映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、美術ファン必見のドキュメンタリー。ウイーン美術史美術館の全貌に迫る「グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状」です。
本国オーストリアで異例の観客動員数を示した、世界を代表する美術館ドキュメンタリー。13世紀からオーストリアを支配してきたハプスブルク家収集品を収める美術館として1891年に開館。年間135万人の来館し、その1割が日本人観光客だそうです。
今回の作品は、開館120年を迎える美術館が、グローバル化の波の中で改装された2年間の軌跡を追ったものです。
豪華な天井画や壁画を持つ、ネオ・ルネッサンス様式の建物自体が芸術品そのもの。そこに現代美術家のシャンデリアや先端技術のガラスケースなどを備えた姿は、新旧の競演ともいうべき革新性を備えています。また、クラーナハ、フェルメール、カラヴァッジオ、ベラスケスなどの名画から絢爛豪華な美術工芸品、そして世界最多を誇る「バベルの塔」で有名なブリューゲルコレクションなどが、展示経過や修復光景などを通して映し出される様は、鑑賞の場とは違う面白さを感じます。
また、それぞれの立場で誇りをもって仕事をしている美術館スタッフの数々の言葉は、美術ファンならずとも金言のごとく響き渡ってくると思います。
この数年、世界の美術館を幾同様に転換期を迎え、様々な形で美術館ドキュメンタリーが制作されていますが、こうした作品を観ることで、一般的には敷居の高い美術鑑賞の垣根が取られ、美術鑑賞の広がりが生まれてくるように感じられます。
こうした作品を美術鑑賞の材料にして、美術館に親しみをもってもらえればと思います。