人間のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)って奴を犯すベカラズ!は何もビジネスに限らず生活全般に通すべきルールなんだけど……。
ま、それがその通りに履行されれば、日々ニュースを賑わす事件なんてのは起きない。
しかし、こうも考えられない誤謬が生じ、時に命のやり取りにまで発展してしまうのは何故か?
人は『思惑』というものを胸に秘めて人と話し交渉もする。
自分と人は違う!コレを知って生きるのが『離別感』を確立した大人の振る舞いだと書いた…。
これに対し、幼児性を払拭出来ないまんま大人になった人は他者に『一体感』を求める……と。
相手は自分の望み通りに解釈し動いてくれる?そんな依存体質を色濃く残す『幼児性高い大人達』はかなりの比率でこの国に生息している。
かつての僕も典型的なこのタイプだった。
何処をどう思考すればそんな?考えと振る舞いが出来るのか?
最近ホント久しぶりにそんな事があった。
それは同じ因子と構造をもった随分昔の『笑えない喜劇』を思い出せたのだった。
店舗の企画を頼まれ、そこは紆余曲折の末に繁盛店となった。
店は、辺鄙な県境にあり、却ってソレが幸いしてドライブに最適な人気スポットとなった。
仲間だった人間が鬱病となり、たまたま緊急避難先の実家がクルマで三十分位の所にあった。
人手不足で悩むその店にリハビリを兼ねて無理ない程度で働けば?となった。
当時としては過分の企画ギャラを貰っていたし?と僕はソイツとお店に対する応援だと思って、彼には内緒で月15万円を出すことにした。ソレを二年を超えて毎月続けた。
ある日、その店のオーナーがやって来て、ソイツに対する愚痴を延々と話し続けた。
そうなんですか……?と頷くしか無い話。
すると急にそのオーナーは『君は彼をどうする積りなんや?』と焦れた様に声を荒げたのである。
どうする積り……?どういう意味?とポカンとしてるとこのまんまじゃ彼を雇い続けられない?なぁ~んて言い出した。
????……。
どういう事ですか?
貴方が雇い主、彼が使い物にならない?迷惑してる?……ならば解雇すれば良いんじゃないですか?
当方にとっては無関係になった男、かつての仲間といえどもう応援も限界だと思ってたし……。
ハハァン?……そこでやっとこのオーナーの勘違い計算とその理屈が読めた。
かつての役員で仲間だった彼を取り扱いあぐねて、自分の所に厄介払いしたのだとオーナーは邪推していたのである。
その邪推を頼りにオーナーは応援?のカネの値上げを目論んでいたのだった。『彼の厄介払い費用』の値上げ交渉のお積りだったのである。
『丁度よい機会ですね?』、コレを以て彼に対する応援のカネの支払いはストップさせて貰いますね?』と僕は言った。
彼がそんなにお荷物ならば即刻解雇したほうが良いですよ?僕には何の遠慮も要らないですから……彼もソロソロ自分の道を模索したい?なぁ~んて先日言ってましたしね?……と続けた。
オーナーは、酷く狼狽し、イ、イヤ……今、彼に辞められたらこ、困るし……。
イヤイヤとんでもなく迷惑してるんでしょ?それなら早く辞めさせれば?……僕は異常に腹を立てていた。
この醜悪な根性のオーナーに対しての怒りより自分のマヌケさ加減に対しての持って行き場のない強い強い憤怒……だった。
今考えれば?……何方も幼児性高い『一体感』って奴をお互いに期待してた?という顛末。
それから以降もそんなお目出度い運びは何度もあった。
自分が善意だったから?綺麗な思いだったのに?……何度も何度も頭の中をそんなセリフが駆け巡ったものだった……。ま、僕は完全に幼稚なアホだった訳で……。
時間とカネをかけ過ぎてやっと得た教訓。
求められもしないのに自分の善意?とやらに酔いしれて過分の厚遇なんてしないこと。それはある種の依存なのだということである。
アナと雪の女王じゃないけれど……『ありのままの自分』を正確に評価してもらう事。
必要以上に求めなくても……正確に汲み取ってくれる人は必ずいる。
自分を確立した人は自分の思惑通りに相手を酷使するなぁ~んてことは絶対しないのである。
どんなに不安でも、どんなに淋しくとも『自分は自分を演り通すこと』に専念すること。
それが自分を愛することであり、自分を大切にする方法なのである。
頼まれもしないのに『自分からお迎えに上がり』、『過分な自分バーゲンセールに及ぶ』のは依存そのものと心得なければならない。
そんな当たり前を手にするのに莫大な時間を浪費してしまった僕……。
自分を愛する事と自己憐憫とは全く似て非なるもの!……。
なんて卑劣な!なんて醜悪な!なぁ~んて怒り心頭の心穏やかならずの日々は僕にはもうない。
『そういうことなんですね?』と心の中で呟き一つ……間髪入れず僕は数億光年の彼方に自分を運ぶ様になった。
そんな幼稚な諍(いさか)いなんて可愛いもんなのである。
前篇の所感で書いたけど『自分の夢』って奴の要求は一切のエクスキューズを許してはくれない。どんな小さな嘘も軽蔑の眼差しを向けて来る。
『納得の死』を迎えられるその日まで……それは続くと……続けたいと思う。
気が付けば『人様の思惑』にお付き合いしている暇は僕には無くなったのである。
自分に対して期待するってのは……人様に期待するほど楽じゃないっていうことである。