写真は、3月終わりに訪れた柴又帝釈天参道前。
昭和46年1月公開作品です。
マドンナは若尾文子。妹さくら役の倍賞千恵子と並んだ横顔は、甲乙つけ難い美しさ。
本作品、若い頃の宮尾信子が出て来たり、博士が独立を志し葛藤して「人生は賭けだ」と名言を遺したり【結局独立はなかったですが】オープニング字幕シーンでは、航空撮影で江戸川や帝釈天付近を写していたりと、寅さん映画あるあるの楽しい発見が多かったです。
たこ社長の奥さんと子ども達も出てきました。小さな印刷会社の経営主ですが、社員を何人も使っているのにずっと経営難。自宅は狭くとても社長宅には見えません。
地方ロケ地は長崎五島列島。山田監督は海辺の町が好きみたいですね。鉄道以外船に乗るシーンの多い事。
寅さん映画を観ていると、ほんとにタバコを吸うシーンが日常的。令和の時代は禁煙が当たり前ですが、赤ちゃんあやしながらくわえタバコだったり、当時の店の中は土間で、吸っていたタバコを下に落として足で火をもみ消したり、時代の常識変化というのはすさまじい。
寅さん=失恋という図式は本作品でも華やかに登場。そして寅さんは自分のクズっぷりをよくわかってらっしゃるようで、そこがイタくて、そして切ない。
お酒の一升瓶が透明な時代です。宮本信子の父役森繁久彌は還暦前かな。娘は夫と別れたくて赤ん坊を連れ実家の父を訪ねますが、「自分の選んだ男だ。覚悟を持って明日帰れ。俺はもう長くはない。俺が死んだらお前はもう帰るところはない」
と心を鬼にして追い返す。
一見冷たそうに見えても、温かさを感じるセリフでした。