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ムンク展 東京都美術館

東京美術館巡り。その1、今回は東京都美術館で開催中の「ムンク展―共鳴する魂の叫び」です。

今回の目玉は、再来日を果たしたムンクの叫び。美術ファンならずともお化けのような作品は誰もが知っている作品です。そのイメージの強さゆえか、他の作品に目を向けられることが少ないように感じます。その意味でも、今回の展覧会は、ムンクという画家の全貌を知る上で、実に魅力的な展覧会でした。

ムンクの生まれ故郷、ノルウェ―のオスロ市立ムンク美術館所蔵の作品で構成された本展は、自画像からスタート。その作品にはムンクの特徴的な色彩や筆致を感じると共に、そのデッサン力は、数々の巨匠と並べても引けを取らない。それは、彼の画家としての生計を支えたパトロンたちから依頼された肖像画にも伺われる。

ムンクの叫びは、彼がライフワークとして描かれ、様々な画材を使って数点の作品が存在するが、今回の初公開となる作品は、テンペラと油彩による描かれた作品で、絵画の新旧の画材を用いることで、叫びの中に生なる描写が鮮明となっているように感じた。そして、叫びの人間描写の背景にある燃えるような赤とうねるような空は、彼の代表作の一つである「絶望」にも表されていて、その作品が隣合わせに並ぶと、人間の静と動の中にある人間の内面が強く感じられた。

次に向かうと、今度は母や姉、保守的な美術界で抑圧された青年期から自由恋愛が叫ばれた時代を迎えることにより、ムンクの表現は解放へと向かい、マドンナや森の吸血鬼などの傑作を生みます。そこには、女性を霊的な存在としてとらえ、より幻想的に女性の神秘と魔力を表現していた。そこには、ムンクを生んだノルウェーの吸血鬼や魔女狩りなどの暗黒の歴史と重なっていいるように感じた。

そして、晩年へと向かう作品は、ナチスによる迫害や精神を病むなどの苦難に遇いながらも祖国を安住の地として定め明るい色彩で自然や人々を描いている、しかしながら、その色彩はムンクらしく染まれていて、唯一異なるのは、そこに光さすような明るさがあるからと思った。自画像からスタートした本展を象徴するかのように「自画像、時計とベッドの間」で締めくくられている。その作品は、直立不動で立つ自身の姿をバックに無数の自身の作品、横には生涯を刻むような柱時計、死を象徴するかのようなベッドが。まさにムンクの絵画への軌跡を象徴するような作品でした。

今回の美術館巡りの中で、衝撃的で最も魅力的な展覧会でした。



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