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合言葉はヒュッゲ

心のひだ

百田尚樹の衝撃作「プリズム」
2011年に発表されています。

すごいですね。図書館で借り、一気に読んでしまいました。

32歳の主人公聡子は、中学受験を目指す修一の家庭教師として訪れた邸宅の庭で、離れに住む引きこもりの青年広志と出会う。
その青年の中には5人の別人格が混在し、その中の一人卓也と恋に落ちる。

広志は修一の父の腹違いの弟で、幼少期から過酷な虐待を受け続け、そのトラウマから解離性同一性障害【多重人格】を発症し、常に違う人格が入れ替わっていた。

8年におよぶ治療は一進一退、広志の主治医から治療法と現病歴について説明を受けるうちに、解離性同一性障害に対して半信半疑だった聡子も次第にその世界に埋没していく。

愛し合う中、突然人格が交代するアクシデントを繰り返しながらも、聡子の力添えで治療に効果が現れ、やがて広志一人に統合された事で二人に別れが訪れる。

多重人格についてはまだ完璧な立証はなく、多分これから先も治療法が大きく発展する事はないと思う。

科学でも実証できない謎と神秘に満ちている。下手に触ると砂の山のように脆く崩れ、波にさらわれ消えたしまう危険性がある。

たぶん、掘り起こせば起こすほど闇に向かっていくばかりなのだろう。

なぜなら、理不尽な虐待で受けた心の傷は、どんな治療を用いても、刺青のように刻まれて消える事はないから。

広志は沢山の救世主を人格の仲間に迎え、自分を守ってきた。そして、その仲間と別れ、再出発を試みるが、その道はまだまだ険しいと思われる。

人の心のひだは何と幾重にも厚いものかと改めて感じた一冊だった。




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