【レッドデータブックの紹介】
⭕ヤンバルテナガコガネ(絶滅危惧IB類(EN))
ヤンバルテナガコガネは日本最大の甲虫で、近縁種は台湾、広く東南アジアに分布していて、沖縄諸島がまだ大陸と陸続きの時に分布を広げた遺存種と考えられています。本種は1983年に発見され、1985年には天然記念物に指定されました。
オスの大きさは50~60mm前後、メスはひとまわり小型です。胴体はカブトムシのメスを連想させますが、暗い青緑色の金属光沢があり、鞘翅(さやばね)には黄色紋が散在し、熱帯昆虫の雰囲気を強くただよわせています。オスは長く立派な前脚をもち、頸節(けいせつ)の内側には2本の大きな棘が発達し、幹上の歩行を助けるだけでなく闘争の武器にもなっています。
生息地は沖縄島北部のやんばる(山原)地方に限られています。湿潤で暗く深い林内だけに生息し、人目に付くような環境では生息しません。幼虫はスダジイやオキナワウラジロガシ等の大木のうろ(樹洞)の中に生息し、そこに堆積している木くずを食べものにしていて、成虫になるまで3~4年を要します。成虫は8~9月に出現し、交尾をしてメスは大木の樹洞に産卵します。卵数はわずか10個程で繁殖率はきわめて低いとされます。ちなみに、体が重いためか、飛翔はあまり上手ではありません。
本種が生存していくためには湿潤な深い森林と、大木の樹洞の存在が不可欠です。林道開発などによる森林の伐開により、ヤンバルの森は大木を消失するだけでなく、急激に乾燥へ向かっています。これらの人為的要因によって本種の存続は脅かされ続けています。
そこで、環境省では保護増殖事業の一環で幼虫が生息する樹洞のある大径木の把握調査や、関係機関と連携して密猟防止のためのパトロールを実施しています。