現在、全国各地で歴史的建造物の見直しが行われていますが、
なかなか難しいのが現在の建築基準との整合性のようです。
今回は、山形県山形市の文翔館(旧県庁舎・県会議事堂など)を紹介します。
文翔館は山形市の繁華街・七日市商店街の北に位置する「旅篭町」にあります。
周囲にはJA、山形銀行などの本店が建ち並ぶ、山形市の中心地です。
文翔館は山形県郷土館として展示物も豊富です。
建築に関しては素人の私ですが、独自の視点で
この文翔館を例に「まちづくり」のカギを見ていきます。
文翔館を私が紹介をしようと思ったのには理由があります。
1つ目は、この建造物の修復が「復原」という方法で行われたことです。
これは文化財の修復では、多く取られる方法です。
「復原」とは、広辞苑によれば「もとにもどすこと」ですが、
文化財の「復原」には、
「創建時の材料・工法で傷んでいる部分だけを繕いもとの姿に戻す。
また、過去に改造や撤去により失われたものを復元する。(文翔館『復原の記録』)」
という側面があります。
今回、詳細は省略しますが(HP:
http://www.geocities.jp/akitsushima_j_p/で近日紹介予定)、文翔館では、半解体調査・写真等の資料をもとに漆喰の花模様なども詳細に復原しています。
比べる次元が全く異なるのですが、
観光地などでよく「○○風」として簡素な新建材などを用いた建造物や、
城下町というキーワードだけで、歴史的背景を全くもって無視した天守閣
などが散見されます。
それらと異なり「復原」はその本質的な価値、
将来への伝承・継承という観点からみて労力に見合うものです。
ホンモノの持つ重みは全てにおいて勝ります。
2つ目は歴史的な建造物を現代に残し、
且つ将来に渡って残すための苦労の跡がよく見える点です。
冒頭にも書きましたが、古い建築物を残すためには、
耐震性・耐火性など新規で建物を建てた方が
費用の面では安くなるという大きな問題があります。
小田原城や名古屋城が鉄筋コンクリート製であることに
驚いた方もいるのではないでしょうか?
これらはまちのシンボルとしてまた違った価値を持つのですが、
「復原」では材料・工法そのものを変えることはできません、
というよりもそれでは「復原」とはなりません。
山形の文翔館では、レンガ造りの県会議事堂に、
写真にあるような鉄骨を組み込み、耐震性を確保しています。
これらは苦肉の策とも言えますが、この文翔館の場合、
内部の見た目を維持するために外にこの鉄骨が張り出しています。
実は、横浜の赤煉瓦倉庫も同様に鉄骨が組み込んであり、
相当の費用がかかっているものと推測されます。
歴史的建造物の再活用にはこのような大きな苦労もあります。
近年、ロードサイドに限らず、初期投資が少なく、
すぐにでも取り壊して、撤去が可能な、
スクラップ&ビルドの安価な建造物が見られますが、
本日、紹介した文翔館をはじめ、歴史的な建造物や、
それに限らず「ホンモノ」の建築物はその中に価値を蓄積し、
後世に至るまでその価値を高め続けることのできる建築物です。
日本の風景がいつからか、金太郎飴と評されるものとなってしまいました。
私は文翔館を前に、そんな事を考えてしまいました。