天空海闊

川沿い

山村の豊かな

川の流れが

淀み(よどみ)となり

浅瀬で波打ち下る光景を

季節の残像のように

ぼんやり追っていたが

粗末な身なりの女がひとり

川沿いの道を

大きく重そうな荷物を担いで

トボトボ歩いている

次の家の並びまで

まだ当分はあるが

初老ともいえない若さで

この時代に何の因果であろう

これがわたしの子や孫であれば

どんな理由にしろ

その人生のひとコマに

胸が締め付けられであろうと

これまで感じたこともない

感情が沸き立つ

 

川草にとまったトンボの羽が

小さな風にゆらめいた

 

 

次郎物語から

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