― 自分の大根 ・自分のキャベツ ―
「奇跡のリンゴ」
NHK 「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班監修
幻冬舎
事務室の外で低いエンジンの音がする。
見ると、道路の向こうのサッカー場ほどの草地で小型のトラクターが動いている。耕しているのではない。雑草を踏みつぶしているのである。
いつもは何気なく見過ごすのに、今日は目が釘付けになった。
排気ガスがトラクターの前から出ている。運転席には椅子があるだけで屋根もフロントガラスもない。黒い排気ガスは一瞬運転手の顔を覆い、後ろに流れていく。時々アクセルを吹かすのかひときわ黒いものが顔を包む。
作業を終わるのに小Ⅰ時間はかかるだろう。コロナ予防のマスクはつけているようだが、あれでは肺はたまったものではない。
空気に限らず、畑にまく肥料や野菜にかける殺虫剤についても、日本人の健康意識は欧米人に比べると、数段低いように思う。
だからガンは一向に減らない。
2019年にはほぼ100万人がガンと診断されている(「最新がん統計」 国立がんセンター)。新聞にはしょっちゅうガンの相談が載る。
先日、運動公園で会った80過ぎの男性は胃や腸など3回もガンを患ったと話してくれた。「やっぱり、早期発見、早期治療だね」と、満足そうであった。そんな時はいつも腹の内で「違う。予防だよ」とつぶやいている。
田舎に家を建て、幸運にも傍に小さい畑を持つことができた。それ以来石油由来のものは一切使わないで「自分の野菜」を作っている。
季節によってはスーパーで買うしかない野菜もあるが、できる限り自分の大根やキャベツを食べる。ささやかながらこれが拙宅のガン予防法。
上掲本に主役として登場する青森のリンゴ農家、木村さんは野菜づくりのまたとない師となった。