ー 裸んぼいちご ー
珍しく雪になった。
吾輩はイチゴである。雪の中にいる。まわりのイチゴは暖かそうなビニールハウスの中にいるというのに、この家の主人ときたら朝写真を撮りに出て来たきり、あとはちらとも顔を見せない。
・・・イチゴは2年前にホームセンターで買ってきた。
2株買って、歩道に沿った土手に植えておいたら、1週間もしないうちに泥棒に持っていかれた。1株は残してあった。泥棒には2種類ある。いい泥棒と悪い泥棒。
残った1株は畑に移し、土手には “ 引っ越しました😁 ” と紙に書いた看板を立てておいた。
移したイチゴは夏の暑さ、冬の寒さもなんのその、みるみる増えて、初夏には毎日食卓を彩ってくれた。
ところで、イチゴには防除暦というのがある。細菌や虫から守るために農協が農家向けに提案している農薬の散布予定表である。植えてから収穫するまで、びっくりするくらい農薬をかけるようになっている。
対して有機栽培の農家では一滴の殺虫剤もかけないし化学肥料も使わない。
最近、イチゴに限らず野菜は自然のままに、余計な世話を焼かずにしておくのが一番、と思うようになった。そうすることで丈夫で栄養満点の野菜に育ち、食べる側にもベストのはずである。このことは先に書いた2種類のニンジンの観察で知った(田舎ぐらし(44))。世話をやかれたニンジンはすぐに腐り、もう一つは枯れてミイラになった。
自然の状態におかれた種は自分で土の温度やお天道さまの具合を見、まわりにいる何億という原生動物やカビ、ミミズなどと相談して芽を出す(有吉佐和子「複合汚染」191ページ、209ページ参照)。だから「芽、出ないじゃないか」と怒ってはいけないというのが野菜を作っている近所の親父さんの教えである。
また、柿やミカンに裏年、表年というのはない。果樹は今年は体力があると判断すれば実をつけるし、体力がついてないと思えば実はつけない。これは肥料屋のおやじさんの意見である。
人間も同じではなかろうか。最近子どもができないと悩んでいる夫婦が多いと聞く。もし、日頃ファーストフードや農薬まみれの野菜を食べ、殺虫剤や消臭剤の臭いの絶えない家の中で生活していれば、それは土中から微生物やミミズが逃げてしまった畑に種を蒔くようなもの、そんな気がする。
知り合いのご婦人がいる。子を産んだのは50歳。日頃から食べるものを始め、体にはことのほか気を使ってきたご夫婦である。
( 次回は ー 事務室にいるシイタケ ー )