映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。天童荒太の原作を堤幸彦監督が映画化した作品「悼む人」です。
事故や事件で亡くなった人々を悼むために日本中を歩く青年、坂築静人。死者の知る人や家族から聞きながら、一人悼む彼にの前に現れたゴシップ記者の男と夫殺しの過去を持つ女性との関わりが加わって、寡黙な巡礼の旅に徐々に変化が訪れて行きます。
静人には高良健吾、ゴシップ記者には、椎名桔平が、夫とその夫を殺した妻には、井浦新と石田ゆり子が、さらに静人の余命いくばくもない母を大竹しのぶが演じ、揺さぶられるように激しく変化していきます。
ドラマ化された天童荒太の作品を観るたびに、重苦しさと鮮烈さが共存する独特の世界に惹きこまれていましたが、今回の作品は静謐さと激烈さが共存していて今までにない不思議な世界を感じました。
堤監督自身も、原作に敬意を表していて、今までの手法を一切使わずでデビュー作のつもりで挑んだそうですが、俳優陣の渾身の演技も加わって、観る人も悼む人に寄りそって魂が洗い清められような感覚を持ちました。
亡き人を思う気持ちは誰もが持っていても、一瞬たりとも忘れずにいられることは難しいと思います。それでも、脳裏に刻むことで、その記憶が蘇り愛する人を悼むことが出来る。そのことで生きている実感を得られのだと、この作品から伝わってきました。