むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所  劇場版(完結)

2019-01-02 19:37:30 | 小説


シーン10  福生組資料館の事務所で丸べえと角べえが話している。丸べえが「水野さん。長寿集落の先祖は一日に六〇〇〇文字以上印字してる。われわれが一日に回収できる量は、一二〇〇〇文字ぐらいで二人ぶんにしかならない。他の書類は、どこかに消えてるのだろうか」と言った。角べえが「どこかに宇宙人がいて、ひそかに回収してるのだろう。おれは両替商の女中がそれだと思うんだ。お金のことに関してわれわれが知らないことまで知ってる。絶対あやしい」と言う。角べえが事務所の片隅に、置いてある短針だけで文字盤の間隔が少しずつ短くなってゆく時計を見つけて「悪魔の時計だな。レプリカをつくったのか」と言った。丸べえが「五〇〇年以上昔の物なんだが」と、答えると、角べえが「回収される書類も昔の、状態の物ばかりだ。どこかに瞬間物質移動装置があるのかもしれない」と言う。丸べえが「われわれも大陸へ移動する準備をしましょうか」と言って、「一七八六ねん一がつ一一にち。まるべえは五〇さいになって、しんこくににゅうこくしたので、よていじゅみょうはむせいげんになりました」と書いた書類を角べえに見せる。

シーン11  江戸の郊外に、長さ一〇〇mぐらいのまっすぐな長屋が三棟並んでいる。真んなかが人間の住む長屋で外側は養豚場になっていた。長屋の入り口に、みすぼらしい身なりの親子がたたずんでいて、丸べえと角べえが並んで歩いて近づく。角べえが丸べえに「ここにくると、大陸に、移住した気ぶんになりますなあ」と話しかける。丸べえが「販売計画書の『えた』と『』が私にはよくわかりません。罪人を意味するのか、元の、奴隷をたとえてるのか見当がつかない」と言う。角ベえが「おれは元の奴隷でいいと思うけどな」と言った。長屋の、なかの方へ入っていくと、南蛮人の、格(かっ)好(こう)をした元の奴隷が机に座って、筆で巻物を書いている。一〇人ぐらい豚をながめながら、巻物を書いていた。角べえが丸べえに「巻物は売れてるか」と聞く。丸べえは「売れてるよ。戦国時代の巻物をこうしてつくってることに誰も気づかない」と言う。角べえが「識字率を下げたあとは、こいつらの送りがなとあべこべな『ず』や『づ』を使えばわれわれ以外に読み書きが、できる者がいなくなる」と言った。丸べえは「その前に大陸へ移住しましょうよ」と言う。

シーン12  中学館の悪魔編集部。幸司が「そんなことになったら悪魔が売れなくなる」と叫んだ。典子が「編集長。どうかなさったんですか」と聞く。幸司が「時代小説の新英先生が急病で入院した。かわりに一〇〇万円ぐらいの原稿を選んで」と言う。典子が「本人からの申し出なんですか」と聞いたら、幸司が「思い出しただけで頭痛と吐き気がするそうだ。午前中に選んでおいて」と言った。典子は窓ぎわの金庫をあけて、値札がついた原稿の束をとり出す。幸司は「えたに巻物を書かせる話は読んだ記憶があるな」とつぶやきながらデータ室に向かう。幸司はデータ室のパソコンで検索しながら、「わざわざ旧漢字で入力しやがって」とつぶやいたがデータは、なかった。 

シーン13  長寿集落。机の上に印字された紙がある。「一〇一六ねん一がつ一一にち。さかたに一お。だれもよみかきができなくなったらこっちではんばいけいかくしょもしさんひょうもぜんぶつくるから」。一おが直径一〇㎝ぐらいの竹で、酒の入れ物をつくっている。一おが「酒を飲んだら読み書きができるような気ぶんに、なれるようにするからさ」と言う。
 中学館の食堂で幸司が生(しょう)姜(が)焼き定食を食べながら「読み書きができるような気ぶんってなんだろうな」と考えていたら、「その調味料だから」と言う声が聞こえた。まわりを見まわしたが、腹話術を使ったような人物はいない。幸司は「野菜を、食べてる豚を食べれば、野菜を食べたことになるか」とつぶやく。配達係の男が、前の席に座ろうとしていたら、「そこ私の席です」と言いいながら典子が座った。お盆にハンバーグを、パンではさんだ物を二つと、コーラを載せている。典子が「編集長。選んでおきました。大修先生の、一五〇万円の原稿を一〇〇万円に値切ればいいんですね」と言う。幸司が「そうすると五〇万円まるまるもうかるわけだな」と言って、典子が「新英先生の見舞いはどうしますか」と言った。幸司は「干し魚の袋詰めでも送っておいて」と言いながらコーヒーを飲み干す。

シーン14  江戸の町。大道芸人が語りながら十字架三つをお手玉のようにしている。他に十字架が六つ置いてあるから、あれを全部お手玉にするんだろう。大道芸人が「隠れキリシタンの幸司と典子は、長崎の町から、自由の町江戸へ向かって旅を続ける」と語りながら十字架を四つにした。手前の箱に一文銭が一枚投げ入れられる。大道芸人はさらに、「嘆願書を懐に、したためた幸司にとおりすがりの侍が『そいつをよこしてもらおう』と声をかけた。幸司は『この道は江戸へ続いてるんでしょうか』と聞き返す。侍が『貴様は隠れキリシタンだな』と言いながら刀を振り上げる。典子が『きゃあ』と悲鳴を上げた。幸司は腰につけてた十字架を、侍に投げつける」と語りながら十字架を六つにした。一文銭がばらばらと一〇枚ぐらい投げ入れられる。大道芸人は「幸司の十字架は、侍の目玉に命中して、侍は後ろにひっくり返った。幸司は十字架を拾って、二人の旅はまだまだ続く」と語りながら十字架を九つにした。馬でとおりかかった角べえと丸べえはちょうどその場面を見て、馬をとめる。角べえが「南蛮人の血が三種類まざってるやつは時空を超えるんだろう」と丸べえに声をかけた。丸べえが「最後を失敗するとおしゃかになるんだ」と説明するように言う。大道芸人は九つの十字架を三〇秒ほどお手玉にしてから、最後に片手でひとつずつそろえて全部受けとめて目を見開いた。箱に一文銭が一〇〇枚くらい投げ入れられる。

シーン15  福生組資料館の事務所。角べえが丸べえに「このままさらに読み書きができなくなると、未来からこっちに、さかのぼってくるようになるな」と言う。丸べえが「すでに各地の大名屋敷で、元の奴隷が巻物を書いてる。未来に残る物は送りがなの間違った不規則変化しかない」と言った。角べえが「そうすると未来で書物を読むときに、われわれの時空にさかのぼってくるわけだ。われわれがもうかるように、細工するべきだな」と言う。丸べえが「どのようにやりますか」と、聞くと、角ベえが「われわれが国語辞典をつくって、画数が多い漢字を未来のやつらに覚えさせれば、大陸に移住してからでも指示ができる」と言った。丸べえが「それはいい考えだ。さっそくやろうか」と言う。二人で、馬であちこち駆けまわって事務所にびっしり書物を並べる。

シーン16  中学館の悪魔編集部。幸司がパソコンでスパイダソリティアをやっている。幸司が「また周回遅れパターンか。もう二時間以上クリアできてない」とつぶやく。典子がやってきて「学生バイトがいつもより多く集まってますけど」と言う。幸司が「なん人ぐらい」と、聞くと、典子が「全部で五〇〇人はきてます」と答えた。幸司は「説明を柔道整復師にやらせて全員立ち読みさせて」と指示してソリティアの続きをやる。幸司が「『日中戦争までやらないと』は誰のせりふになるんだ」と、つぶやいたらソリティアがクリアできた。
 二九階で机と椅子を前に詰めて、後ろに原稿を持った学生が五〇〇人ほど立っている。肩幅の広い柔道整復師が「講評を書くときだけ、そこの椅子とテーブルを使ってください。腰が痛くなったら私に、テレパシーで言うように。それじゃあ始めてください」と言う。
 長寿集落。一おが、先が黒くて短いわりばしみたいな棒を煉(れん)瓦(が)のような物でこすって、火をつけてすぐ、直径四㎝くらいで長さ一〇㎝ぐらいのろうそくに火をつける。ろうそくを机に立ててから、紙に印字し始めた。「にっちゅうせんそうのことはこだわらなくてもいいよ。きみのなまえはたしか。われわれがけつぎしたことだから、しょうがないのさ」。

シーン17  福生組資料館の事務所。丸べえが西洋紙に万年筆でことばを書きながら「国語辞典の編集をやると未来がかいま見えるな」と言う。角べえが「大陸で近親婚の意味あいがある漢字をそっちに書けばいいんだ」と言った。丸べえが「するとこれはわれわれの販売計画書になるわけだな」と言う。角べえが「そうだ。複雑な漢字の方が、頭の体操になる。はっはっはっは」と笑った。丸べえが紙に阿片と書きながら、「未来で日本と大陸が戦争になる原因は日本向けの、貨幣の供給を停止したことだとさ」と言う。角べえが「けちくさいやつだな。おれの子孫じゃないぞ」と言った。丸べえが「おれの子孫に、流れ弾が当たらないようにできるだろうか」と言う。角べえが「それは無理だな。おれたちが移住して孫の代になったら、こっちの、国との関係をわからないようにするしかない」と言った。丸べえは紙に阿呆と書きながら、「いずれにしてもわれわれがいないとここの時空は、なにもわからないな」と言う。

シーン18  江戸の町。両替商の店先。ちょんまげの男が入っていくと、高価な着物を着たヒス子(女性宇宙人)がすぐ出てくる。ヒス子が「なにかご用でしょうか」と聞いたら、男が「長屋の屋根をなおすお金が、いるんですが」と言う。ヒス子が「修繕費でございますね」と言いながら、紙に筆で「屋根の修繕費」と書く。ヒス子はそれを男に渡して「これを資料館に持っていって小切手と交換してきてください」と言って小切手の見本を見せる。男は資料館に向かって歩き出す。男が資料館に着いて一階右側の奥で、普通の着物を、着た案内係の女性に紙を渡すと案内係は、「ちょっと待っててくださいね」と言って二階へ上がっていった。二階に着くと案内係は、事務所のドア越しに「長屋の、屋根の修繕費はいくらでしたか」と大きな声で聞く。丸べえが「二〇文だ」と言ったら、案内係は「二〇文ですね」と言って下へ下りていった。案内係は二㎝くらいの金属活字で、「二〇文」と印字してから福生組のはんこを押して、小切手をさっきの男に渡す。男が両替商に小切手を持っていくと、両替商の主人が「二〇文だな」と言いながら、天(てん)秤(びん)ばかりの、片方の皿に一文銭を五〇枚ぐらい置いてから、もう片方の皿に重りを置いて、釣り合うように一文銭を一枚ずつとりのぞき始めた。男がけげんな表情で見ていると、ヒス子が「一九文だったり二一文だったりしますが二〇文の重さに違いは、ないのです」と説明する。

シーン19  中学館の悪魔編集部。幸司がソリティアをやりながら「天秤ばかりの使い方は確かあったな」と、つぶやくとソリティアがクリアできた。幸司が「やっぱりそうだ」とつぶやいたら、ヒス子が「もういちど確認してください」と言う。幸司は「ぜにの重さがどうとか、昔読んだような記憶がある」とつぶやきながらデータ室へ向かった。幸司がデータ室のパソコンで検索すると、お金の重さで量を計算する使い方しかないようだ。幸司がヒス子に「もう終わりなんだろ」と言う。ヒス子が「なにかおもしろい話は、なかったでしょうか」と言う。幸司が「もうないよ」と答えたら、ヒス子は「それじゃあお元気で」と言った。
 福生組資料館の事務所。丸べえが紙に暗(あん)誦(しょう)と書きながら、「われわれはこのまま時空を超えることになるな」と言う。角べえは大陸の書物を見ながらうなるように「近親婚に近い漢字はどれだ」と言った。案内係がドア越しに「甥(おい)の出産祝いはいくらですか」と叫ぶ。丸べえが「五文だ」と強く言う。資料館の裏口に、つないだ馬の背なかにからすがとまって、馬が身震いしてからすをどかす。

シーン20  長寿集落。机の、上の紙に「らすとしーんはみんなでやるから」と印字されている。集落から少し離れた平地に高さ一〇mぐらいの石柱がそびえていた。石柱に窓のような空間が一〇か所あって、そこからロープが出ていて窓わくについている滑車で下へ続いている。下にも滑車がついていて、ロープが一〇本地面に置かれていた。石柱のてっぺんに、角材が左右に五mずつくらい突き出ていて、先端に椅子がついている。時空転送器のようだ。猿が入ったかごを、背負った一おがやってきて石柱に登り始める。一おがてっぺんに着いて、持っていたひもで猿のかごを椅子に縛りつけた。一おが反対側の椅子に座って、椅子についていたベルトでからだを固定して「いいよ」と、叫ぶと長寿集落の子供たちが三〇〇人ぐらい集まってくる。ヒス子が「三人で六五〇グラムの重りを回転させる計算になります。ちなみにこちらの世界は江戸時代と、関係はありません」と言う。三〇〇人で、ロープをつかんで「おうまのおやこは、なかよしこよし・・」と歌いながら引っ張る。回転体がまわり始めた。

シーン21  明治三年一月一三日。北京(ぺきん)の郊外に、ブロックづくりで平屋建ての家がある。周囲は雪がまだらに積もって、雑草がところどころに見えていた。若者が二人で、高さ四〇㎝ぐらいの陶器でできた瓶(かめ)を、たくさん積んだ荷車を馬で引いて近づく。家のドアをノックすると八〇歳くらいに見える老人が出てくる。一三三歳の丸べえだ。瓶を玄関のなかまで運ばせて「ごくろうさま」と言った。瓶は水のようだ。丸べえは瓶のふたを開けてひしゃくですくってひと口飲むと、真っ暗な家のなかへ入っていった。机の上に石油ランプが光っていて、丸べえが金属活字で紙に印字している。「一九三一ねん一がつ一三にち。だいにほんていこくそうりだいじんへ。おまえにやるかねはもうない。といいたいところだが二〇一七ねんだな。かわりに、べつなやつにかねをやろう」。
 中学館の、一階の受けつけに黒い背広を着て、アタッシュケースを持った男が現れる。男は受けつけの女性に「船山幸司さんに用が、あるんですが」と言う。女性が「どの、部署の船山かわかりますか」と聞いたら、男が「悪魔の編集長だと聞いてます」と言った。女性が内線電話をかけると、幸司が出て「なんの用件か聞いて」と言う。女性が男に聞くと、男は「私は小計警備保障の者で、船山幸司さまの、伯父(おじ)である新米英男氏の遺産をお持ちしました」と答える。幸司が三〇秒ほどで一階に下りてきて、男に「いくらですか」と聞く。男が「一億円です」と、言うと、幸司は「端数がついてないのはおかしい」と言ってから、「食堂でかぞえましょう」と言った。二人で食堂に入る。

シーン22  食堂でアタッシュケースを開けて、幸司が札束を調べる。幸司は続き番号の上と下を見てから、ぱらぱらと番号をチェックした。男はアイスコーヒーを飲みながらじっと見ている。幸司が「これは伯父から僕へ利息なしで無期限に貸しつけたお金と受けとめていいんだな」と言う。男は「はい。そのようなとり扱いもできるお金と聞いてます」と言った。すると幸司は、札束のかずだけかぞえて「確かに一億円ある」と言う。それを聞いて男は「こちらの書類にサインを」と言って、書類をさし出す。幸司が自ぶんのボールペンでサインしながら「アタッシュケースはもらっていいの」と聞いたら、男は「あなたの物です」と答える。
 
シーン23  幸司が銀行の融資担当者と話している。カウンターの上に図面があった。幸司が「地下一階が収録スタジオでサウンドクリエーターに開放します。一階から七階まで吹き抜け構造になってて、各階に巨大スピーカーを設置。完成するとスペック一五のサウンドが楽しめる巨大クラブになります。さらに文学部の学生バイトをバーテンとして雇って、各階ごとにジャンルが違う創作バーを開設。世界じゅうからあらゆるクリエーターが集まってきます」と言う。銀行の融資担当者が「世界じゅうですか。ファッションデザイナーも集まるの」と聞く。幸司は「当然です。文字にしないと服の生地や色が表現できない」と答える。
 福生組資料館の事務所。丸べえが角べえに「踊ってるだけで読み書きができるようにしろだとさ」と言う。角べえが「踊りなら鉄砲陣地に槍(やり)で突撃するやつだな。家族への、別れのことばを書いたやつがあったっけ」と言った。丸ベえが「鉄砲の音がする前によければ当たらない。くねくね動きながら進む」と言う。角べえが「腰を振りながら前へ進むのだな。元の奴隷に書かせよう」と言った。

シーン24  長寿集落。一おが机の、上の紙に印字している。「いちもんせんげーむのげきじょうようはできないな。あれはじょうじょうきぎょうめいをかんせんしゃがときどきさけんで、ぷれいやーがどうさをとめてうると、かうにわかれるとおもしろい」と書いてある。
 福生組資料館の事務所。丸べえが「それをこっちでやれば爽(そう)快(かい)になるわけだな」と言う。角べえが「創業者の、先祖の書類も全部集まるわけだからそうなる」と言った。丸べえが「国語辞典の編集が終わったら、われわれが未来の雇用形態を実践しようか」と言う。角べえが「そうだな。大陸に移住するまでそれをやろう」と言った。福生組の直営店には今日も行列ができている。印字された書類を次々と買いとって、番頭が奥に向かってなにか叫ぶと、着物を着た女性が、一文銭がぎっしり詰まったお盆を運んできた。
 
   おわり                                                            


超IQ研究所  劇場版⑴

2019-01-02 19:31:24 | 日記

シーン1 平安時代の農村と思われる民家で六〇歳ぐらいにも見えるが、年齢が、不明な男が机に向かっていた。服装は綿織りの着物で座布団を敷いて、足(た)袋(び)を履いている。机上に木の、棒の先端に金属活字を貼りつけた物がたくさん並んでいた。男はすずりの形をしたインク入れに、金属活字をつけてむだがない動作で和紙に「一〇一六ねん一がつ一〇にち」と印字する。建物の窓はわく組みだけで内側に雨戸がついていて、小鳥のさえずりが響いていた。男が「げきじょうようちょうじゅしゅうらく。さかたに一お」と印字する。さらに続けて「ふっさぐみ二〇ごうまるべえ四一さいのきょう。よていじゅみょう六七さい」と印字。
 舞台が江戸時代になる。瓦(かわら)屋(や)根(ね)の長屋が並んでいて、町の中心に、福生組の資料館があった。資料館は木造の二階建てで三階部ぶんが、三角形のトタン屋根になっている建物四つが、五mほど離れて正方形の形に並んでいて、それぞれ一階と二階に渡り廊下がある。渡り廊下にもそれぞれトタン屋根がついていて、窓が二~四か所あった。正面にある二つの建物は、資料館の入り口と出口で一般に開放されているようだ。着物を着た女性や書き物用の、すずり箱を持った男の姿が見える。渡り廊下に長テーブルがあって、お盆のなかに、平安時代の印字された書類がピンで固定されて、並んでいた。町人風な二人組の女性が「これ私の先祖だわ」と言ってはしゃいでいる。右側奥の建物二階に事務所があって、黒い商人服を着た四一歳の丸ベえが机に向かっていた。

シーン2 ドアをノックする音が聞こえて、丸べえが「どうぞ」と言う。四〇歳前後で鼻の下にひげをはやして、商人服を着た男が入ってきて、壁側にあった椅子を、机の前に運んで座る。男の名前は水野角べえ。福生組の輸送部門を担当していた。丸べえが「水野さん。販売計画書にある刀を、持ち歩く武士を本当にやる必要があると思いますか」と言った。角べえは「販売計画だから小判で遊ぶのに必要なんだろう」と答える。さらに「君の予定寿命は、なん歳になってた」と聞く。丸べえは「六七歳だ。ここにいるとこっちまで先祖に支配されそうだな」と言う。角べえが「町人は昔の試算表を見て、どんな反応をしてるんだ」と聞く。丸べえが「長寿集落の先祖と対話はできるようだが、戦国時代の役者にだまされて喜んでる。よっぽど書き物が嫌いみたいだな」と言った。角べえが「小切手をとりに、こられない者にどうやってお金を届けてる」と聞く。丸べえが「お金は働くかここにきて、手に入る。ただで手に入るのは、魚の干物だけだ」と言う。

シーン3  大手出版社である中学館の文芸誌「悪魔」編集部。編集長の船山幸司三九歳が「つくりながら考える江戸時代がパンクかあ」とつぶやく。南町典子三五歳が「編集長どうかなさったんですか」と聞いた。幸司がなにも知らない人に、説明するように「旺省(おうせい)星人日記で、いま売り出し中の新星片男が原稿を落としそうでさ」と言う。典子が「あとなん枚ぐらい」と聞く。幸司が「本人はできたつもりでいるが、本物の宇宙人がまざってることに気づいてないようだ」と言う。一階の受けつけに、スタジアムジャンパーを着て原稿のメモリースティックを持った三五歳ぐらいな新星が現れた。受けつけの若い女性が編集部に内線電話をかけると、三〇秒くらいで若い編集者がやってくる。待っている間に新星はメモリースティックを下から突き上げる動作で、受けつけの女性を笑わせていた。若い編集者は「新星さん。二八階の編集部までどうぞ」と言って二人でエレベーターに乗る。編集部に着くとすぐ幸司が出てきて、「新星さん。チェックするからそこで六時間ぐらい待ってて」と言って入り口の椅子を指さす。時計を見ると午前一一時。

シーン4  一〇一六年の長寿集落。印字された文字で「それじゃしんぼしくんが一〇五さいぐらいまでいきることになる」と書いてあった。集落中心の広場に、高さ二mくらいの石柱がある。上についている回転体から一mと一〇mの角材が突き出た時空転送器だ。一mの方に重りと、一〇人ぶんの持ち手があって、男が一〇人スタンバイしている。一〇mの方にブランコがあって、乗っている初老の男に一おが「今日は新星さんの、八〇歳の誕生日になったからこれで時空を超えて」と言う。一〇人で「おうまのおやこは、なかよしこよし。いつでもいっしょにぽっくりぽっくりはしるう」と歌いながら時空転送器をまわし始める。
 中学館の悪魔編集部。時計が午前一二時になって、ゴットファーザーのテーマ曲が社内に流れる。幸司が出てきて悪魔の先月号を読んでいた新星に「新星さん。昼食にしましょうよ」と話しかけた。二人でエレベーターに乗って一階の食堂へ向かう。一階に着くと、幸司が「新星さん。うちの食堂は始めてでしたか」と聞く。新星がうなずくと、幸司が「うちの食堂はまんがが読みほうだいで宇宙一安全なんだ」と言う。新星が入り口のメニューを見て「ザンギ定食が安いですね」と、言うと、幸司が「新星さん。ザンギ定食はわなですからやめにしましょう」と言った。どこからともなく「うどん定食を選ぶんだろ」と言う声がして、幸司がうどん定食の食券を二人ぶん買ってなかに入る。

シーン5  食堂に入った二人はうどん定食のお盆を持って、テーブルを向かい合わせに、椅子に座る。新星が調味料をいじくっていると、幸司が「新星さんは国語辞典をなん冊使ってますか」と聞く。新星が「五冊だけど」と言ったら、幸司が「弊社の字語百科事典もよろしくお願いします」と言って頭を下げる。新星が見抜いたように「本物の宇宙人がまざってる部ぶんは、どの辺ですか」と聞いたら、幸司が「郵送でも問題は、なかったはずでしょう」と言ってから、「五時まであそこにいてください」と言う。二人でもくもくと、うどんを食べていると幸司が思い出したように、「新星さんのご実家は、日本酒の工場を経営されてたそうで。その後再建事業は進んでますか」と言った。するとさっきの声がして、「兄が再建して、自ぶんは小説を書くことができると言え」と言う。新星がそう言おうとしていると、幸司が「そうですか」と言ってから、「あとはこっちでなおしておきますから、今日は帰っていいですよ」と言った。新星が「字語百科事典っていくらぐらいするんですか」と、聞くと、幸司が「謹呈用の縮小版があるからさしあげます」と言う。新星は字語百科事典をもらって帰る。

シーン6  江戸の町を角べえと丸べえが並んで歩いている。角べえが「江戸の町は貨幣経済で物があふれて、未来のことばで言えばじゃぶじゃぶだ。あとは識字率をどこまで下げられるかだな」と言う。丸べえは「墨書きの巻物が読みやすいなんてことはありえない。なにが書いてあるかわからないけど家宝とするのにちょうどいいんだ」と言った。丸べえが「水野さんの予定寿命はいくつになってますか」と、聞くと、角べえは「七一歳だ」と答える。丸べえが「予定寿命は日本国内にいる場合だけのようだが」と言う。角ベえは「やっぱりそうか。われわれも五〇歳をすぎたら大陸へ渡って清の貨幣工場で世話になれば寿命が延びるわけだな」と言った。二人でキリシタンの道具を、専門に売る店の前で足をとめて、木彫りの聖母像をいじくりながら角べえが「問題は手土産をなににするかだ」とつぶやく。

シーン7  江戸の町。福生組の古文書を買いとる直営店に行列ができている。お婆さんが「先祖代々からつたわる武田信玄の巻物。どうかよろしく」と言って巻物を、商人服を着た番頭に渡す。番頭は巻物を少し広げて、「お婆さん。残念だけど墨書きの書類は買いとれないよ」と言って巻物を返した。お婆さんが店先に並んでいる巻物を指さして「これは、なんじゃ」と、言うと、番頭が「墨書きの書類は新しい方が、価値があるの」と言う。お婆さんはすごすごと帰っていく。しばらくすると鈴をしゃかしゃか鳴らして、別な番頭が「一文銭ゲームの得点表一〇〇枚つづりで小判一枚」と叫ぶ。そのとき、近所の女郎屋から若い女が飛び出してきて追いかけてきた男に向かって、短刀を自ぶんの首筋に当てて「そういうことなら私死にます」と叫んだ。とおりかかった武士が女の腕を峰打ちすると、短刀が地面に落ちて、女は追いかけてきた男に引き戻された。

シーン8  中学館裏の社員通用口から大学生がぞろぞろと入ってきた。二九階の少し広い部屋に三〇〇人ぐらい集まる。幸司が出てきて「みなさんには悪魔新人大賞の選考審査をやってもらいますから」と言う。全員に応募してきた原稿を配って、「読み終わったらこの用紙へ講評を書くように」と言いながら旺省星人のイラストが入った便(びん)箋(せん)を渡す。典子が「のどが乾いたら部屋を出たところに、ドリンクサーバーがありますから自由に飲んでください。夕食は午後六時から六時四五分の間に、一階の食堂で食券を買って、各自で食べること。筆器具を忘れた人はいますか。いませんね。それじゃあ始めてください」と大きな声で言う。典子が「大学生のバイト代はいくらだったかしら」と、幸司に聞くと、幸司は「時給一五〇〇円だけど崇高な精神労働だからそれでも安いぐらいだ。悪魔の販売部数は一〇〇万冊以上だから、すずめの涙さ」と言った。

シーン9  新星はパソコンで新作を書いていた。「福研星人との対話」だ。「ぴよぴよぷるるるん。ぴよぴよぴよ。おれのハートはすとれーとふらっしゅだ」と書いて、「ひらがなじゃおかしいな」と思って、なおそうとしていたら、「ひらがなのままでいい」と言う声が聞こえた。新星は「編集部の人だな」と思って、さらに「ぱひょーん。ぱほぱほ。ぱらりらぱらりら。ぱららぱぱぽひょぱらぱらぱ」と書く。新星は一〇〇〇文字ほど書いてから気晴らしに「チョコと和菓子の百年戦争」を読む。主人公が三月一四日を和菓子デーに、するように、各省庁に働きかける物語だ。新星は映画化されたら本当に男性が、バレンタインデーのお返しに、和菓子を女性へ贈るようになるかもしれないと想像した。新星は福研星人のライバルとして角波星人を、つくることを思いついてさっそく書く。「われわれ角波星人は福研星人を敵だとは考えてない。かなかなかな」新星が月面基地殺人事件に発展させる方法を考えていると、「年号を二〇四〇年にして」と言う声がする。新星は本当の宇宙人かと思って、「なに星人ですか」と聞いたら、「福研星人じゃ」と答えた。新星が「読み上げてくれるんですね」と、聞くと、「福研星人が植物で、角波星人ががらくたの寄せ集めじゃろ」と言う。新星は福研星人の声色を使う先祖と対話しながら、続きを書いた。

 つづく


超IQ研究所  5 

2019-01-02 09:40:30 | 小説

三三二三の悪魔   [九七八年に万年筆をつくることができれば当時の書類を解読できます]
四七四三の悪魔   [油性のインクはつくれるけど、文字の線が二㎜ぐらいになるわ]

五六四一の悪魔   [五㎜四方くらいの金属活字よ。ひらがな四六個と数字一〇個を使う。筆を使って墨で書いてるのは「子孫だまし」だわ]
機山   [文章ができた]
 一七七七年未明。日本国内では豪商福生組が政治と経済のほとんどを牛耳っていた。各地に番所を設置して戦国時代以前の、書類の買いとり業務をやっている。高価買いとり例は「かいてんとびらおにごっこのけっか。はにわのうま三五さいがまいなす七てん。きくのあお三九さいがまいなす一九てんぐらい。まつのみどり二八さいがまいなす二三てん。さくらのももいろ三一さいがまいなす三〇てんくらい。ふじのむらさき四三さいがまいなす三九てん。ぜんはんはまつのとさくらののおんなふたりにおにやくがしゅうちゅう。ごごからふじのがしめんそかをれんぞくできめられて、おにやくがおおくなる」でお米五㎏。集めた年貢のほとんどが、ゲームの得点経過を、印字した書類の買いとりに使われている。安いのは行政に使われた書類で、例として「九九九ねん九がつ九にち。みろくのあか五〇さいははれてせいじんになりました。きんしんこんをよぼうするため、とわだこしゅうらくからびわこしゅうらくへのいどうをめいじる」でお米一八〇グラム。ゲームの得点表は参加者に記念として渡されていて数百枚綴(と)じた物を小判で買いとることもある。福生組は国内にあった金属活字をすべて回収して、子孫だましの筆を使った文書づくりに、力を入れていた。福生組は金山の経営をしている他に、金属活字を使った運営手引き書によって、人材を育成して代官の派遣業務などもやっている。江戸幕府と一体化した福生組ではあったがその後、一部の地域で回収されずに残っていた書類を見つけた者が「識字率が低下したのは、福生組を野放しにした幕府の責任だ」と唱えて、討幕運動を始めたため、福生組は普通の豪商へと業態を変化させた。
四七四三の悪魔   [IQ二五〇の力で、福生組のデータベースを解読して]

三三二三の悪魔   [当時の労働は集団作業でゲーム形式になってて参加賞やトップ賞が賃金であったと考えられます]
四七四三の悪魔   [九七六年ね。「草むしりゲーム」や「あぜ板づくりゲーム風」の他に、普通のゲームも参加すればお金がもらえた]
機山   [まず草むしりゲームの書類だ。「九七七ねん八がつ八にちのくさむしり。さんかしゃ一〇にんで一二じかんかけてやさいばたけのざっそうをむしりとります。さんかしゃにじきゅう一もん。一いのひとには五もんおまけ。むしったざっそうをそばにすてるとさいせいするので、かごにいれて、はたけのそとにだすこと」。次にあぜ板づくりゲーム風。「九八七ねん二がつ二にちのあぜいたづくり。まきにつかうまるたからあつさがおやゆびのよこはばぐらいで、みほんのてっぱんと、おなじおおきさのあぜいたをきりだします。さんかしゃ五にんだけど一まい一もんをきんとうにぶんぱい。まずのこぎりのはさきをひくときに、けずれるようにちょうせいすること。さいしょは五まいぶんのかくざいをきりだすときに、じかんの、三ぶんの一ぐらいをつかいます。一〇ふんで一まいきれると三〇〇まいぐらいきれるけど二〇〇まいできたらおまけ五〇もん」]
四七四三の悪魔   [長さ三mの丸太が二〇本あって、長さ一mの角材づくりが一人当たり丸太四本を四時間ぐらい。四回切ると五枚で残り八時間が四八〇分。一人が四〇分で五枚切ると、八時間で三〇〇枚。一五分で一枚切ると、五人で二〇〇枚になる]

三三二三の悪魔   [「支柱倒しゲーム」で反応しました]
機山   [熟練したプレイヤーが顔を防御するお面と厚い布でつくった簡素なよろいを装備して、二人で対戦する。支柱は直径三㎝ぐらいで長さ一m五〇㎝くらいの竹を、一辺が一五㎝ほどの、立方体の材木に突き刺した物。支柱の根もとに、長さ一m五五㎝のひもがついてて、先端に直径五㎝の鉄製リングが結ばれてる。横四mで縦六mの長方形を四方向に展開した形がフィールドで、向かい合うようにそれぞれの陣地があって、奥に横四mで幅一mのゴール。支柱の先に、白か黒の布がついてて、それぞれ一〇〇本ずつ中央の、四m四方のスペースに、交互に少し間隔をあけて立てられてる。ゲームの進め方は、自ぶんの支柱を、鉄製リングが根もとまでとおってる状態にして自ぶんの、陣地のゴールへ運ぶこと。相手の陣地に入ることはできないが、相手の支柱を倒したり、左右のスペースに運んだりすることは自由。支柱はいちどに二つまでしか持ち歩けない。倒れてる支柱をまたぐのはだめ。重なって倒れてる支柱は一番上しかさわれない。支柱の材木を、フィールドの外に出したらだめ。ひもを巻いたり結んだりしてはいけない。自分の支柱を、先に自ぶんの、陣地のゴールに一〇〇本立てた方が勝ち。相手の支柱を、横のスペースに運んでリングをはずして倒したり、自ぶんの陣地に、すばやく一時的に置いたりして競う。書類は「一〇〇〇ねん六がつ六にち。しちゅうたおしでいんさつこう四六さいときんぎょ四七さいのたいせん。かいしすぐにいんさつこうのたおれこみこうげき。きんぎょはあいてのしちゅうをはこんでおうせん。いんさつこうが、じじんにはやく八〇ほんほどおいたが、きんぎょのわをはめるどうさがすばやい。きんぎょのどうさにむだがすくなくて五ほんさでかち。おまけ一〇もん。さんかりょうは一〇もんずつで、たおれこみでいんさつこうに二もんおまけ」]

機山   [基本は時間かせぎゲームだ]
三三二三の悪魔   [本の大きさで反応しました]
機山   [二人で対戦するゲーム。まず一辺が一〇mで正方形の陣地を一〇m離して二つつくる。中間に一m四方のテーブルを置く。厚さ一㎝で横が一〇㎝、縦が一五㎝の、木の板に、長さ一mのひもがついた物を一〇〇個ずつつくる。ひもの反対側は、直径一〇㎝の輪になってて持ち運ぶときはそこをつかまなければならない。それぞれの陣地に、直径三㎝ぐらいで長さ一mの竹が二〇〇本ずつと、直径二㎝くらいで長さ五〇㎝と一mの竹を、十字架の形に組みつけた物が一〇〇本ずつある。竹の棒と十字架は先がとがってて、地面に突き刺すことが可能。一時間ぐらいかけて自ぶんの陣地でひもがついた板を棒や十字架に巻いて、相手がとりづらいように並べる。ルールはひもを結んだり、ひもに巻いたりはだめ。落ちてる棒や十字架をまたぐこともだめだ。棒や十字架をつかんで動かしたりほうり投げたりは自由。足でけることはだめ。板は輪の部ぶんをつかめばなん枚でも持ち歩ける。相手陣地でひもをはずして、板を先にテーブルへ全部運んだ方が勝ち。問題はどのくらい時間がかかるかだな]
四七四三の悪魔   [棒を一八〇本で正方形の形に並べて一〇〇ます。十字架がます目にひとつずつある場合ね。直径二㎝だから約一六回転巻けるわ。一回転一秒は無理だけど二秒弱で三〇秒あれば棒をよける動作も可能。はずすのが五〇分。運ぶのに一〇分かかって六〇分ね。十字架を持ってほどくようにはずすことができればもっと早いけどこの大きさじゃ一秒は無理]
機山   [書類は「九九九ねん九がつ九にち。かぶとむし三二さいとほととぎす三〇さいがいたはずしでたいせん。さんかりょうは二もんずつ。さきにじゅんびができると五もんで、かつと一〇もん。かぶとむしが二まいまきじゅうじか五〇ほんでせんちゃく。ほととぎすは一〇まいまきじゅうじか一〇ほんにたけをつきさしてかこう。かいししてしばらくはほととぎすが、たけのおきばにとまどっていたが、一〇まいまきのいりょくでさがひらいて、ほととぎすのかち」]

三三二三の悪魔   [「石とりゲーム」で反応しました]
機山   [一辺が五m四方の陣地をふたつつくって、はさむ形で二m四方のテーブルを置いて、二人で対戦するゲームだ。大きさが三~四㎝のやや丸い石を、自ぶんの陣地に、相手が拾いづらいようにそれぞれ一〇〇〇個ずつ置く。一辺が五㎝で、立方体の材木が一〇〇個ずつあって、石の上に置いてもよい。ゲームの進め方はお互いに、相手の陣地に入って、石を一〇個拾って皿に置く。それをテーブルに運んで、テーブルの溝にはめる。一〇より多い場合は皿に戻すこと。少ない場合はそのかずだけ拾いなおす。先に、テーブルの溝に一〇〇〇個並べた方が勝ち。ルールは石一〇〇〇個のなかに、赤い石が一〇〇個ずつあって赤い石をいちどに二個以上運んではいけない。材木をけるのはだめ。さわったり動かしたりした石は皿に置かなければならない。材木の上に石があるときは材木を、動かす前に石を拾うこと。時間はどうなると思う]
五六四一の悪魔   [テーブルのそばに、置かないように、均等に並べた場合は時速六㎞なら六秒で一〇mだから、一〇〇回運んで移動に一〇分。拾うときと並べるときに、一個一秒なら三三分ぐらい。だけど材木三つで、赤い石を囲んで上に別な材木と、赤い石を置けば六秒よけいにかかる。それを二五個つくるとプラス二分三〇秒。材木一〇〇個をとりでのように積んで赤い石ばかり一〇〇個置けば一〇分。とりでを遠くのかどにつくって、他の石は、反対側のかどに置けば最大ね]
機山   [書類は「一〇〇一ねん五がつ五にち。まえじま三一さいといぬわし三〇さいがいしひろいでたいせん。さんかりょうは四もんずつ。じゅんびがはやいと五もんで、かつと一〇もん。いぬわしはとおくにあかいいしをおいて、うえにざいもくをおくさくせんでせんちゃく五もんもらう。まえじまはあかいいしとざいもくで五〇こずつとおくのかどにとりでをふたつつくって、ほかのいしを、だいざのちかくにおいている。しあいがはじまるとまえじまは一〇こめにあかいいしをひろうほうほう。いぬわしはちかくからじゅんばんにひろっている。いぬわしが九〇〇こひろってならべたときにまえじまははんぶんいじょうのこっていた。いぬわしがざいもくの、すきまのいしでもたつきはじめる。まえじまのうごきがだんだんはやくなった。あかいいし六こさでまえじまのかち」]

三三二三の悪魔   [「一文銭ゲーム」で反応しました]
機山   [まず一辺が四mで正方形の陣地二つに、はさまれるように一m四方のテーブルがある。一文銭(直径二五㎜ぐらいで穴があいてる)に長さ五〇㎝のひもを結んだ物が五〇〇枚ずつあって二人で対戦。テーブルの横に大きさが一〇㎝前後でわりと平らな石を一〇〇〇個ずつ準備。それを相手に、一文銭が拾いづらいように、自ぶんの陣地に並べる。もちろん一文銭は石の下に五〇〇枚置く。先に相手陣地の一文銭五〇〇枚を拾って、テーブルに置いた方が勝ち。ルールは、石の上に石を置いてはいけない。石をけったりほうり投げたりもだめ。石を陣地の外に置いてはいけない。石を踏むのはだめ。石は持ち上げて静かに置くか転がすこと。陣地の外に出てはいけない。一文銭はひもの部ぶんをつかむこと。ひもを石に結んではいけない。さてどうやって遊ぶ]
四七四三の悪魔   [奥の、四mかける二m五〇㎝のスペースに石をびっしり置くと最長ね。まず手前の外側から、四番目~三七番目の石を三〇㎝ずつ転がして、足場をつくる。奥と外側の三列は一〇㎝転がすだけでいい。一〇㎝転がすのに一秒かかるとして三四かける二二かける三回が二二四四秒。外側は二五かける六プラス三四かける三で二五二秒ね。脱出するときに一m飛べるとして(一九マイナス一〇)かける三列かける三回で八一秒。全部で二五七七秒だから約四三分。一文銭を一秒で拾うとして八分三四秒プラス。これは足場が一〇二個ぶんだけど、足場が九個ぶんだと四番目~六番目からまっすぐ入って横に三回進んで飛ぶ。(二二プラス三一プラス九プラス二二プラス九プラス二二)かける三列かける三回が一〇三五秒。それに一回動かすだけの一〇〇〇マイナス三四五を加えると一六九〇秒よ。動かすだけで約二八分だけど石が不ぞろいだから、途中で足場がなくなるわ。三個のスペースに二個しか動かせない場合があるから、最初のが最善ね。並べるのに二時間くらいかかるわ]
機山   [書類は「一〇〇二ねん四がつ四にち。あじさい二五さいとやまどり三八さいがいし一〇〇〇こ一もんせんひろいでたいせん。じゅんびがはやいと八もんで、かつと一〇もんもらえる。さんかりょうは一もんだけ。あじさいがちゅうおうに、まるのかたちにならべてせんちゃく八もん。やまどりはおくにびっしりならべるさくせんだ。かいしするとあじさいはりょうてをつかって、まんなかよりを一れつずつうごかす。やまどりはそとがわをうごかすが、ときどき一もんせんがおちている。あじさいはりょうてでどんどんうごかす。やまどりは一もんせんをとおくにしかおいてなかった。あじさいのかち」]

三三二三の悪魔   [「輪投げ」で反応しました]
機山    [まず幅二㎝ぐらいで長さ六〇㎝くらいの、わった竹の両端をピンでとめて、直径二〇㎝ぐらいのリングを四〇〇〇個つくる。長さ一〇㎝ほどの黒いひもと白いひもをリングに二〇〇〇本ずつ結んで、二人で対戦。一辺が五m四方で、正方形の陣地が二つあってはさまれるように、二m四方でふちに高さ一〇㎝のフェンスが、ついたテーブルが二つある。それぞれの陣地に、直径二㎝ほどで長さ一mの先端がとがった竹を一〇〇本と、自ぶんのリング一〇〇〇個と、相手のリング一〇〇〇個を置いて準備。遊び方は相手の陣地で、相手のリングを全部外に出して、自ぶんのリングを先に、テーブルに一〇〇〇個びっしり並べた方が勝ち。ルールは、リングを動かすときは指でつかむか、竹をとおした状態で竹ごと動かすこと。テーブルはひもが見えるようにびっしり詰めてちょうどなので、山積みにして落ちた場合は詰めなおさないとだめ。竹は外に出してもかまわない。リングを踏むのはだめ。陣地の外に出てはいけない。ひもを結ぶのはだめ。さてどんな作戦になる]
四七四三の悪魔   [時間は相手のリングを外へ投げるときに一個一秒で一〇〇〇秒。移動はいちどに八六㎝ぶんぐらい持って二四回だと一四四秒ね。自ぶんのリングは拾うときとテーブルに詰めるときで一個一秒ずつかかって二〇〇〇秒。全部で五三分ぐらい。自ぶんのリングを中央に置いて、竹を遠くに突き刺して、相手のリングを地面にびっしり並べれば最長]
五六四一の悪魔   [幅二㎝のリングは三個ずつくらいしかつかめないわ。運ぶ時間がもっとかかって、外へ投げるときが五〇〇秒ぐらい]
四七四三の悪魔   [手でよけて二〇㎝幅の道を先につくれるわ。五〇〇秒短縮して四四分ぐらい。それから竹を引き抜くときに一本二秒で二〇〇秒]
五六四一の悪魔   [特に技術は、なさそうだけど。竹を遠くのかどにびっしり突き刺すとか、ぎりぎりの距離で勝負が決まるわ]
機山   [書類は「一〇〇三ねん三がつ三にち。ふうじん三九さいとはくちょう三五さいがわひろいでたいせん。さんかりょうは一もんずつ。じゅんびがはやいと四もんで、かつと一〇もん。ふうじんはちゅうおうで、じぶんとあいてのわをまだらに四〇こぐらいつんでから、わのなかにたけを、三三ほんくらいつきさしたものを三つつくっている。はくちょうはまだらに二〇こつんでから、たけを一ほんななめにつきさしていた。それを一〇〇ほんつくってはくちょうがせんちゃく。かいししてすぐはくちょうはちゅうおうから一ほんだけたけをぬいて、おちてるわをひろう。ふうじんは三ほんか四ほんぬいてからひろいはじめる。ひろうときはどちらもたけをじめんに、すいへいにさせててぎわがいい。だいにならべるそくどもおなじぐらいだ。はくちょうがりょうてをつかって二ほんぬこうとしてわのあいだにひっかかってもたついている。ふうじんのかち」]

つづく