JR穂高駅にほど近く線路沿いに佇むヨーロッパの田舎町に佇むような蔦の絡まる教会風の洋館。碌山館は30才で病により壮絶な死を遂げた近代彫刻の始祖とも言うべき荻原守衛(碌山)を称える美術館として1958年(昭和33年)に30万人に寄付と支援で生まれました。
日本における近代彫刻家と言えば、智恵子抄でも知られる詩人、画家でもあった高村光太郎を思い浮かべる方も多いかと思います。その光太郎と碌山の出会いは、印度式カレーやクリームパンの元祖として知られる新宿中村屋にありました。
新宿中村屋は、若き芸術家の集まる中村屋サロンとして、戸張弧雁、斎藤与里、中村彜などの大正期の芸術家を生み、その中心にいたのが荻原守衛でした。碌山館も以前は新宿中村屋にあり残された彫刻作品15点が故郷の地に収められました。
彼が信望したキリスト教にならい建てられたレンガつくりの教会風の建物の室内には淡いステンドグラスの丸窓から射す光の中で、碌山の彫刻作品が点在します。その短い生涯に中で2点が重要文化財に指定されおり、重厚かつ深遠な佇まいを感じます。また、碌山の壮絶な死を思うと命を削るような情熱が迸っているようです。
敷地内は、碌山の油彩、デッサンと資料室からなる杜江館、第一と第二展示棟では、碌山の友人である高村光太郎、戸張弧雁、中原悌二郎の彫刻作品と柳敬助、斎藤与里の油彩画、彼に関係する作家の企画展や特別展が開かれています。さらに地域の人々のボランティアによって建てられたグズベリーハウスは鑑賞後の寛ぎの場となっています。
幾多の人々の力の結集によって生まれた長き歴史を持つ碌山館、人々の碌山への思いが詰まった美術館にぜひ訪れてみてください。美術館の新しい発見が待っています。
碌山館は、クラウドファンディングにより募った改修費用で11月8から12月11日まで改修工事の予定だそうです。足場を組むため外観が観れない状況になるそうです。改修期間を避けて来館してみてはどうでしょう。