ある日
見慣れた海が
初めて観たように輝いた
道端に咲いた小さな花を
摘んで帰ろうとしたり
仕事帰りの夜道の空
満天の星を見上げ
ヨオシ
明日もがんばるぞと
声をあげた
家に帰ると
飼犬を
意味もなく抱き寄せ
嫌がる素振りに
ひとり微笑んだ
あのころはそうだった
それが
取り返しのつかない
錯覚への序曲だった
真実が偽りとわかり
すべての喜びが心から消えてしまうとき
あなたはそれでも
愛する人を見つけた方がいい
庭の花が枯れたとき
あなたの心は真っ赤に染まる
あなたの目は まるで彼の目みたいに見える
でもあなたの頭の中じゃ それがどこかなのか
さっぱりわからないのじゃないかしら
涙が流れている
あなたの胸をつたって
とめどなく流れている