見出し画像

合言葉はヒュッゲ

映画 西の魔女が死んだ

梨木香歩の短編小説。どちらかと言えばヤングアダルト部門かな。

この原作を基に映画化された本作は、生きる事、死ぬ事、心を癒し強くする事等、祖母との短い同居生活から人生を学んだ思春期の少女まいを主人公として物語が描かれている。

祖母はイギリス人という事で、クォーターであるまい。おばあちゃんは、日本人の祖父と結婚し、まいの母を産み、そしてまいが孫となる。

イギリス人と言っても、日本語ペラペラの祖母で、言語間のやり取りは細かなニュアンスを含め全く問題ない。祖父亡き後は一人で森の中に佇む洋館に暮らし、庭で野菜を作り、丘に実る野いちごのジャムを保存食とし、シーツは手洗い、ラベンダーがしげる物干し台に被せて乾かす。テレビもなさげなアンティークな暮らしで、不登校となってから昼夜逆転していたまいの生活リズムを整えた。

このおばあちゃん、御伽話に出てくるような出立ちで、畑にも長いエプロンドレス姿で立つ。え?それ作業しづらいし、虫も心配では?と思うけど、おばあちゃんの生活スタンスは軸がぶれず整然と日常を送る。

まいはおばあちゃんから魔女伝説を学び、おばあちゃん曰く魔女と言うカミングアウトを真摯に受け止める。おばあちゃん魔女は、人間界で生きる苦しさ、辛さ、そしてそれに代わる喜びをまいに伝授する。
イギリス風のティーポットにハーブティーを注ぎ、手作りのカントリークッキーは焼きたてで、素晴らしすぎるシチュエーション。

もう、誰もがこのおばあちゃんの虜になるに違いない。凛と輝き、歳を重ねる事に覚悟を持って日々を楽しみ、「いつかその日が来るまで」一瞬たりとも無駄をしない。 

温かなおばあちゃん。でもそう見せていても時に不安や弱さを滲ませる。それがかえって魅力でもあるからたまらないね。

その弱さとは、まいの様子を見にきた父が、まいに転校【たぶん単身赴任先】を勧め、母も今の仕事を辞めて着いていくと決心。その娘に対して、寂しさからかちょっ
と棘のある言葉を発し反発された時、「そうね。私はもうオールドファッションかもしれませんね」と呟く姿、まいが父に転校の決心を告げる時、お土産に持たせるため箱詰めしていた玉ねぎを入れる手が止まりかすかに震えていたのは見逃せなかった。

おばあちゃんはまいの自立を願いながらも、できればまいとの至福の時間をこのまま送りたかったんだと感じた。

人は弱い。おばあちゃんは2年後、ひっそり死を遂げる。まいはおばあちゃんの家の近くに住むアウトローの中年男への嫌悪から差別的な発言をしておばあちゃんに叱られギクシャクする。優しかったおばあちゃんに頬を打たれ、二人とも蒼然としながら目にいっぱい涙を浮かべ見つめ合う。切ないシーンでした。

そんないざこざからギクシャクした気持ちを抱えたまま、まいはおばあちゃんの家を出る。
二人とも仲直りするきっかけを掴めぬまま二年が過ぎおばあちゃんの訃報を知る。

おばあちゃんが勝手口のすりガラスに埃のマジックで書いた「西の魔女から東の魔女へ。おばあちゃんの脱出大成功」とカタカナ文字でのメッセージ。

死んだら人間はどうなるか?おばあちゃんの教えは「身体を離れて魂は楽になる。魂はずっと成長し続ける」と。

すごいメッセージだ。どんな学校でも学べないおばあちゃんの魔女伝説。

原作を忠実に再現してしたこの作品。原作を共々素晴らしい。ほんと泣けます。オススメです。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「映画」カテゴリーもっと見る