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合言葉はヒュッゲ

小説「滅私」

羽田圭介さんは、時々ワイドショーのコメンテーターとしてお見かけしていた。

2015年の芥川賞作家なんだよね。でも自分の中で、たぶんないだろうなと決めつけていたので、作品とは出会わないまま。

しかし、先日図書館でたまたまこの「滅私」というタイトルの本作に興味を惹かれ、試し読みのつもりで借りてきた。

特に意図もなく、たまには変わった作家の小説も新鮮だしねと変化を求めての事。

長すぎず、短すぎず、ちょうどよい厚さで、内容への知識は全くないままページを開いた。

若い人の文体だなあとまず感じ、するすると幕を開けたドラマの展開にぐいぐい引き込まれた。

ミニマリストの主人公のもとに、ある日不吉な贈り物が届けられた。その送り主は高校時代の主人公を知る男。物にしろ、人間関係にしろ、極力削ぎ落としたクリーンな生活を送っている主人公が、捨てたはずの過去という産物にじわじわと追いやられてゆく。

世の中、叩けばどれだけでも埃の出る人間はいるけど、この主人公も結構クズな人生を歩み、都合の悪い事はしれっと捨ててきた。送り主の姉を中絶させたり、警察沙汰は免れたものの、傷害事件で被害を負わせたり、気に食わない行きつけの喫茶店マスターを陥れ店を潰すなど。

主人公は次々と暴かれる自分の悪行に目を背けたくなるが、袋小路まで追い詰められ、認めざるを得なくなる。

取材のつもりで訪れたゴミ屋敷に立ち入るうちに、その雑多な人間臭さに触れ心が落ち着く。その不思議な感覚はなんかわかるなあと感じた。

ちょっとホラー感覚でもある最後の流れ。怖いけど、なんだか切なかった。

この夏は、羽田圭介ワールドに触れてみようかな。
次は何を借りようか楽しみです。
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