天空海闊

中原中也

  サーカス

幾時代かがありまして
  茶色い戦争がありました

幾時代かがありまして
  冬は疾風吹きました

幾時代かがありまして
  今夜此処でのひと盛り
    今夜此処でのひと盛り

サーカス小屋は高い梁
  そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ

頭倒(さか)さに手を垂れて
  汚れた木綿の屋根のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

それの近くの白い灯が
  安値(やす)いリボンと息を吐き

観客様はみな鰯
  咽喉(のんど)が鳴ります牡蠣殻(かきがら)と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

屋外(やがい)は真ッ暗 暗(くら)の暗(くら)
夜は劫々(こうこう)と更けまする

落下傘奴(らっかがさめ)のノスタルジアと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん




中也も若いころ衝撃を受けた。
二十歳そこそこの若者の詩ではない。

天与の才能と言われるが、
そこには多くの貴重な命の終わりや
不条理な人生を凝視した眼がある。

その詩と奇才「友川かずき」の咆哮は
共鳴し合い、やがて夜の帳が降りて
私たちの魂を揺るがす。


サーカス

コメント一覧

又三郎
内面をさらけ出すものを通し、
改めて人間と言う存在の面白さを
感じます。
これは飽きることがありません。
オリーブ
中原中也 という人は初めて知りました。さっそくネットでいろいろ調べましたか、芋ずる式にいろんな人が出できますね。
正直、私は全くの理数系で、文科系は大の苦手でした。
でも、又三郎さんのブログから影響受けて、調べるようになりおもしろさがほんの少しですがわかってきました。
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