映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、橋口亮輔監督の2008年作品「ぐるりのこと」です。
几帳面な妻とぶっきらぼうな夫の日常を通して、1990年代の社会的背景と2008年に至る様々な事件を法廷画家の夫の姿を通じて描き、几帳面ゆえに、自分を追い込んでいく妻との再生を描いたヒューマン社会派作品です。
妻を木村多江、夫をリリー・フランキーが務め、取り巻くキャスト陣も個性派ぞろいで、今もっとも旬な俳優陣が総出演してる感があり、橋口監督の人脈の太さを感じます。
また、法廷にたつ加害者も、光石研や新井浩文が演じるなど当時の事件の背景と犯罪者心理をうまく、主人公に心情変化に組み合わせる見事な演出です。
近作の「恋人たち」では、日常に存在しうる人間群像を無名に近い俳優陣で構成しリアリティを持った演出でした。今回は、個性的な俳優を適材適所に配置したり、逆に相反した配役を組むなど。この時代から複雑化する社会の在り様を、役者の手を借りながら、うまく膨らませているなと感じました。