手ぬぐいで汗を拭くが
背中までびっしょりである
雑草をひき
砂利を敷き
ひと段落したところで
ゴロゴロと鳴り始め
ポロリと雫が落ちてきた
わたしは玄関ポーチに入り
黒く湧き出た雲をみると
孫を呼び 膝に抱えた
心配そうな娘にかまわず
「雷さん、出ておいで」
「雨さん、ふれふれ」
とふたりで大合唱
ビカ ビカ
ザア ザア
嵐のようになった
風でなにやら白いものが
ポーチにとんできた
百日紅の花びらである
とくに好きでもなく
気にとめてなかったが
幹が途中で折れかかり
枝数が少ない立ち姿が
眼に飛び込んできた
「きれいだね、百日紅」
孫もそれを追い
何かが溢れたのか
「きれいだ、きれいだ」
再び大合唱
このひと時
幻のような夕立と
百日紅を
いつまで覚えていることか