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田舎ぐらし(43)

ー 嫁いらず観音 ー


  嫁いらず観音院
     (井原市ホームページより)

 岡山県井原市に俗に、嫁いらず観音院と言われるお寺がある。
その「嫁いらず」という呼び名が気になった。

 先日、テレビをつけたら、NHKの「よみがえる新日本紀行」という番組でこの寺を紹介していた(2021.9.26)

 寺は西暦737年(天平9年)僧侶行基によって開基された。ご本尊は十一面観音。お参りすれば、「老いても嫁の手を煩わすことなく、健康で幸せな生涯を全うできる」と言われている(井原市ホームページ)
早い話、年寄りの面倒は嫁がみるということか。

多くの場合、その嫁は長男と結婚した嫁である。

 戦後、憲法の定めで結婚は当事者間の合意のみで決まるとされた。にもかかわらず ーとりわけ農家ではー 戦前の考え方が色濃く残っている。結婚は実家と婚家、家と家の結婚という考え方である。

 ここから夫婦喧嘩の際よく嫁が口にする、“実家に帰らしてもらいます!”とか、“お嫁に行く”、“お嫁入り”、“嫁をもらう”・・・とかいうセリフが出てくる。みな頭が戦前のままになっているから口にするのである。

 それはさておき、そうやって、長男夫婦と長男の親、やがて生まれてくる子供と3代で家族をつくる。

 嫁は家事を切り盛りし、家業を手伝い、子供の世話をやき、やがて義父母が寝たきりになるとその介護にあたる。

 フランスでは長男であれ、次男であれ、結婚すれば父母から独立してふたりで別の家族をつくる。生まれた子供もやがて結婚すれば父母から離れて別の家族をつくる。ここには「家」はない。個人がある(仏 人類学者・人口学者 エマニュエル・トッド NHK TV 放送 放送日不明)。
  以下は推測になるが、フランスでは日本のような「家」という考え方がないことから、老人ホームが充実していて、嫁が介護するケースはないのではないか。

 「家」に入ることを選んだ嫁は健気だ。しかし、人生は一度きり、やりたいことがあるはずだ。多くの時間を年寄りの世話で終わらせるのも不憫な気がする。年寄りの方でも若いうちから自分のライフプランを練り直す時が来ているのかもしれない。

 変わった名前の観音さまに出くわしたせいで、取りとめのない話になってしまった。
( 次回は ー ニンジン ー )


 

 

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