家業を継ぐ責任を
内心放棄したいと思っていたところ
おいちょっと皆で山に行こうか
妹たちも連れ
石ころだらけの山に着いて
少し登ると
親父はいつの間に持ってきたのか
太い棒を私に手渡し
道を塞ぐように埋まっている石に
あてがった
皆でこの棒を持って石をのけてみ
まるで演戯を指導するように云うと
何枚か写真をとった
変なことをさせるなあと
その時は思ったのだが
家族関係を試みられることが続き
その記憶がよみがえり
親父の真意に触れた気がした
日ごろ冗談めいたことしか言わなかったが
残された日が少なくなった親父からの
必死のメッセージだったのだろう
そういえば
あの銭湯で骨体を見ていたせいか
早すぎる親の死への
覚悟のようなものがあった