことがとご都合主義の多い点が気になりましたが、フィクションとノンフィクションなのか不明。ロシアのウクライナ侵攻の問題が起きている今、核兵器の使用の安易さが話題に上る今こそ読んで考えさせられた。
2023年6月祥伝社刊

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麻加朋著「青い雪」

2023-07-29 | あ行
2022年第25回日本ミステリー大賞受賞作。夏の数日をともに過ごす三組の家族を、悲劇が襲う。五歳の少女が失踪したのだ。事件性も疑われるが、行方は知れぬまま、月日が過ぎていく。長い時を経て現れ出た一通の告発状。絡み合った謎が氷解したとき、明らかになる真実に驚かされた。最初は複雑な人間関係がよくわからず登場人物のそれぞれの語り視点で語られる為、読みがたい印象だったが、中盤以降謎解きの出生の秘密が二転三転し、最後には一ひねりの意外性もあり、新人作家にしてはいい出来のミステリーだった。読み難い箇所や構成もあるが面白く読めた。
2022年2月光文社刊  


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麻加朋著「ブラックバースディー」

2023-07-11 | あ行
2022年「青い雪」で第25回日本ミステリー大賞。受賞後第二作目。病院で生まれた子供が取り違えられた二つの家族にまつわるミステリー。すべての始まりは誕生日だった。「みんなで家族になりましょう」。鎌倉の民宿にある家族が長逗留してきている。息を潜めるように暮らしているが、実はテレビで「離島のシェア家族」という番組で特集された有名人たちらしい。新生児の頃に子供を取り違えられた二組の家族が支え合い、共同生活を営んでいたことが注目されたのだ。それが、なぜここにというところからミステリーがはじまる。最初は登場人物と誰が誰と血がつながっているかその複雑な人間関係を把握するのに難儀するが、彼らを襲った殺人事件と、失踪、とだんだんと様々な事件が絡んでいき、ぐんぐんと物語に引き込まれて行きます。最終ページまでには、伏線が回収されすべての謎は解明されるのですが、プロローグに続くエピローグでヒヤリとさせる内容が示されるのが怖い。この作者の作品は初読ですが、濃い内容で面白かった。将棋盤を使った謎解きや歪んだ日常の先で待ち受ける更なる悲劇に驚愕。
2023年5月光文社刊 


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太田忠司著「鬼哭洞事件」

2023-05-19 | あ行
少年探偵・狩野俊介シリーズ。27年前に消えた母と妹を捜す男は、依頼の翌日死亡した。
 彼の故郷を訪ねた俊介は、謎の神楽ともう一人の"名探偵"作家の烏丸孔明に出会う。夏の暑い盛りのある日、私立探偵・野上英太郎の事務所を佐方康之と名乗る依頼人が訪れ、27年前に家を出ていった母親と妹を、父に内密で探しているという。手掛かりは写真一枚のみだが、野上は調査を引き受ける。だが翌日、康之は死体となって発見された。彼の出身地・鳶笊村へ向かった野上と助手の狩野俊介(中学2年生)は、鬼哭洞という窟内にある奇妙な邸に住む、余命幾ばくもない村の実力者でもあり康之の父佐方朋也に会いに。2人は隣村に伝わる謎の神楽、佐方家の財産をめぐる確執、そして衆人環視下で起きる殺人の謎に立ち向かう。サクサクと読めますが随所に伏線が張り巡らされてはいるが難しい仕掛けではない。ご都合主義な部分もありなにより中坊が事件現場に出入りするリアル感のない設定になじめなかった。「謎を解き明かし、世界に秩序と平穏を取り戻すことが探偵の仕事です」。・・・「世界って人間が作っているものでもあります。犯罪も人間が起こすものだし、その被害に遭うのも人間です。探偵はまず人間を見なきゃいけないものでは」(P236)
2021年10月東京創元社刊

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太田忠司著「和菓子迷宮をぐるぐると」

2023-05-08 | あ行
主人公の変わり者と言われる理系大学生・河合涼太が出会ったのは、あまりに美しい「和菓子」。その「美味しさ」にも魅せられ、すっかり和菓子の虜になってしまい、勢いのあまり大学院に進まずに和菓子職人になることを決意し、製菓専門学校に入学してしまう。学校では、自己肯定感の低い寿莉や個性豊かな学生たちとともに和菓子作りに精を出すが、和菓子はとにかく答えがない。自分の和菓子を作ろうと苦心するも、理系的思考が数値だけでは測りにくい和菓子作りの邪魔をして・・・。涼太のキャラが世の中の常識や慣習に縛られることなく疑問に思うことを口にでき、解決しようとする性格が面白い。「料理は化学」「頑張れば道は開けます」と理系で前向きな性格が、周りの女子をも巻き込み、コンクールへの参加まで決定。この世界、餡の作り方でも100軒の和菓子屋があれば100通りあり、試行錯誤の中で自分なりの正解を得るしかない世界なのだ。「自分の人生を自分で決めるのはたしかにしんどい・・・だけど大切なことですよ、大切だから逃げられない、逃げられないからしんどい・・・今のことは今の自分に決めさせて、将来のことは将来の自分が決めれば・・・」(p305~306)青春の葛藤、成長物語。お仕事小説ですが面白かった。
2021年2月ポプラ社刊
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安生正著「不屈の達磨 社長の椅子は誰のもの」

2023-04-25 | あ行
経済小説。主人公は東証一部上場会社の社長の椅子を巡った権力争い巻き込まれた秘書室長弓波博之(53歳)。従業員5300人を擁する一部上場企業ジャパンテックパワー(JTP)。日本の将来を背負って、再生可能エネルギーの送電施設を開発・運営する期待の企業である。株主総会を間近に控えたある日、社長が失踪。それに端を発した後継者争いが激化していく。混乱を極める会社に追い討ちをかけるように、物言う株主中国系ファンドの介入も噂されはじめた。週刊誌「週刊東京」が会社のスキャンダル記事が掲載されが注目を集め・・・。
「あなた方は数字の話ばかりするが、会社を動かすのは社員の心だ」「人を思いやり、利欲にとらわれず、なすべきことをなし、約束を守り誠実でありたい。・・・功徳を求めず、小果、煩悩による善になど目もくれない達磨」(P200)醜い派閥争いの結果主人公の下した決断とは。自分のサラーリーマン時代を思い出し面白かった。
「贅沢にはお金が必要だけど穏やかな日々に必要なのは心でしょ」(P293)という妻の言葉に救われた思い。
2022年4月角川春樹事務所刊
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五十嵐貴久著「奇跡を蒔くひと」

2023-01-04 | あ行
年間4億円の赤字を理由に、東海地方人口45000人の小都市の市民病院は指定管理団体になるしかの消滅寸前。先輩医師たちがこぞって辞めていく中、就任2年目の34歳の青年医師、速水隆太だけが最後まで残り「患者を見捨てる訳に行かない」と押されて院長に名乗り出た。課された使命は三年で病院の赤字ゼロにすること。無理難題を前に、「すべての患者を断らない」という方針の下、病院再建に奔走する隆太の行動力は、周囲の人びとをも巻き込んでいく。医師会、市議会、そして国・厚労省審議官。巨大な壁を相手に奇跡は起きるのか・・・。実際の三重県志摩市民病院と江角悠太院長への取材ノートを元にしたフィクションに仕上げた(2016年からコロナ禍真っただ中の2020年4月まで)
感動の医療ドラマに仕上がっています。個人報酬を半額までして家族や個人のプライベートまで献身的に犠牲にしなければ自治体病院や公的病院が守れない先細りの現状はおかしいと考えさせる物語でした。
2022年9月光文社刊
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阿津川辰海著「録音された誘惑」

2022-12-04 | あ行
誘拐されたのは探偵自身。家族の危機を救うのも探偵。謎めいた依頼を受けたのも探偵―誘拐犯に立ち向かうのも探偵。大野探偵事務所の所長・大野糺が誘拐されたのだ。耳が良いのがとりえの助手・山口美々香は様々な手掛かりから、微妙な違和感を聞き逃さず真実に迫るが、その裏には15年前のある事件の影があった。資産家である実家・大野家に突きつけられる犯人からの要求。奇しくもその日は妹・早紀の誕生日パーティー。海外出張で不在の父を除いて屋敷に集結していた母・美佳、叔父・楽、弟・智章、早紀の恋人・熊谷の面々、そして糺を訪ね偶然居合わせた助手の美々香がいた。並行して美々香の父母の元へ美々香の代理に訪れる望月の視点も描かれる。事件の裏側のドラマ、練りに練られた伏線からの真相のまさかの驚きに誘拐犯と探偵たちの息詰まる攻防を経て、二転三転した真相が明かされる。緻密に仕掛けられた構成に脱帽。
2022年8月光文社刊 

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五十嵐貴久著「鬼面鬼」

2022-08-28 | あ行
私立の名門四つ葉大学のサークル「ヒートウェーブ」の新歓コンパで悲劇が起きる。無理矢理飲まされ続けていた新入生の諸井保が、急性アルコール中毒で死亡してしまった。これからのキャリアを考え居合せたメンバー8人は、保身のために死因を事故に偽装する。事件の記憶が薄れかけた一年後、案内状が届く。保の実家である都睦寺で、一周忌法要を行うというのだ。罪悪感に苛まれていたメンバーは、けじめをつけるため出席することにした。そこにある計画と地獄が待っているとは知らずに・・・。登場人物が多すぎ。人物一覧表と相関図が必要だ。何度も元に戻り読み返しながら読み進めるのはストレスだった。まるでB級ホラー映画を見た気分で読書のススメは出来ません。最後の双子の子供の出自と将来がもっとも怖かった。
2021年12月実業之日本社刊

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安東能明著「蚕の王」

2022-06-08 | あ行
二俣事件、幸浦事件、小島事件、そして現在もなお審理が続く袴田事件。「冤罪なんて簡単に起きる」。・・・警察と司法が手を組んで行われた犯人捏造の実態とは怖い。戦後の静岡県で、過酷な拷問により自白を引き出し、様々な冤罪を生み出した刑事の悪行がリアルに描かれている。著者の地元である二俣市で起きた二俣事件について、過去の関係者を訪ねる形で、小説が展開される。昭和25年(1950年)一月。静岡県二俣町にて一家殺害事件が発生した。のちに死刑判決が覆った日本史上初の冤罪事件・二俣事件。捜査を取り仕切ったのは、数々の事件を解決に導き「県警の至宝」と呼ばれた刑事・赤松完治。だが彼が行っていたのは、拷問による悪質な自白強要と、司法さえ手なずけた巧妙な犯人捏造であった。拷問捜査を告発した現場の吉村刑事、赤松の相棒であった城戸元刑事、昭和史に残る名弁護士・清瀬一郎。正義を信じた者たちが繋いだ、無罪判決への軌跡。そして事件を追い続けた著者だけが知りえた上の推理で、「真犯人」の存在を描いている。冤罪の怖さ、取り調べの可視化の必要性を感じる小説でした。
2021年11月中央公論社刊
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