岐阜県美術館で開催された「素材転生Beyond the Material」展が会期延長されたので観てきました。
今回の展覧会は30代の若手現代工芸家8人による作品展で、工芸と言う職人芸的な分野の中で現在日本でも注目を浴びている現代美術の世界に落とし込んだ作家たちの斬新で革新的な作品展でした。会期終了となっているので、僕なりに紙上公開で感想を述べたいと思います。
先ずは、磁土という陶磁器素材でできたサイボーグのような少年像がユニークな林茂樹と一目ではわからない布ようなガラスの衣装を金継の技法とミックスさせた大貫仁美。
林の石膏で型をとり焼成したパーツにより組み立て完成された人物像は釉薬を使わない素地が生かされた質感が近未来的な人物像にリアルな想像を掻き立ててくれます。一方大貫は純白のガラスの大小の破片を金継のようにつなぎ合わせた衣装は、その工程は発掘された破片を組み合わせた様でありながらその作品は未来からの現代にやってきた物のように思えます。
塩見亮介と根本裕子の作品。塩見は、戦国武将の甲冑を精巧に再現しながら、鎧兜をまとうのは擬人化された獣やドクロ。鎮座し一点を見つめるような表現は伝統と革新にあふれ観るものを威圧します。一方、根本の陶土により作れた狼の群れは躍動感にあふれていながら辺りを用心深く見渡す眼に縄張りに入ることをためらうような威圧感があります。まさに静と動の異なる威圧感を持つ作品です。
他にも鮮やかな色彩で紡がれた宮田彩加の巨大な刺繍。磁土に色絵金彩突起物で構成された富田美樹子の工芸作品は、高貴漂う絢爛な世界。和紙を立体的なオブジェや漆技法を凝縮した漆板は生と死の過去と現在が一体するような感覚を持ちました。
卓越した技術力に裏付けされた精巧な表現力をベースに若い世代の新しい感覚に満ちあふれた8人の現代作家たち。今後も注目したいと感じる展覧会でした。