あどけない薔薇の蕾をひとかけらほどくかのよう五月雨の降る
巵子の夢幻に誘う甘い香を濯ぐかのよう雨の激しさ
雨の打つフロントガラス眺めれば月面に立つ 真夜中の吾
雨の日は嫌いではない。
この惑星の不思議さをしみじみ感じさせてくれる、なんて気取ってみたくなるのもこんな雨の日。
でも、この時期水害が起こるのも事実。15ぐらい年前、自宅も床下浸水したことがある。
ちょうど、父の身体の状態が悪いとき猛烈な雨が降ってきた。
避難勧告が出たが、車椅子での避難は困難だった。介護用のベッドがなければ避難先でも父はきつい思いをしただろう。
父は自分では座ることももう出来なくなりつつあった。
そういう状態なのに、頭だけはしっかりしていた。
「俺はここにいる」呂律が廻らないながらも、ハッキリと言った。
そうするしかない。夜通し聞く激しい雨音の不気味さ。
しかし、夜が明けると段々と雨脚は弱くなり、止んでくれた。
もう後数センチで床上まで浸水するという所で水は引いた。ホッと胸を撫で下ろした事を思い出す。
もちろん、雨は災いをもたらすだけではなく、恵ももたらす。降る雨が大地を潤し、植物を育ててくれる。日本の川は清流。豊かな清い水が流れている。
雨の降る、風の吹く、星の瞬く、不思議な惑星。地球。