幼い頃、好奇心に溢れた私が母にまとわりついて質問をしても、
母からその回答は一切得られませんでした。
母の心に【今】はなく、
たぶん、夫である父への苛立ちと予期不安で占められていた。
だから、何度呼びかけても返事はなくて、
私の小さな心は萎み、でもすぐに持ち直した。
ある日、母が頬杖をついている姿が。
その腕には水滴が散らばっていました。
おかあちゃん、水がついてるよ。
私が拭こうと手を出すと
「触るな!」
強い言葉とともに手の平で弾かれて言葉を失った。
後で気づいたのですが、その水滴は火傷による水疱で。
たぶん、火傷をした後すぐに手当をしなかったためかと。
そして、もう一つ思い出した驚き。
ちり紙をねじって耳栓をしていた姿。
暗い食卓に父が一人で座りながら酒を飲み、お勝手で背中を向け黙々と食事を作る母。父の罵詈雑言。母の身内に対し浴びせる悪口が時間を追うごとにヒートアップ。
言い返すのを諦めた母は、耳栓をして対処したつもりでしょうが、ちり紙の耳栓なぞ
効果あるわけはなく。
楽しく食卓を囲んだ思い出はないですね。
何故か父は食事をしながら嫌な事を思い出すようで、酒には弱かったけど、その酒の力を借りて自分の負の感情を奮い立たせていたのかな。