この本は、1969年に20歳で命を消した高野悦子さんの日記。
家族の意志から出版されて50年が過ぎたが、時代を経ても多くの人の心を掴んだ著書となった。
京都の立命館大学に在学していた彼女は、学生運動、部落研究会、ワンゲルクラブなどに所属し、自分がどう生きれば良いか常に模索していた。
個人の日記とは思えぬほどの客観視した自己分析。自分を巡る人々との関係性、家族への思いなど、読む者をぐいぐい引き寄せる力に溢れている。
その感性の高さ、恋する女心、孤独との向き合い方は痛々しいほどで、時に涙が滲み読み進む事が中断された。
私がこの本と出会ったのは、今は亡き姉の書棚から、姉が留守の間にそっと拝借した15歳の夏。
当時15歳の私と20歳で亡くなった高野さんとは世代も環境も違うはずなのに心の奥のうずきが呼び水となり感銘を受けた。
あれから45年。私は還暦を迎えまた彼女に会いたくなった。
そして、図書館でリクエストし、死を選ぶ二日前に記した素晴らしい詩を音読した。
良い本は、時が流れてもその輝きを失わない。
あらためてこの本は、生きる事が苦しくてたまらない人々への讃歌となる名著だと思う。
「二十歳の原点」は、後に発表された「二十歳の原点ノート」、「二十歳の原点序論」との三部作。
全作14歳から20歳までを通した彼女の生き様が綴られている。
また時を経て読み返してみたい。