先日豊田市美術館で開催中の東山魁夷・唐招提寺御影堂障壁画展を観覧し、僕が好きな日本画家の小嶋悠司の追悼展が同時開催されてました。
写真を見る限り、この作品が日本画だとは思えない人も多いと思います。小嶋悠司は、その思想性と独自の画風で美術業界でも評価の高い日本画家でした。昨年6月に72歳で没するまで、創画会会員として活躍、晩年は故郷京都で京都市立芸術大学の教授を務められ後進の育成に尽力されました。
京都の地にありながら、日本画の伝統とは異なる作風で、日本画で用いられる和紙や絹地ではなく、粗目のキャンバスに描く作品は、日本画の岩絵の具だけでなく、卵テンペラをなども用いた暗く深みのある色調に、大胆にデフォルメされた人物や動物が特徴です。
そして何より、東寺近くに住み、密教美術の影響からか、そのテーマも穢土、凝視、地、聖母など殺伐とした世界の中にある深い祈りを感じます。その作風から好き嫌いは当然あると思いますが、現代美術を扱う当館が小嶋悠司作品を所蔵していることでも、ともすれば表面的なものだけにとらえがちな現代美術の洞察にもつながるように思います。
今回の展示は、6月11日まで、7月には奈良美智の展覧会も予定されてますが、ボランティアガイドによる作品解説も行われますので、ぜひ小嶋悠司の精神性に触れてみてください。