デ某の「ひょっこりポンポン山」

腎がんのメモリー、海外旅行記、吾輩も猫である、人生の棚卸しなど。

うつくしむ

2018-08-13 16:00:06 | 人生の棚卸し
 終わった!と思っていた庭の薔薇が、思い出したようにまた蕾をつけ咲き始めました。お盆に帰ってくる人々の目を幾らかなり楽しませようとしているのでしょうか。今夏の猛暑で減ったとはいえ蚊に刺されながらの水遣りにも甲斐があろうと言うものです。

    

 シナリオライターを業とする学生時代の友人がいます。その擢んでた才能に触れ「映画、TV、舞台・・・いつか日本の演劇界をリードするだろう」と見上げていました。が、才能だけでは如何ともし難い世界なのでしょう、未だその名が轟くに至りません。

 名の轟くシナリオライターと言えば、今も旺盛に活躍する山田太一、倉本聰、橋田壽賀子などが思い浮かびます。しかし私には昨年亡くなった早坂暁が、「夢千代日記」「花へんろ」「事件」「ダウンタウンヒーローズ」などの作品とともに最も印象に残ります。


    

 先夜、TVドラマ「花へんろ」シリーズの再放送を視ました。「うつくしむ」という言葉は源氏物語にもあるそうですが、早坂暁の描く世界はまさに昭和をうつくしむ物語・・・その時代とそこに生きる人々と暮らしを愛おしむように美しく丁寧に描いています。

 とりわけ早坂が、幾つものドラマを書いたが書き残した話がある!と語った「春子の人形」篇が印象的でした。兄とは結ばれ得ないと思っていた妹は、自身が捨て子であったと知り、呉の海軍兵学校にいる兄に会うため8月5日、愛媛から広島に向かいました。

 翌6日、広島に原爆投下。兄は兵学校から広島に派遣され、眼前の惨状に敗戦を覚悟し実家に帰ります。妹が自分に会いに広島に向かったと知り再び広島を訪ねますが、遂に会えません。実家には、捨てられたとき妹の傍らに置かれた人形だけが遺りました。


    

 その兄こそ早坂暁自身ですが、戦後、母親とともに遍路の旅に出ます。私のブロ友さんにも遍路の旅を続ける方がいらっしゃいます。叶わなかった思い、叶えたい思い・・・様々な願いと祈りは、時代とともに変わり行くとしても、その虚心坦懐に胸を衝たれます。

 明後日は、未だ敗戦!とは認めないかのような「終戦記念日」。私の父も戦争中、呉の高射砲部隊にいたことがある由。日曜夜のTBS系「この世界の片隅に」は戦時下の呉が舞台。父は多くを語りませんでしたが、もっと聞いておけば良かったと今更に思います。


    

 先日、ブロ友さんとのオフ会で京都に行きました。お盆休み最中の京都、国内は勿論、アジア・欧米からのたくさんの人々で賑わっていました。キナ臭さと平和が混在する時代にあって、敗戦記念の翌16日夜「五山の送り火」が焚かれ祈りの火が燃えさかります。

 かつて旅で訪れたリトアニアに異国の無名の人々のお墓がありました。戦でその地に踏み込み斃れた兵士達を手厚く埋葬する心に衝たれました。京都五山の送り火・・・左右の大文字、妙法、舟形、鳥居形それぞれに宗派を超え国を超えた祈りが捧げられますように!


    

    再放送「春子の人形」は 9/1(土)午後3時~ BSプレミアムで再放送されます。
    【春子の人形】概容 ・・・ https://www.nhk.or.jp/dsp/hanahenrosp/

     「花へんろ」のエンドロールに玉置浩二『みんな夢の中』・・・ 魂に触れる歌でした。
    

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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
うつくしむ (リーのママ)
2018-08-14 11:16:16
なんて優しい響きの言葉でしょう。

花へんろは、TVを見ていなかった時期だったのか記憶にないのですが、きっと素敵なドラマだったのでしょうね。

春子の人形はストーリーを聞いただけで哀しくなってしまう物語ですね。
広島・長崎の原爆で消えてしまった命の一つ一つに物語があったことを、改めて思い出させてくれます。

「この世界の果て」は、映画はとうとう見なかったのですが、TVドラマは欠かさず見ています。
懐かしいような優しいストーリーにとうとう爆撃機が現れました。
その時代に生きていた父は、長崎の閃光を波佐見から遠くに見たと言います。

人が人の死を願うような戦争という人の行いがこの世からなくなるように祈りながら、この8月を過ごしたいと思います。
返信する
Unknown (Anne)
2018-08-14 13:56:56
8月に入って戦争に関するドラマの宣伝はよく目にしました!
「花へんろ」は知らなかった!

私はテレビじゃ無くて三越劇場で朗読劇を見ました!
なんと!三越劇場は戦前からある劇場で、大空襲でも残ったそうです。

内容は戦時中、ペットの犬や猫をお国に差し出す命令を出したお話。
涙でグジョグジョになりました(T_T)

作品は前にもコメントで書いた脚本家樫田正剛さん!
偶然、彼の誕生日は終戦日と同じなので、若くても戦争のお話を書く事が多いです。

たくさんのテレビドラマの脚本を書いていますが、有名になったスタートはコミックだそうです。

そういえば、マンガはほぼセリフだけで成り立っていますよね!
原作者の漫画家がいて、セリフで物語を完成させる役。

才能とは違うところに発想や運、出会いが重なって、多くの人に見て頂けるようなお仕事が出来るようになっているのかなあ…

今、彼はEXILEの事務所と仕事をしていて、彼の作品を観劇に来るお客さんがグッと若返りました!
こういう出会いのつかみ方も上手いのかもしれないですね!

戦時中のペットのお話は、若い世代にも身近な存在だから、よりその悲惨さや悲しみがストレートに伝わり易いかもしれません。
返信する
Re: リーのママさん「うつくしむ」 (デ某)
2018-08-14 17:42:24

リーのママさん
コメントありがとうございました

> なんて優しい響きの言葉でしょう。
連綿とつづく日本語の美しさ、奥深さを思いますね
古文が苦手だった私、こんな言葉から古文の世界に入っていれば!なんて思います(笑)

> 花へんろは、TVを見ていなかった時期だったのか記憶にないのですが、
> きっと素敵なドラマだったのでしょうね。
大正~昭和そして戦争を挟む二つの昭和が、この作品を通じて甦ります

> 春子の人形はストーリーを聞いただけで哀しくなってしまう物語ですね。
> 原爆で消えてしまった命の一つ一つに物語があったことを、改めて思い出させてくれます。
9月1日午後3時~ BSで再放送されます
ここで多くを記すより ぜひご覧いただきたいと存じます。

> 「この世界の果て」・・・映画はとうとう見なかったのですが、TVドラマは欠かさず見ています
私は京都の立誠シネマで観ましたが 実はTVは視ていないのです(笑)
映画については拙ブログにUPしています(ママさんのコメントも!)
https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/1f2e6f4e00b928be961bf3ec4deee3c5

> その時代に生きていた父は、長崎の閃光を波佐見から遠くに見たと言います。
そういう記憶が本当に貴重になりつつありますね
わが父は呉、熊本など中国・九州の部隊を転々としていたようですが、
もっと詳しく訊けば原爆についても語ったかもしれないと、今更に思います。

> 人が人の死を願うような戦争という人の行い・・・
いつの時代も何処の国も「国を護る、国民を護る」と戦争をしますけど
そんな戦争が事実あったのであれば、教えて貰いたいところです。
花へんろ「春子の人形」の予告編と、再放送のお知らせがあります。
https://www.nhk.or.jp/dsp/hanahenrosp/
返信する
Re: Anneさん「Unknown」 (デ某)
2018-08-14 18:31:45

Anneさん
いつになくテンションの高いコメント(笑) ありがとうございました

> 8月に入って戦争に関するドラマの宣伝はよく目にしました! 「花へんろ」は知らなかった!
再放送に目が行くのは かつて視た人が殆どかもしれませんね

> テレビじゃなく三越劇場で朗読劇を見ました! 戦前からある劇場で大空襲でも残ったそうです。
大阪にも三越劇場はありましたが、阪神大震災で廃館されました
小じんまりしたレトロな雰囲気の良い劇場でしたけどねぇ。
大阪府には府立のホールがなく、近隣の京都・滋賀・兵庫と較ぶべくもない文化意識の低さ
その点、東京は官・民ともに多彩かつ充実したホールが多く心底!羨ましいです。

> 戦時中、ペットの犬や猫をお国に差し出す命令を出したお話。涙でグジョグジョになりました。
ペットのほか、動物園の悲しい話もありますね
戦争はいつの時代も弱者に最も過酷です

> 作品は・・・脚本家樫田正剛さん!
> 彼の誕生日は終戦日と同じなので、若くても戦争のお話を書く事が多いです。
TVのお仕事が中心の方だと思いましたが、描く対象も含めて広く!ご活躍の由
エネルギッシュな方のようですし、今後に大いに期待します。

> そういえば、マンガはほぼセリフだけで成り立っていますよね!
> 原作者の漫画家がいて、セリフで物語を完成させる役。
リアル以上に!セリフ以上に!雄弁なのが漫画かもしれません
PCの進化がより漫画を進化させつつあるとも聞きます。

> 才能とは違うところに発想や運、出会いが重なって・・・今EXILEの事務所と仕事をしていて
> こういう出会いのつかみ方も上手いのかもしれないですね!
運も つかみ方も 総て実力!とはいえ 眠らされる才能を本当に惜しい!と思います
絵、音楽には後の世に花開く(発掘される)場合もありますけど。

コメントからAnneさんの幅広いご交友、ご活躍が思われ・・・なんだか嬉しいです(笑)
ますますのご活躍をお祈りします。
圭佑くんも大いに うつくしんで! くださいね
返信する
『花へんろ』 (沙羅)
2018-08-14 19:45:43
『花へんろ』は私が見たTVドラマの中で一番好きなドラマです。
時々思い出すくらい。
今年は早坂暁の最後の作品『春子の人形』が放映される前に『花へんろ』総集編・『新花へんろ』が放送され全部見ました。
四国の遍路と言うものの意味をもう一度認識させられました。
今ではバスで札所だけささっと巡るのが普通になってしまいましたが、本来遍路は文字通り巡礼。
願いを込め、救いを求めて、お大師さんと同行二人歩いて巡るもの。

また『花へんろ』の主人公の静子(だった?)が魅力的です。
大家族の中で自然に自分の枝を伸ばしながら、周囲の人に対するやさしさとおおらかさ。
早坂暁の母がモデルですね・

『春子の人形』は再放送があるならぜひ皆さんに見ていただきたい。
13歳の妹が何故戦局厳しい頃に一人で兄に会ったのか。
そのため広島で原爆死することになるのですが。。
娘を一人で行かせたために亡くしたしまった母の悲しみ・後悔はいかばかりか。
早坂暁と母が戦後遍路に出たと初めて知りました。
この妹の死こそ早坂暁が数々の名作を作るようになった原点です。

『この世界の片隅』でも見ています。

返信する
すみません、訂正です。 (沙羅)
2018-08-14 19:48:21
13歳の妹が何故戦局厳しい頃に一人で兄に会ったのか   
    ↓

13歳の妹が何故戦局厳しい頃に一人で兄に会いに行こうとしたのか。
返信する
Re: 沙羅さん「花へんろ」 (デ某)
2018-08-14 22:03:30

沙羅さん
コメントありがとうございます

> 『花へんろ』は私が見たTVドラマの中で一番好
きなドラマです。

早坂さんの脚本も然りながらキャスティングが抜群でもありました。
「坂の上の雲」のような大型企画とはまた異なる深い味わいがありますね。

> 早坂暁の最後の作品『春子の人形』が放映される前に 総集編『新花へんろ』・・・全部見ました。
> 四国の遍路と言うものの意味をもう一度認識させられました。

遍路をされる方、お遍路さんをもてなされる方・・・。
サンチャゴ・デ・コンポステーラの場合もそうですが、
祈りは 人として 人をとおして 人から人へ 巡り遭うように・・・。

> 『花へんろ』の主人公の静子が魅力的です。
> 大家族の中で自然に自分の枝を伸ばしながら、周囲の人に対するやさしさとおおらかさ。
> 早坂暁の母がモデルですね・

早坂さんの原作の力とともに
桃井かおりさんの靜子も田中裕子さんの靜子も、それぞれに母たるリアリティがありました。
役者さんが充実感いっぱいに演じられている清々しさも感じましたね。

> 『春子の人形』は再放送があるならぜひ皆さんに見ていただきたい。
リーのママさんへのリコメに記した後、ブログ本文にも補筆しました

> 早坂暁と母が戦後遍路に出たと初めて知りました。
> この妹の死こそ早坂暁が数々の名作を作るようになった原点です。

悲しみの底にあるものを長く胸にしまっていた早坂暁の「作家としての純情」に共感しました。
そうしたピュアーな精神こそもの書きの炉心でありましょう。

> 『この世界の片隅で』も見ています。

私はTVは視ないままでいますが、映画(アニメ)で十分!視た!ように思います。
連合国の側にあった国の映画は総て「敵をやっつける」ストーリーが核になっていますが、
日本で作られる戦争映画は その数多くに悲しみが流れています。
イタリアにはM.マストロヤンニとS.ローレン主演の映画「ひまわり」がありますが、
ドイツには戦争映画を作る空気さえ希薄なように思われます。
ナチスドイツの非は非として 描くべき「ドイツ人にとっての戦争」悲劇もあるでしょうに・・・。

映画「ひまわり」
https://www.youtube.com/watch?v=MFfhoW7H_do
返信する
Re:沙羅さん・・・再放送日の「訂正」 (デ某)
2018-08-15 05:09:00

沙羅さん

ブログ記本文に補筆した「春子の人形」の
再放送の日時! がまちがっていました。
再放送日は 【誤】9/4(土) 午後3時~
      【正】9/1(土) 午後3時~ です。
お詫びして訂正いたします(ブログ記本文訂正済)
返信する
後れをとると・・ (遠音)
2018-08-15 11:59:04
デ某さんへのコメントは みなさま文章力があって
コメントを書くとき以下同文・・になってしまう。
とデ某さんの知っているむかしブロ友だった方
(やめちゃったので) とよく話すのですよ。

それで以下同文ですが・・
早坂暁・・の項は 本当にそう思います。
「夢千代日記」の温泉場は二度も訪ねて
懐かしい旅となりました。

「春子の人形」 悲しかったですね・・

四国の遍路旅・・今度こそと計画しながら
果たせず。 えぞをは逝ってしまいました。

戦友でもあったえぞをと今日は語りましょう。

私が何故秋の旅に長崎を選んだかについても。。

   では したっけネ~デ某さん!


返信する
Re:遠音さん「後れをとると・・・」 (デ某)
2018-08-15 18:43:30

遠音さん
コメントありがとうございました
秋旅に向けて準備なさっていることと思います。

> デ某さんへのコメントは みなさま文章力があって・・・以下同文になってしまう
> と デ某さんの知っているむかしブロ友だった方
(やめちゃったので)とよく話すのですよ。

もの書き(プロ)の世界では文章力とテーマ性が第一かもしれませんが、
双方向!のブログの世界では文章力は第二でも第三でも、あってもなくても(笑)
ブログは、価値観・世界観は各々異なりつつ時に認め共感し繋がる心地良さと安心感・・・。
遠音さんのブログにはそうした心の拠りどころがあふれています。

> それで以下同文ですが・・早坂暁・・の項は 本当にそう思います。
> 「夢千代日記」の温泉場は二度も訪ねて 懐かしい旅となりました。

私は帰省する際、稀ながら高速道路ではなく地道を走ることがあります
道の駅で休憩したり温泉につかったり・・・。
夢千代さんの舞台の温泉町の公衆浴場も何度か行きました。
映画では案外!作品に恵まれず 時に「大根」と揶揄される吉永小百合さんですが、
夢千代は 彼女ならでは・・・昭和のTVドラマの代表作の一つに挙げられます。

> 「春子の人形」 悲しかったですね・・
悲しかったですね、ほんとうに・・・
でも 原爆によって春子は一瞬に命を奪われたとはいえ、
その瞬間まで希望に胸を躍らせていたことに 私は少なからぬ救いを感じていました。

> 四国の遍路旅・・今度こそと計画しながら果たせず。えぞをは逝ってしまいました。
> 戦友でもあったえぞをと今日は語りましょう。

そのようにして えぞをさんは 遠音さんと旅されつづけることでしょう。
えそをさん どんな俳句を詠まれるでしょうね。
きっと私の想像力も理解力も超える 難解な句のような気がいたします。

高橋真梨子さんの歌ですが徳永英明さんの「桃色吐息」・・・映像のないMP3Tube で!
遠音さんと語られる「むかしブロ友だった方」とともにお聴きください。
https://www.youtube.com/watch?v=EFFRlPCXzsA
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