今週は春分の日が間にはさまっていつもより長く感じる一週間ですね。それでは超IQ研究所よりIQ250の中国人、機山が解読した「広島原爆」を紹介しましょう。
昭和一〇年未明。浄土島斬り男三〇歳は鳥取にある薬屋の次男だったが、原料の仕入れを探す関係で、長春の治安部隊(日本軍)に志願していた。治安部隊の仕ごとは礼儀正しくふるまってなにもしないであちこちうろつくだけだ。斬り男は農家をまわって、原料を物色していた。ある日斬り男は一か月ぶんの棒給をはたいて骨董屋で、「日本人のルーツが見える」という紀元前の壺を買う。当時は日本軍の関係者を相手に、骨董品を売りさばく店がたくさんあって、商業店舗のほとんどで骨董品をとり扱っていた。斬り男は水さし用の壺を調べて、慎重に選んで本物を買ったつもりだったが、買った翌日に「失敗作だ」と言う陶芸家の声が聞こえる。幽霊じゃなくて人間だ。斬り男は買った骨董屋の店主にかけ合った。店主は「間違いなく本物ですよ」と言う。斬り男が返品を要求すると、店主は「仕入れに使う金がなくなる」と言ってことわった。斬り男は逆上して店に飾ってあった古代の剣を、店主に突きつける。店主は「それは××の剣で高級品」と言う。斬り男は剣で店主の首をはねる。はねたというよりは剣が店主の首にめり込んで、血しぶきが飛び散った。それを見ていた奥さんが叫ぶ。斬り男はとがっている剣の先端で、奥さんの胸を刺して引き抜いた。斬り男が洗面所で返り血を洗っていると、小学生の息子(店主を小学生に変換した幽霊)が出てきて「こんにちわ」と言う。斬り男は軽くうなずいてその場を去った。次の日に辞令が出て、斬り男は軍の山岳部隊に配置転換される。山岳部隊の仕ごとは毎日山に登ってゲリラが潜伏していると思われる場所を探索することだ。見えない敵と真剣に戦う山岳部隊の仕ごとはきつくて、斬り男はくたくたになった。斬り男はある日「ゲリラの指導員を掃討した証拠があれば帰国してもいい」という情報を耳にする。斬り男が軍の情報部で確認すると、「本当だ」と言う。斬り男は休暇をとって情報部で聞いた「証拠を確認する場所」へ行った。旅順の港に、近い教会の前に人だかりがある。奥で入り口に机を置いて、焼けた帳面を鑑定している軍服姿の男が見えた。書き写したり別に書類を書いたりして、一〇分ほどで証明書を手渡している。斬り男は出てきた男に「証拠をどこで買ったんだ」と聞く。男は「あそこの喫茶店で買える」と言いながら喫茶店を指さす。斬り男は証拠を買って無事に帰国した。帰国した斬り男は仕入れ先の開拓がおしゃかになって、実家に帰れず、広島にある在郷軍人会の宿舎で生活を始める。そこでは本物の、紀元前の壺が手に入った。壺を見ていると心が晴れやかになる。斬り男はラジオを聞きながら、壺をながめて、酒を飲んで、毎日をすごした。在郷軍人会の宿舎に、よく華僑が金貨を売りにくる。斬り男は安い焼酎しか飲まなかったので買うゆとりがあった。斬り男は十円金貨と二十円金貨を一枚ずつ持っている。どちらも「本」の文字に手変わりが、ある物だったが斬り男は気づかなかったので本を書く気にも、読む気にもならなかった。斬り男は気晴らしに突撃ラッパを吹いたり、馬を乗りまわしたりしながら、毎日をすごす。斬り男は年月がたつのを忘れた。
昭和二〇年八月六日未明。広島にある在郷軍人会の、事務所の真上に原子爆弾が投下される。斬り男は消失した。斬り男は骨董屋の床で目が覚める。夢だったのか。そばに店主と奥さんの死体がある。斬り男が起き上がって返り血を洗面所で洗っていると、小学生の息子が出てきて「部隊に戻って」と言う。斬り男が向かった先は山岳部隊の宿舎だった。宿舎の前に不思議な装備品がずらりと並んでいる。隊長が「これよりゲリラ掃討作戦を行う」と叫ぶ。斬り男は光が輝くなにかの金属でできた剣を手にとった。部隊が宿舎を出ると、道路に剣を持った古代兵士の大軍がいる。隊長が「ぶった斬れ」と叫ぶ。古代兵士の胴体は服に砂袋が織り込まれていて、胴体を斬っても砂が落ちるだけだった。意識的に剣をぶつけると相手も合わせてきて、えんえんと剣をぶつけ合う。剣をぶつけた状態で古代兵士と目が合ったら、古代人の濃い息づかいが聞こえてきてやめたい気ぶんになる。斬り男はなるべく相手の目を見ないようにして、立ちまわりの演技みたいに剣をぶつけた。隊長が「首をはねろ」と叫ぶ。斬り男は古代兵士の首をはねようとしたが、相手が飛びはねてかわす。斬り男は相手が軽やかに着地したのを見て「剣をぶつけ合うのはめんどうだな」と、思っていると古代兵士に首をはねられた。斬り男はまた骨董屋の床で目が覚める。洗面所で顔を洗うと小学生の息子が出てきて、「石をぶつけるといい」と言う。宿舎に戻るまでは普通の町並みだが、なぜか他のことができなかった。斬り男は宿舎に戻って「光の剣」と「投石器」を持ち出す。投石器は石とレバーをセットして、車輪を動かすとゴムが伸びて、重さ一㎏ぐらいの石を投げ飛ばせる構造だ。斬り男が投石器を押して宿舎の外に出ると、古代兵士の大群がいる。投石器を水平にセットして、向かってきた古代兵士に発射すると、頭に命中して倒れた。斬り男は倒れた古代兵士の首をはねる。斬り男が投石器に戻ろうと、すると別な日本兵が投石器を押しながら前へ進んでいた。斬り男が「それはおれがやるから」と、叫ぶと別な古代兵士が剣をぶつけてくる。斬り男はいつからか毎日同じようなことを果てしなくくり返していた。古代兵士の首をはねても次々と出現する。首をはねられると骨董屋の床で目が覚めた。斬り男が古代兵士を倒した最高記録は三人だ。装備に電動カッターがあってそれを使用する日本兵は、おもしろいほど古代兵士の首をはねていたが、斬り男はいちども使ったことがなかった。斬り男は相手の首をはねた回数よりも、はねられた回数の方が多い。ある日斬り男は古代兵士と剣をぶつけ合っている最中に、空からたれ下がったロープを発見する。斬り男は古代兵士を押し飛ばしてロープによじ登った。斬り男が登っていくと、ロープが左右にゆれている。下を見ると他の日本兵たちもロープに登ってきていた。斬り男は剣で足もとのロープを切る。叫び声がして、ロープが軽くなった。ロープをどこまでも登っていくと上に穴が見える。斬り男が穴からはい出るとそこは美術館だ。壁に豪華な額縁の絵がたくさん並んでいて、もんぺをはいた女性学芸員が一人いた。斬り男は女性学芸員を押し倒して強姦する。いままでくり返していた時間の流れが別ななにかに変わると思った。しかし斬り男は骨董屋夫婦の死体を思い出して、気を失う。気づくと斬り男は小学生になった。というよりは小学生の目線になっている。同じ美術館だが学芸員の姿がなくて、山の絵が並んでいるようだ。壁に近づくとなにかがぶつかる。斬り男が自ぶんの足を見ると、牛か馬の足が見えた。しばらくして上下黒服の日本人二人が鏡を持ってやってきて「成績が悪いと食肉にされるんだ」と言う。鏡のなかに、牛になった斬り男の姿があって、耳に「三」のタグがつけられている。斬り男は牛がたくさんいる牧場に送られた。軍服を着た老人がいて「おまえらは社会に役立つ幽霊のえさとなる」と言う。老人が言ったことばの意味は、わからなかったが斬り男は脳裏に占領軍の前で、一億総ざんげをしている日本人の姿が浮かんだ。斬り男は悲しい気持ちになったけど、涙のかわりによだれが出る。老人が「それを『牛の目』と言う」と言った。
おわり
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