タイの刑務所に服役し、ムエタイでのし上ったイギリス人ボクサーの実録映画「暁に祈れ」を観賞
今回の映画は、昨年12月に日本公開され、地獄と言われた刑務所で過酷な生活を送りながら、ムエタイ選手として生き延びることを選んだイギリス人ボクサーの実話に基づくもので、2017年カンヌのミッドナイト部門で話題を呼び、映画評価サイトロッテントマトで96%の評価を得た話題作にして問題作と言える作品です。
タイで麻薬に溺れ、自堕落な人生を送っていたイギリス人ボクサー、ビリー・ムーア。麻薬所持で捕まり服役することなったが、送られた先はタイで地獄の刑務所と言われる場所、殺人犯ばかりの服役囚、暴行、レイプ、汚職によりヘロイン売買がはびこり、まともな衣服も与えられず、劣悪な環境の中で自殺や殺人が横行する世界に身を置くことに。
そんな地獄の刑務所の中に、唯一選ばれたものだけが細やかな安住の場所となっているのが、ムエタイ選手となった服役囚が、練習するジム。ビリーは、生き延びるためにボクシング選手として売り込みムエタイ選手として生きることを決めます。
全編、血と汗と醜悪な臭いが漂ってきそうな刑務所生活。全身タトゥーを施した囚人たちが起こす刑務所内で起こす犯罪シーンは目を覆いたくなるような場面の連続ですが、その魔力に惹きつけられるように息をひそめ、唾を呑み込み、ビリーのサバイバル劇に目が釘付けになりました。
数々のボクシングや格闘技を描いた作品は、数多くありますが、地獄の中でもがき苦しみながら、ただ生きるために闘う道を選んだビリーの姿には、獣としての本能を感じました。ビリーを演じたジョー・コールに、刑務所経験のあるキャスト陣、そしてタイ初のボクシング金メダリストなど、極限までにリアリティーを追求した演出にはただただ脱帽です。
映画の面白さや凄みを感じたいなら必見の映画です。