梅雨が終わるのを今か今かと
待ち構えていた若い衆らは
祭りを求め、花火のように弾けたものだ。
その多くは徒党を組み、
同じ色の着流しで横一文字、
道路を占拠しながら練り歩く。
それはなんとも勇壮であった。
やがて・・血気にはやる者たち同士、
酒も入り喧嘩が始まる。
とりわけ、恋の鞘当ともなれば男たちは必死である。
その年、親父は盆踊りを静かに見ていたが
嫌な予感がしたのか見たのか?
渋い顔で私たちを促し家路に着いた。
やがてわたしは夜中の夢だったのだが、
下の階から聞こえてくる声に目が覚めた。
『・・Mちゃん、やめろって』
「おやじ・・頼むから貸してや・・」
ずいぶん物騒な話が聞こえた。
『・・親を泣かしちゃあいけん』
遂にその若い衆はあきらめ、帰って行ったようであった。
どうしてこのような男ばかり出入りするのか・・・
当時、わたしは気が滅入ることが多かった。
しかし、後にその危険な男と仕事をするようになった。
なんとも皮肉ではあったが、所詮『普通』が得られないと
どこかで諦めていたのかも知れない。
それでも、年頃の男が普通に抱く憧れの火が
完全に消えることはなかった。