庭に植えた
娘の結婚記念樹である
ムクが大きく育ち
隣木との間にロープを渡し
ハンモックをかけると
七年越しの夢が叶った
木陰の風にゆられ
枝葉から覗く青空を見ていると
善だ悪だ
敵だ味方だと云った
世間の喧騒が疎ましくなる
欠点だらけの人間にも
神々しい部分があり
聖人にも
俗な一面があるのが
真理
自然はそれらを
分け隔てなどしない
一言では計れない
多様な価値観や解釈が
渦巻く俗世だが
それをまた凌駕するほどの情念は
天をも貫く
そうした域にまで
達したと思われるのが
稀代の役者
二代目中村吉衛門である