サンチョパンサの憂鬱

強くなれる気がしなくなった後に……

♫〜♫ スピッツ『チェリー』の一節

♫……愛してるの響きだけで
  強くなれる気がしたよ
  ささやかな喜びを
  つぶれるほど 抱きしめて……♫

何を根拠にした見通しだったのだろう?と不思議な気がするけれど……『良くなる!開ける!』という『思い込みのセーフティネット』があった若い日々。

例えイタイ振られ方をしても、ふんだんにある未来の時間のお陰で文字通り時間が薬となって
自然と回復したものだった。

ましてや『愛してる』なぁ~んて言葉を貰ったら鬼でもない痩せっぽちの若造なのに金棒を貰った様な気がした。

しかし、四年生にもなると、早くもオッサン見たいな口をきく奴や……妙に就職事情に詳しい人間が斜に構えて、大人と老成を勘違いした言葉を口にし始めた。

青臭い自分は幼稚さにコンプレックスがあったけれどそれでも、働きもしない内から『俺ももう若くはないよ……』なぁ~んて言う奴には強い違和感を感じた。
その違和感は時をかなり経てから間違いなかったと僕に教えてくれた。

働き出すと僕の様な大人になる為の準備不足タイプも、促成栽培の老成人種も一様に鼻っ柱をへし折られる。決定的な何か?が足りなかったのだ……。ま、『自分を使って生きて行く覚悟』って奴だ。

社会人三年目にもなると、老成人種は去勢され志願した奴隷の様な生き方に逃避する。
これじゃ駄目だ!今後何十年も彼等の様には生きれない。そう思った。

それは上から目線なんてものじゃなく、自分は暴発して潰される?そういう恐怖心が正体だった。自分の我慢の能力の無さは身に沁みていたのである。

三十まで少し残して独立。精一杯突っ張ってはいたが例の『根拠のないセーフティネット』は跡形もなく掻き消えていた。

三十を超え三、四年もするとあることに気付いた。
仕事を通して知り合う取引先、お客様、立場、性別、年代は違えど生きイキしてる人は皆、その中心にピュア(純情)を潜ませている……と。

十代、二十代前半の無責任を良いことにした純情は生きる事のヘドロを被り、突き飛ばされたり小突かれたりしながらも、コアは汚れる事なく時間を経て行けるんだ?……と学んだ。

三十代のピュア、四十代、五十代、六十代のピュア、……フィジカルは傷んで行くけれど……ふとした瞬間にパァーッと浮かんでくるピュア(純情)はその人が闘い守っているのである。

若い日々、老成人種に感じた強い違和感は『人間の不自然さ』から来るものだったと今思う。
『目一杯取りに行く!』はサルの時代から若さの当たり前、それが自然な姿だからだと思う。

今の主流の人間たちの功利主義から言うとピュアはコスパがとても悪い。何かに付けて数量は
小狡く、小賢い連中が素早く掠め取っていく。
卑怯なんて指摘すればいとも簡単に悪者に仕立て上げられたりもする。

人多く、不器用に生きてる人間に『大人になれ!』という。大人とは狡く功利主義、利己主義を臆面もなく演ってのけ、スッ恍ける事ができる人間という意味である。

ピュアはそれを許さない。何度も酷く痛い目に合っても絶対に許してはくれない。
『そんな今更……?』……後ろめたさに耐えられずもう一度ピュアにゼロから?そんな思いが湧くと同時に聞こえ来る悪魔の囁き……『そんな今更……?』。

今日は皆、誰にとっても人生で一番若い日なのである。

♫〜♫ 吉田拓郎『明日に向かって走れ』の一節

♫……遅過ぎることはない早過ぎる冬よりも…♫

ピュア(純情)に生きるのは何時からでも何処からでも始められる。
それは何時もあなたの中に眠っているのだから。生き急ぎ、汚れ急ぐことはない。

早過ぎる冬の中に逃げ込み作り笑いで生きていくよりも、本気の悲しい涙を流せるピュアな時を生きて欲しいと思う。
涙を流すことが悲しいんじゃなく、悲しいのに泣けなくなった人が悲しいのである。


  
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