むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター㊶

2019-08-06 10:09:37 | 小説
 ヤフーオクで入札がある十万円金貨をよく見ると、業者が出品している物だ。これは大きな手変わりがあって趣味品として取り扱える物を買いとりして出品している。記念金貨をよく見ると、刑務所みたいなところでつけたと思われる細かいひっかき傷があるっ。持ち主の阿呆な女が気づかないでプレッシャーに耐えられなくなって天変地異を叫ぶことがある。やめてもらいたい。十万円金貨は不動産投機が過熱し始めた昭和61年に「入居者の持ち物からリスクを受けることがあります」と告知するための国策で発行された。金貨そのものに独特な生体負荷があるわけだ。タイトルは乳母車。

 昭和五年一〇月未明。上海で乳母車の、販売店の社長が鼻にどんぐりを入れられて、口におむつを詰め込まれて死んでいる事件が起きる。死体は女性従業員が発見して、どんぐりは台所にいくつかあった物で、おむつは展示している人形の物だった。女性従業員は胸が大きい二五歳と小さい三〇歳の二人で、どちらも死んだ社長と肉体関係があるみたいだ。公安(中国の警察) は、犯人は女性従業員のどちらかだと直感したが複雑な古代ゲームを、思いつきかけたので手順を変えることにした。公安は奥さんから事情を聞く。死んだ社長は五〇歳で、奥さんは三五歳だが、子供はいない。公安が「どうして子供をつくらないんだ」と聞いたら、奥さんは「主人は『子供はお客様の都合だから、おれたちはつくらない』と言ってたから」と答えた。昔はおむつを売っているだけの会社だったが、工作工場を買収してからは、乳母車をつくって販売しているという。社長と、女性従業員との関係を聞いたら、奥さんは「主人の会社だから好きにさせてる」と答えた。夫婦の寝室は、店の二階にあるが事件当時社長は食事を終わらせてから外出していたという。公安が「社長が死んでるのになぜ気づかなかった」と聞いたら、奥さんは「熟睡してたわ」と答える。公安はやっと古代ゲームの全体像が見えた。「シーソーゲーム」だ。まず直径一一㎜の鉄球に、長さ二〇㎝ぐらいのシーソーレール。シーソーは高さ五㎝くらいで中央に溝があって、溝にはまれば一点。シーソーが一一個並んでいて、へらを使って下げたり上げたりして一回ずつ交替で遊ぶ。先に六点とった方が勝ちで、問題は溝の前後が盛り上がっていて、溝の両わきにあるレールが、外側にふくらんで鉄球が通過する構造だ。鉄球に加速をつけすぎると、溝を飛び越える設定になっていた。調子よく連続得点することが難しくてシーソーゲームになる。公安が六点目を想像しながら、二五歳の女性従業員に事情を聞くと、「私は昨日家へ帰って忘れ物に気づいて、店へとりに戻ったんです」と言う。公安が「なん時頃」と聞いたら、「午後一一時頃でした。店に明かりがついてて、社長がいます。私が『忘れ物をとりにきた』と、言うと社長がどんぐりを鼻の穴に詰めて、『子供をつくろうよ』と言いながら私のからだをなでまわします。それで私がそばにあったおむつを、口に押し込んで鼻をつまんだら死んじゃいましたよ」と言った。公安は二五歳の女性従業員を逮捕する。



超IQ研究所クラスター㊵

2019-08-05 09:46:12 | 小説
 昭和五年一〇月未明。瀋陽で鶏卵農家の経営者が、鳥小屋の鉄扉に首をはさまれて死ぬという事件が起きる。現場の鉄扉は片側開きで、扉のふちが、刃物のように研磨されていた。経営者が鳥小屋から出ようとしたときに、外に犯人がいて、扉が少し開いた状態で扉を押さえて、経営者が確認しようと頭を突き出した瞬間に、犯人が強く扉を閉めたと思われる。公安(中国の警察)が奥さんに鉄扉のことを聞くと、「にわとりの頭を切り落とすときに使うんですが、にわとりの頭を、小屋のなかに向けると卵を産まなくなるんです」と言った。鳥小屋にはにわとりが千羽ほどいて毎月三〇羽ほど養鶏場から仕入れているという。奥さんは毎日鳥卜(ちょうぼく)をやって、にわとりの神と一体化して快適な日々をすごしているようだ。公安は葬式の準備を、している鶏卵農家を張り込む。鶏卵はにわとりを、仕入れる現金を確保したあとは近所の農家と物々交換用に使っていた。公安は鳥小屋の、にわとりのざわめきと、ふさふさした羽毛とキュートな動きを思い返して、奥さんに動機がないと考える。死んだ経営者を調べると小学校の先生だった。五〇代で退職してから鶏卵農家を始めていて奥さんも学校の先生だ。遠縁の子供で、現在三一歳になる養子の息子がいた。一八歳まで同居していて上海の外資系企業に就職している。公安は事件の背景よりも古代ゲームが思いついた。「ピラミッドピンボール」だ。まず中心に四角すい。全体の高さが四〇㎝ぐらいで、四角すいの、傾斜部の高さは一〇㎝ほど。それに、グリップが左右についた三段ホッパーのパネルを四面組みつけて四人で対戦する。玉は直径二㎝の鉄球。上段のホッパーから、四角すいの頂点へ打ち出して直接シュートが成功する確率は最大で二〇%ぐらい。公安は自ぶんの他に、三人の登場人物を対戦相手に選んだが、犯人らしい人物がまざっていた。公安は死んだ経営者を詳しく調べる。小学校の先生時代は暴力教師で有名だった。小学生を棒で殴るという。当時の教頭先生に「教師間ではどうだったの」と聞いたら、「実は校長の、娘との間に子供がいる」と答えた。娘は四〇歳だという。生徒の指導方法について、校長の家で説教を受けたときに娘と関係ができたらしい。公安が校長の家に行って事情を聞くと、校長は「娘と結婚する約束をしてたがどうするんだ」と言う。公安が「あんたが殺したんだな」と聞いたら、校長は「そうだよ」と答えた。公安は校長を逮捕する。


超IQ研究所クラスター㊴

2019-08-04 10:48:15 | 小説
 昭和四年七月未明。天津で小作人の男が上半身を土に埋められて、死んでいる事件が起きる。現場は雑木林と畑の境界であちこち土を掘り返していた。男は雑木林を開墾して、朽ち木でかぶとむしを飼育していたらしい。公安(中国の警察)が地主に事情を聞くと、「雑木林はあいつが、開墾した物だが」と言う。公安が「鉄条網の柵は誰がつくったんだ」と聞いたら、「小作料をもらってるからうちの方でつくった」と答える。かぶとむしのかずを聞くと、「あいつが、町の業者に売ってたがよくわからない」と答えた。公安は「四川昆虫店」と呼ばれるその業者を探す。公安がかぶとむしも売っている町の雑貨屋でかぶとむしを一匹買うと、店主が教えてくれた。ここの町では、子供たちの間で、皿の中央にたらした蜂蜜を、二匹のかぶとむしで奪い合わせる遊びが流行している。かぶとむしの悠々しさは、幼虫の期間が長くて、時間をかたよらせたようにも思える希少な生物独特の物だ。公安は聞いた住所へ行く。そこは別な名前の昆虫店だったが店じゅうに、かぶとむしのかごが並べられて売られていた。公安が店主に四川昆虫店のことを聞くと、「うちはあそこから百匹単位で仕入れてる。あいつは昔の遊び仲間だから朽ち木で育てる方法を教えたよ」と言う。死んだ男が四川昆虫店のようだ。公安と店主が話している間に、かぶとむしのかごが二つ売れた。公安が帳簿を見せてもらうと他の仕入れ先は、日にちをだいぶおいて数十匹単位のとり引きだ。公安は小学生の頃にかぶとむしをとった経験があって、かぶとむしが集まる樹液は木の成長過程で、枝が折れた部ぶんだった。つかまえたかぶとむしは空を飛ばせて遊んだ。公安は店を出て、他の「三川昆虫店」や「五川昆虫屋」をまわる。公安は全部の仕入れ先をまわったが、「木に蜜をつけて、集まったかぶとむしをとっただけ」で死んだ男のように、自ぶんの軒先で本格的に飼育している者はいない。公安はもういちど雑木林を調べた。鉄条網は雑木林を囲んで隣接する畑の、先の用水路まで続いている。強欲な地主が侵入者にかぶとむしをプレゼントするだろうか。公安は女性の、裸体のまんがや、小銃の弾が落ちている雑木林は「かぶとむしを自由にとっていいんだ」という鉄則を思い出す。数日後に近所の、床屋の男が自首してくる。男は「小学生の息子がつかまえたかぶとむしをあの男にとられて泣いてたから殺した」と言う。公安は男を逮捕した。


超IQ研究所クラスター㊳

2019-08-03 10:08:14 | 小説
 中国はわが国の重要な同盟国だ。タイトルは踊り子。

 昭和一二年二月未明。長春にある劇場の入り口で、バレエの踊り子が裸で両手を縛られて、ロープでつるされて凍死している事件が起きた。死体は午前六時に通行人が発見している。踊り子が所属するバレエ団は長期公演の最中で、死んだ踊り子は前日の午後五時ぐらいまで舞台にいたという。公安(中国の警察)の脳裏に、デザインに手変わりのある金貨が浮かぶ。浮かんだというよりは向こうから勝手にやってきたようだ。公安が「風邪の予防になるかも知れない」と思ったとたんに小学生の、娘(被害者幽霊を小学生に変換して対話する特殊能力がある)の面影とともに消えた。舞台は午後六時で終幕して、打ち合わせや練習は開幕前にやるので、踊り子たちは客とともに、宿舎へまっすぐ帰るという。そのバレエ団では舞台に、目立たないように回転体をいくつか設置していた。回転体の上で、つま先立ちで一〇回転ぐらいしたり、片足を上げ下げしながら回転したりすることで知られている。公安が踊り子の宿舎に行って、管理人に昨日のことを聞くと、「午後七時頃は帰ってきてて風呂に入ったみたいだ」と言った。公安は、なに者かが風呂に入っていた踊り子を誘拐したと考えて、風呂場を調べる。風呂場はやや広めで薪の置き場から侵入することが可能だ。公安は侵入者の足あとを念入りに探した。しばらくすると裸の女が二人やってきて、「風呂上がりに差し入れの生魚を食べてたわよ」と言う。その、日の公安は洞察力が働かなかった。回転体の上で回転している踊り子を見ている目線がいくつかある。そのひとつに犯人がまざっていて、公安は必死になって犯人の顔を見ようとしていた。公安が声をかけてきた女の、陰毛の剃りあとを見ながら「どこかに出かけなかったか」と聞いたら、女は「自ぶんの部屋に入ったわよ」と言う。公安が踊り子の、部屋のドアを開けるとなかで踊り子が寝ている。公安が起こして事情を聞くと、「一週間前に足を捻挫して、ずっと妹に踊ってもらってたわ。客席で見てたけど今日は眠くて」と言う。公安が「妹も踊れるのか」と聞いたら、「簡単よ。舞台に立つと、からだが自然に動く」と言った。殺されたことを説明すると、「妹は凶暴な男とつき合っててそいつに殺されたんだわ」と言う。公安がその男をとり調べると、「おれの金貨を勝手に持ち出したから殺したよ」と言った。公安は男を逮捕する。その男は死んだ妹とつき合いながら、用心棒としてバレエ団の公演に同行していたらしい。金貨は死んだ父親の形見だという。



超IQ研究所クラスター㊲

2019-08-02 09:39:03 | 小説
 昭和四年八月未明。長春のしいたけ工場で、経営者が菌床をつける朽ち木で、殴られて死ぬという事件が起きた。死体は朝に奥さんが発見したという。公安(中国の警察)は昨日「読み書きが、ままならない人間が幽体離脱する現象について」という論文を書いた。死体を見てなにが関係しているか検証する。重要なことはことばのコミュニケーションを重要視して相手に、意味がつたわらないときに相手と一体化することだ。その際に、国語辞典に書いてない合成語を使用して、思いをつたえようと、していると考えられる。正体不明の合成語を使って自ぶんに、理不尽な権利があるように主張して迷惑千万だ。昨日は九四歳の公安OBが、民族のなにかをつたえようと憑依してきて、「書こうかな」と思ったがやめた。OBであると限らないし、今日の事件と関係なさそうだ。公安が奥さんに事情を聞くと、「主人は居酒屋も経営しててそこの女性経営者と同居してたけど」と言う。死んだ経営者が五四歳で居酒屋の女性経営者は三四歳だ。公安が女性経営者から事情を聞くと、「私は、あの人と出会う前は古銭商で働いてました。あの人は『食品で一番になる方法は金貨だ』と言って、同じ年号の金貨を一〇〇枚ぐらい集めて、世界じゅうにしいたけを、売る方法を考えてたわ」と言う。公安は居酒屋がなんのために、あるのか考えながら女性経営者と奥さんを張り込む。死体は後ろから数回殴られていて女性の力でも可能だ。工場は佃煮や乾燥しいたけを全国に出荷して繁盛している。本当に世界一を、目標にしているようだ。逆に居酒屋は閑古鳥が鳴いて、あまった食材を兄弟が店にきて始末していた。奥さんの話だと、事件当時経営者は午後六時に工場を出て居酒屋へ行って、奥さんは午後九時に工場を閉めたという。居酒屋の経営者に事件当時を聞くと、「うちの店にきてからどこかへ行った」と答える。時間を聞くと、「覚えてないわ」と言う。小学生の息子(被害者幽霊を小学生に変換して対話する特殊能力がある)は「僕の金貨だ」としかしゃべらない。数日後に、居酒屋の経営者に新しい男ができた。男はたけのこ工場の経営者で出会って間もないみたいだ。公安の脳裏に若々しい男が浮かぶ。奥さんは山菜の卸売りをやっている若い男と交際している。公安が奥さんに事情を聞くと、「彼が『自ぶんの工場がほしい』と言うから酔って工場に戻ってきた主人を殺したわ」と白状した。公安は奥さんを逮捕する。奥さんは「金貨は日本の恵まれない子供たちに送ってください」と言う。



超IQ研究所クラスター㊱

2019-08-01 09:57:18 | 小説
 タイトルは麻雀荘。作者に麻雀のコツを聞くと、ツモの配列が、カンチャン待ちの形をしているからカンチャン待ちをツモれるかに、集中力を傾けるという。

 昭和四年七月未明。北京にある麻雀荘の前で、陶器製の巨大な麻雀パイで客が殴られて、死ぬという事件が起きた。巨大な麻雀パイは店の入り口に飾ってあった物で、縦の長さが、五〇㎝ほどの大きさだ。目撃者は「男二人が大きな声で口論してて、片方の男が威嚇するように麻雀パイを持ち上げて、もうひとりの男が突き飛ばすと、持ち上げてた男が倒れて、頭の上に麻雀パイが落ちたみたいだけど」と言う。公安(中国の警察)はどうしてそばに置いてあった長さ七〇㎝ほどの、陶器でできた千点棒を持ち上げなかったのか不思議に思いながら、麻雀荘の店員から事情を聞く。店員は口論していた二人と三人で麻雀をやっていて、「二人ともかなり負けてた」と言う。公安は店に入って麻雀卓を見せてもらった。麻雀パイの、側面の黒ずみで、ふせた状態でどのパイかわかるみたいだ。公安が「手加減しなくてよかったのか」と聞いたら、「二人は焼き鳥屋の店員で以前生肉を食わされたから」と答えた。犯人はチキンの生肉特有な神経痛を供給してくれる人らしい。公安はその店に行って店長から事情を聞く。店長は「時間に几帳面な男でもうすぐやってくる」と言う。公安は手帳に「焦がさないように焼くこと」と書く。犯人が出社してきた。死んだことを知らない様子だ。公安が声をかけると、「先に着がえてくるから」と言って従業員控え室に入った。店長がいそがしそうにひとりで開店準備をしている。公安が待っていても出てこないので従業員控え室に入ると犯人は窓から逃げていた。店長に立ち寄りそうな場所を聞くと、「駅前の麻雀荘なら二四時間営業で仮眠室もあるよ」と言う。公安は駅前の麻雀荘へ行く。公安が麻雀荘に入ると犯人は奥の部屋で麻雀をやっていた。公安は犯人に少しずつ近づく。手前の麻雀卓にいる女が、公安を上目づかいに見る。犯人と目が合った次の瞬間、犯人が壁の張り紙を押すと、隠しドアが開いて、犯人が消えた。公安が追いかける。ドアの向こうに階段があって、電球がついていた。階段を下りると細い通路が駅の方角へ続いている。公安は「出口にかぎをかけられるとまずいな」と思って走る速度を早めたが、細長い階段を上がった先の木製ドアにかぎがかかっていた。ドアの向こうは、駅のホームだ。公安はかぎの構造を透視する能力がある。正拳でドアを突き破って、かぎを開けた。犯人は引き返すと思っていたらしい。呆然として公安を見ている。公安は犯人を逮捕した。


超IQ研究所クラスター㉟

2019-07-31 12:39:56 | 小説
 昭和五年八月未明。瀋陽の製糖工場で、工場長がかごにひもで縛られて頭を斬り落とされて、死んでいる事件が起きた。死体の首は、鎌のような物で斬られている。工場は男性従業員が二〇人と、女性従業員が一一人いて午前九時から午後一〇時まで操業していた。公安が死体を発見した男性従業員のリーダーに、事情を聞いたら「昨日工場長は清掃作業を終えてから、設備を点検してましたけど」と言う。公安が死体を回収して、設備を調べてから、工場はいつもどおりに操業を始める。女性従業員の数人が公安を見て、目くばせしていて「あやしい」と思ったが公安は手順どおりに捜査を開始した。公安が休憩所を調べると、「戦時の心得」というパンフレットがある。ロシアと戦争になった場合を想定した内容で、「生産力が勝利を導く」と書いてあった。発行人は「宇宙改造集団」で、公安はその住所へ行く。思想団体の関与は重要事項だ。平屋建ての、家の入り口に、宇宙改造集団の看板が貼られている。ドアを開けると奥に机があって、男が入り口に向かって座っていた。男は「われわれ宇宙改造集団は、中国四千年の歴史はもとより古代ギリシャから現代に、継承される身体障害者固有の機能エラーをぶん析して、物品販売に役立てる研究をしてる団体だ」と言う。公安が手帳に「・・継承され・・」と書いて、「生産力は関係ないのか」と聞いたら、「生産力は平常心の源であり、人間は七色の覚醒をもとめる習性かがある」と答えた。公安が「物品販売となにが関係あるんだ」と聞いたら、男は「買い手は商品の効能と別に衝撃をもとめてる」と言う。公安は手帳に「機能エラーとは衝撃のような物らしい」と書いて、「宇宙思想の手引き二」というパンフレットをもらって、そこを出る。周囲は空き地だ。公安は工場のトイレを、調べてなかったことを思い出してまた工場に戻った。トイレの、くみとり口のせまい空間をはいつくばってなかに入ると、血のついた作業服と鎌がある。女性の物だ。公安が女性従業員の資料を調べると、工場長の子供を育てている女性が二人いた。産休をとっている従業員がいてその父親も工場長みたいだ。公安がその女性従業員に事情を聞くと、「間違いなく工場長の子供です」とみかんを食べながら言う。その女性は出歩ける状態じゃなかったから、公安が他の二人から事情を聞くと、二人は「工場長が約束を破って、また子供をつくったから二人で殺した」と白状する。公安は二人を逮捕した。



超IQ研究所クラスター㉞

2019-07-30 09:59:47 | 小説
 昭和五年七月未明。長春の、貴族の屋敷で壁に特殊金庫をつくっていた板金職人が、弓矢で頭を射られて死ぬという事件が起きた。弓矢は屋敷の居間に数点飾ってあったどれかだ。貴族は四人家族で、家長の夫婦が五〇代で、二〇代の息子と娘がいる。貴族の一家は事件当時、町の運動会で全員外出していたという。死んだ男は留守の日に作業をしているため公安(中国の警察)が、板金屋の責任者に死体を見てもらうと、「うちの職人じゃない」と言った。金庫は明日完成させるという。貴族は清の、王族の遠縁として有名だが屋敷にある骨董品は、軍人の装備品みたいな物ばかりで、息子が「おれの金貨を使いやがって」と声にならない声で、叫んでいたけど熱気を帯びた負荷は手変わりがある金貨のようだ。公安が「死んでる男に見覚えがあるか」と、家長夫婦に聞いたら夫婦そろって「見たことがない」と答えた。息子に聞くと、「小学生のときに、行方不明になった兄がいる」と言う。娘は「知らない」と言った。家長に行方不明の、息子のことを聞いたら家長は毅然とした素振りで、「軍の少年隊に入隊して病気で死んだ」と答える。しかし公安が軍の書類保管庫で調べると入隊した記録は、ない。公安は中世の奴隷が家長に全身をむちで打たれて、創傷が原因で、頭が熱くなる感覚に襲われた。公安が家長にもういちど聞くと 、家長は威厳がある表情で「子供が三人いると、官位がもらえないので孤児院に預けたよ」と言う。公安が孤児院に電話で確認すると、「元気でいる」とのこと。公安は官位の話がおかしいと思って、役所に行って確認すると、長椅子でずいぶんと待たされてから、職員が「そんなとり決めは、ない。あの家族は実業家」と言う。貴族の家族は小作人を、派遣する会社を経営して官位に関係なく収入があるらしい。息子はトラックの運転手をやって、娘は小作人の宿舎を管理する会社で働いている。その会社は金庫をつくっていた板金屋ととりひきがあった。公安は娘を張り込む。娘は板金屋の、責任者の男と肉体関係があった。公安が板金屋の、他の職人から事情を聞いたら「職人仲間がひとり行方不明になってる」と言う。その男に恋人がいたかどうか聞くと、貴族の娘だった。公安が板金屋の、責任者の男から事情を聞くと、「金貨の持ち主がおれになるから殺した」と言う。娘が死んだ男に、負荷がある金貨をプレゼントしたと思っていたらしい。犯人は落ち着いた声で殺害状況を説明し始めた。


超IQ研究所クラスター㉝

2019-07-29 09:49:03 | 小説
 昭和一二年二月未明。武漢で女性鉄道駅員が、駅の近くで機関車にひかれて、ばらばら死体になる事故が起きる。公安(中国の警察)は駅員がなにかの理由で、駅の手前で機関車を停止させようとして、線路上でつまずいて、頭を打って気絶した状態でひかれたと考えた。しかし他の駅員に事情を聞くと、「機関車を停止させる理由は、なかったよ」と言う。近くで女学生が反対側のホームにいる労働者を、挑発するように股を開いてしゃがんでいた。考え違いをしたのは、きっとそのせいだ。さっきの駅員は、なにかを隠している様子だったが、公安はもういちど現場の線路付近を調べた。枕木のひとつに小石を、よけてできた直径二〇㎝ほどの穴がある。公安がそこに手を入れると、奥行きのある空洞があった。次の瞬間に、空洞に潜んでいるなにかが公安の腕を、ひものような物で縛ってなかへ引きずり込もうとする。公安は大声で助けを呼んだ。他の公安が駆けつけて付近を調べると、枯れ草を貼りつけた板があって出入り口になっていた。なかは昔の墓で、五m四方ほどの空間があって、明かりがついている。裸婦の絵を描いたキャンバスがあって、壁で作業ズボンにとっくりのセーターを、着た四〇歳前後の男が、線路にいる公安の腕を引っ張っていた。公安は男を逮捕する。男は一〇年ほど前から偶然その空間を見つけて住み続けていたらしい。男は趣味で推理小説を書いていて、換気口から腕が出ているのを見て思わず引っ張ったという。公安が男の作品を読ませてもらうと、前後にスローガンのような物をつけて語り継げば、なにかの役に立つ感じがする。男は「完成させたやつはいない」と言う。公安が「金貨の負荷はどうするんだ」と聞いたら、男は「文字数をそろえれば最小になる」と言った。公安が「誰に売るつもりだ」と聞いたら、男は「日本軍に売る予定だった」と答える。裸婦の絵を聞いたら「続きを知りたければ文章を読むことだ」と答えた。


超IQ研究所クラスター㉜

2019-07-28 10:00:09 | 小説
 殺菌処理が不十分な食品は食べられない。タイトルはトランポリン。

 昭和一七年九月未明。香港で空き地に直径一五㎝ほどの、木の杭を高さ一mぐらいに、円形に約一m間隔で、一八本打ち込んだ空間の中央で男が、全身を強打して死んでいる事件が起きた。死んだ男は空き地を管理している会社の社員らしくて、杭の先端には金具が、ついた太いゴムがついていて、一か所だけトランポリンと思われる布がついている。公安(中国の警察)は死体のそばに、直径一〇㎝ほどの穴が三つあることに気づく。次の瞬間、穴から竹の棒が六mほど突き出してすぐ引っ込んだ。棒の先端はひっかかるように、ぎざぎざになっている。公安が近くに落ちている不審な鉄板をめくると、地下道の入り口になっていた。板張りの地下通路を進んで、杭の真下にたどり着くと、コンクリートでかこまれた空間に照明があって、一〇分おきに竹の棒を圧縮空気で押し出す装置がある。公安は電源を切って、「一〇分おき」と書いてある張り紙を押収した。公安は捜査本部を立ち上げて、犯行声明を待つ。公安は待っている間に、ピアノに似た古代ゲームを思いついた。まず金属製レールの上に溝が四〇個あって、レールの横に、木製の鍵盤が四〇個ある。鍵盤が動くと、溝にはまった木の玉がレールから落ちて、もうひとつの下りレールを転がって皿に集まる構造だ。鍵盤の長さが一五㎝ぐらいで、上に二㎝くらい残して軸がある。鍵盤の根もとにひもがそれぞれついていて一mほど距離を置いて、同じ構造の物。つまり鍵盤の根もとを引くと、相手側にある鍵盤の、前の溝にある玉が落ちる。二人で対戦して一回ずつ鍵盤を動かして、相手の玉を全部レールから落とす。玉は四〇個で溝以外の場所に置いてもいい。玉の直径が一.五㎝ぐらいで、鍵盤の幅が約二㎝。鍵盤のふちに当たると、溝にはまるから八〇回以内で全部落とせる計算だ。事件から二日後に、捜査本部に「世界革命集団」から犯行声明が届く。犯行声明は張り紙の文字と同じ筆跡で、次回の犯行予告も書いてあった。公安は予告があった空き地を張り込む。穴を掘る重機がやってきて、土を掘り返し始めた。公安が「世界革命集団か」と聞いたら、「そうだ。うちの偽装トランポリンがなにか」と言う。公安が「こんどは、なにをつくるんだ」と聞いたら、男は「高さ六mの塔に螺旋階段をつけて、最上段が地面まで落ちる『天国への階段』の基礎工事をやってる」と答えた。公安は男を逮捕する。男は「人が死んだことは知らなかった」と言う。


超IQ研究所クラスター㉛

2019-07-27 09:47:53 | 小説
 昭和一一年三月未明。長春でめがね屋の店主が、頭にリスの剥製を巻きつけて、首をロープのような物で絞められて、死んでいる事件が起きた。店主は椅子のそばに倒れていて、机でリスの剥製につけるためと思われるめがねをつくっていた様子だ。公安(中国の警察)が奥さんに事情を聞くと、奥さんは「首の傷が見えるように、剥製を首から頭に動かしたけど」と言う。公安は昨日まで三日ほど図書館にかよってプラトンを読んだ。作業机を見ていて思い出さずにはいられなくなった。全集を読み終えて結論は、ソクラテスは空想の産物じゃなくて、未来世界で最初にタイムマシンをつくった男らしい。プラトンの対話編は未来からタイムスリップしてきたソクラテスと、古代ローマにあったであろう小部屋から出てきた子供が成長した人物との対話である。公安は歴史年表から逆算して古代ローマにあった小部屋のかずを三万人ぶんぐらいと推定した。つまり原人の方が多い。原人の先祖は猿だが、小部屋の外壁を食べると、人間と同じ姿になるようだ。対話編の方は本来知能が、高いであろうソクラテスが原人に、言い聞かせるために徳やイデアなどのことばをなんども使って、思いや考えの原型とも言えるような文章になっていた。これは未来の世界で絶版になって、消失したためにソクラテスが開発中のタイムマシンで、古代ギリシャに向かったと考えられる。公安は文章をよく読んでソクラテスが、対話している場面を想像したが、相手が小部屋から出てきた子供の、その後じゃなくて原人になるみたいだ。そして古代ギリシャの原人が、読者である公安に擬態している感じがした。古代ギリシャで原人に擬態されることは恐怖なのかも知れない。対話編は原人が未来の読者に、擬態するように書かれている。ここまで考えたら古代ギリシャの女と対話することができた。公安が「政治家は全員人間なのか」と聞いたら、古代ギリシャの女は「ギリシャの議会では、原人を未来の人間に擬態させることがテーマよ」と言う。公安が「どういう時代を狙うんだ」と聞いたら、古代ギリシャの女は「戦争があって、なにも知らない人ばかりで本がある時代よ」と言った。公安が「原人で金貨の負荷をどうにかできるか」と聞いたら、原人が出てきて「それはあんたのだよ」と言う。公安が古代ギリシャと中華民族の、歴史関係と時空がつながる現象について、思いをめぐらせていると床に長さが、二mほどの蛇がいる。店主は蛇に絞め殺されていた。


超IQ研究所クラスター㉚

2019-07-26 10:06:37 | 小説
 昭和一二年四月未明。北京で床屋の店主が、長さ一mぐらいな髪の毛で絞め殺される事件が起きた。目撃していた客は「紙袋をかかえるように、入ってきた客が鏡越しに見えて、店主がおれの顔を剃ってるときに、その客が絞め殺して逃げたよ」と言う。公安が「顔を見たか」と聞いたら、客は「よく見てない」と答える。髪の毛は、髪の毛を固定する器具みたいな物を使って絞め殺したあとに店主が使っていたかみそりで切られているようだ。公安が奥さんに事情を聞くと、奥さんは「二週間前に髪が、ものすごく長い女性がきたけど」と言った。公安が「切った髪の毛はどうしたんだ」と聞いたら、奥さんは「『持って帰る』と言うから紙袋に入れて渡したわ」と言う。公安は人相を聞いて事務所に戻って、書類を手短につくってから昨日起きた飛翔教団の信者が、事故死した事件の書類を見なおす。その事件では、地もとにある教育大学の学生が、入信の儀式で事故死していた。教団の、シンボルである飛翔の塔は、高さが約一〇mで、直径が約五m。なかが空洞になっていて五百㎏ほどの重りを上から落とす構造だ。塔のふちに高さが四mぐらいで、L字型の支柱があって、先端に滑車がついている。塔の上に枕木が二本あって、中央に重りを載せたパレット。信者二人がハンマーで枕木をずらして、重りを下に落とす。重りについているロープが支柱の滑車をとおって、塔の下にいる信者とつながっている。ロープの長さがおよそ一八m。斜めと腰の高さが同じくらい。塔外側の、信者側の壁はすべるように、つるつるになっている。重りが一〇m下に落下すると信者は腰の高さだけ、塔のふちから猛烈に引っ張られてから空中を飛翔。五百㎏だと七〇㎏の大人が七人ぐらいだ。滑車にぶつかるほどの推進力は、ない。死んだ大学生はどこに頭をぶつけたのだろう。ずらしてない方の枕木だ。ぶつかった衝撃で枕木が下へ落ちたために、報告書では「滑車に激突」になったらしい。恐らく入信の儀式で重りを落とす二人は、もうひとつの枕木をふちへどかすか下に落としているはずだ。公安は担当の公安に重りを、落とした二人をとり調べるように指示した。あとは床屋の、事件の犯人に呼びかけるだけだ。次の日に、その女が自首してくる。女は「毛先だけ切るように言ったけど肩口から切られたので殺した」と言う。女は弦楽器の演奏者で弦を、引き伸ばす器具で凶器をつくったそうだ。



超IQ研究所クラスター㉙

2019-07-25 10:39:06 | 小説
 自分で小説を書くと生きている作家の本は置き場所がないことに気づく。どういう本が売れるかは反社会的な共産主義活動がやりやすくなる本だ。タイトルは木彫りの人形。

 昭和一三年五月未明。天津で人物の木彫りをつくる美術家が、木靴を結びつけたひもで、首から下を巻かれて死んでいる事件が起きた。美術家はアトリエのなかを数日はいまわってから衰弱死している。公安は奥さんから事情を聞きながら古代の、「木目千枚ゲーム」のことを考えていた。木目千枚ゲームは厚さが一㎝ぐらいで縦横四㎝くらいな木の札に、一~十までの数字が一〇〇枚ずつ書かれている。それを縦横と上に、数字を裏向きで一〇枚ずつ並べて、二人で外側から順番にめくり合うゲームだ。最初は二枚ずつめくって一枚ずつめくる枚数を増やして九枚の次がずっと一〇枚で、同じ数字が出ると札をよけて一点。先に二五一点とった方が勝ちだ。全部で千枚あるから裏の木目と数字は覚えられないが覚えているふりをして、霊感でめくると確率以上に当たることがおもしろい。公安は木目千枚ゲームのことを考えながら、奥さんとなにか会話をしていたがなにも覚えてなかった。記録するほど重要なことがなかったことだけ記憶している。現場は窓がひとつあって、外からはめ込んだ形跡があった。公安は「つまらない事件だ」と思いながら木靴の専門店で事情を聞く。店主は「四日前に子供の足が大きくならない『呪いタイプ』を、二〇足買った客がいて会員登録してたよ」と言った。公安は「なんという愚かしい犯人だろう」と思いながら住所を聞いてそこへ行く。公安の脳裏に、古代の陣とりゲームが浮かんだ。すそが長い着物を、着た木彫り人形が ま す 目の彫られた平らな床に一〇体ずつ並んでいる。ます目は一m四方ぐらいで一〇かける一〇だ。公安の脳裏にルールが浮かぶ。最初は人形が後ろの横に、一〇体ずつ向かい合うように並んでいて丸太を持った男が、丸太で人形を押す。最大で三ます動かせて相手の人形と接触したときはひとますしか動かせない。縦方向に九ますぶん進んで相手の陣地へ人形を、先に押し込んだ方が勝ち。相手の人形をサイドへ押し出すと、最初の位置に戻せる。人形が倒れた場合も最初の位置に戻るっ。公安が犯人の家に着くと、わらぶき屋根な一軒家の玄関先に木靴を買ったと思われる男がいる。公安が「木靴を買ったのはあなたですね」と聞いたら、男は「美術家に『世界改造集団』の、神の木彫りをつくってほしいと依頼したが、『木彫 りは低級な物だから、神の木彫りはつくれない』とことわられたから殺したよ」と言う。公安は男を逮捕する。



超IQ研究所クラスター㉘

2019-07-24 10:13:26 | 小説
 昭和一六年三月未明。香港の大学で、思想改造集団のメンバーが、一〇~一二㎝おきに珊瑚が結ばれたひもでぐるぐる巻かれて、天井に太いゴムひもでつるされて、死んでいる事件が起きた。大学は開校記念週間で、現場の教室は、人の出入りがない。死んだ男は三日ぐらいつるされてゴムひもが切れるように努力しながら衰弱死している。死んだ男はわざわざ思想改造集団の名札をつけているため、大学内でメンバーを、増やすためのデモンストレーションで天井につるされたらしい。つるした他のメンバーは学生が発見すると思ったんだろう。公安(中国の警察)は死んだ男が首と足先を動かして、脱出しようとしてゴムひもを伸ばしたり、縮めたりしている様子を想像しながら「IQが高い若者を募集してるようだ」と思った。公安は開校記念週間明けの大学で、一〇㎝かける五〇㎝ぐらいで持ち手がついた思想改造集団の旗を配っている男から、事情を聞く。その男は「メンバーがひとり減ったから、おれがこうして働いてる」と言った。大学内のメンバーに働きかけてドイツで研修を、受けた講師を送り込んで、ファシズムの研究課程を新設するという。公安が「どんな講義をやるんだ」と聞いたら、男は「まずアリストテレスの例文から実践して、前の席に、座ってる学生に『君はソクラテスだ』と命令する。次に『ソクラテスは白いな』と言う。そして他の学生が命令された学生をソクラテスに見立てて『ソクラテスは白い』と認識する。そこである学生が『ソクラテスが白い色をしてる状態に見立てるんですか』と聞いたら、『ソクラテスは白いという文字列を認識するんだ』と言う。質問がないときは、ソクラテスは白い状態で『ソクラテスに墨をかけると、灰色になる』のように進めるんだ。他にハードカバーの本を用意して『この本は三角形だ。鋭角のページが折れやすい』や『この、空間に一立方mの有毒ガスがあって吸引すると死ぬ』や『この、万年筆は未来の、日本における天皇の記念金貨だ』と言ったら、学生が全員で「あんたのじゃない」と言う。こんな風に時間いっぱい命令をして、ゲームのように学生が想像して楽しむ」と言った。公安は「ファシズムの授業は楽しそうだな」と思いながら大学内を張り込む。翌日に大学内を、歩いていた女子学生の口に旗を押し込もうとした男が逮捕された。男は開校記念週間を知らないで、メンバーを、つるしたことを認める。その日公安は「ファシズムの研究」というノートをつくった。


超IQ研究所クラスター㉗

2019-07-23 09:55:40 | 小説
 昭和九年一〇月未明。アモイの漁村で、電信柱に「漁船売ります」のポスターを貼っていた男が、重さ一〇㎏の、米袋の下敷きになって死ぬという事件が起きた。現場は港に近いことから大漁祈願の米袋が落下したみたいだ。その村では、大漁祈願のおまじないで、米袋を電信柱の上に置く風習がある。死んだ男は少ないのりでポスターを貼りつけようとして、米袋を落下させたようだ。公安(中国の警察)が米袋をどうするか考えていると、とおりすがりの老人が「浮き日の金貨に言われて竜が空気を食べて、雨がふるのじゃ」と叫ぶ。「浮き日」は日本の、金貨のことを言っているらしい。父子的関係の子供である日本に向かってなにかを叫ぶ老人はときどきいる。まるで日本にいる華僑からなにかの連絡を受けて、それに答えたような叫びだ。軒先じゃなくて遠い未来の子供たちに向かって、なにかを言おうとしているのかも知れない。 公安は老人の日常を透視したが、読み書きがままならない様子だ。老人は文字のかわりに、なにを共有しているのだろう。動物園で聞いた話だとゴリラの寿命が五〇歳ぐらいだ。きっと未発見の猿で七〇年くらい生きるやつがいるに違いない。公安は老人の叫びが、当たっているような気がしながら米袋を押収した。