Ⅰ
「いいよ無理せんでも」
「だいじょうぶ」
おや 何時の間に
随分 しっかりしたもので・・
そうとなれば
好物の暖かいものを
予告なしに差し出す
「あ ありがと」
躊躇のない笑顔が
わたしを上機嫌にする
金はないが
まだ
父親面しておきたいのだ
Ⅱ
街角を斜めに入ると
そこには ビルの間に
図書館や店舗が並び
コンサートができる
空間もある
何となく ふらっと
寄ったところ
ばったりと わが子がいる
「何してるの」
「そっちも何で」
互いにそっけない声かけして
そのまま分かれたつもりが
背中が突然重くなった
後ろから急に
飛び乗ってきたのだ
「腰 だいじょうぶ」
わすれていた感覚
懐かしい温かさが蘇り
わたしは言葉を失う
あの日は
何かの別れだったのか
子の後姿を
木枯らしが
通り抜けた