わたしが学校へ行っているあいだに赤紙が来たのか
となりのパン屋のお兄ちゃんはもういない
何の気なしに近所のデパートに行ったわたしは
大きな写真になっているお兄ちゃんをみた
少し前まで店にいてパンを売っていた兄ちゃん
なぜ死んじゃったの
兄ちゃんが死んでも日本は負けて
おまけに私の家も焼け パン屋も焼け
好きだったおとなしいお兄ちゃんは帰らない
叫んでもいない!!
家も焼けて おじさんおばさんはどこへ行ったの!!
わたしはその写真を奪い持って帰りたかった
非情な戦いがわたしのゆめを破ってしまった
ひとりの少女のなげきの日を今はだれも知らない
・・・彼女にとってあの日の時は止まったままである。