久々の舞台写真の作例紹介です。
カメラ機材話が混ざるので興味のない部分は適宜読み飛ばして下さい。
さて今年唯一の舞台撮影が無事完了しました。
当日リハーサルで従来メイン機Nikon D7100と比較した結果、こちらの方が撮れると踏んで新機材FUJIFILM X-T30 IIで初撮影となりました。
作品について
演劇集団よろずや第33回公演
「王征路 -Othello-」
2022年11月11日〜13日
世界館にて
※作品自体の権利は演劇集団よろずやさんに、肖像権は各役者さんに、撮影画像自体の権利は宣伝美術家TOMにあります。
関係者以外の転載は劇団へご相談下さい。
演目について
シェイクスピアの悲劇「オセロー」を原作として、舞台を戦時中の満州に置き換えた作品です。会話を軸として押し潰されるような心情、策略、疑念の渦。写真的には会話シーンが多く、演者さんの顔、身体、空気感を含めた表情が見どころになります。
機材について
FUJIFILM X-T30 II
XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS
X-T30 IIは従来私が使っていたサブ機X-T20の2つ後に発売された機種になります。
X-T30 IIはX-T30の後に出た機種ですがアップデート内容が地味であまり注目されず、上のグレードには人気機種のX-T4があり、さらにコロナ絡みの半導体不足をもろに被って10ヶ月で販売中止になった幻の機種。
僕は購入時期の関係で偶然これを選びましたが、意外にも良いものでした。
まずX-T20では色や明るさの暴れがあったのがX-T30 IIはオートでも割と大人しく写ります。
更に舞台照明のクセに合わせてWBを微調整、フィルムシミュレーション選択でコントラストを決めると露出補正さえ決めれば予想以上に落ち着き、破綻が少なかったです。
小さくて持ちにくい点はハンドストラップを付ければ問題なし。
舞台でいう生明かり=電球の色のままで照らしたシーン。普通のデジカメで撮ると真っ黄色になるか、黄色い雰囲気をすっ飛ばして「白」に自動調整されます。
それを黄色でもなく白でもなくできるだけ見たまま自然に残すのが舞台撮影の腕の見せ所。
戦時中の時代感、大陸の土煙の匂い。これがただの白になるのはもったいない。新機種で撮れるか心配だったこの自然さが予想外に出せたのでめでたく初採用となりました。
近年の舞台照明は色可変のLEDがかなり多いです。が、作例のようなキツい青や赤で照らすと肉眼で肌色に見えてもカメラでは飽和してしまい、塗りつぶしたような単色に写るのが悩みどころ。これが潰れず撮れたのは機材的にかなり高ポイントでした。
1/125s、ISO4000の悪条件でLED照明なのに自然な階調が残り、狂気の表情が撮れています。旧機種Nikon D7100だったら色が潰れてここまで撮れていません。隔世の感!
奥の人物はぼやけていますが、ボケが自然なので表情が活きています。
闇と明るみがギリギリの写り。怒りと計略が渦巻くシーンに相応しい作画。
手前と奥は違う空間、というシーン。
客席から更に近づいて撮ったので遠近感が更に強くなっています。声の届かない距離で歯噛みする奥の男。本編観劇中には見られない景色を残すのもまた面白いものです。
上のコマは1/125sでISO5000、下のコマは1/180sでISO6400です。
全体に暗めのシーンですが剣の立ち回りがあり、難しいところです。振り抜いた刀がしっかり撮れました。ノイズも少なくピントはほぼ合焦。
あと少し設定を煮詰めたいながらかなりの及第点。おしゃれカメラに見えながら設定をハードにもできる舞台向けの機材でした。
舞台表現に重要な「心」は目には見えない。見えないものは撮れない。動きも音も撮れない写真でどうやれば残せるのかは舞台撮影の永遠の課題です。
迷う暇があれば手を動かして撮る。
そして「足」を動かして探す。
ストリートスナップでよく言われる「足で撮る」感覚は舞台にもあります。
左端男性から順に企み、悲しみ、驚き、怒りが撮れた(気がします)。演出さんや照明さんの意図がばっちり汲めた(気がする)1枚。
撮り直しが効かない舞台撮影、精進しつつ足を動かす。
この写りがありながらフジのAPS-CはNikonのAPS-Cより機材が小さく軽いのがありがたい。今回はキットレンズでも十分撮りきれましたが、次は少し幅広めにカバーできる標準望遠レンズを探すつもりです。