映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、ハンナ・アーレットの監督&主演による感動のミステリー「生きうつしのプリマ」です。
インターネットで見かけた、亡き妻に生き写しのオペラ歌手カタリーナ。メトロポリタンオペラのプリマを務める彼女に、夫は、娘ゾフィに手紙を託します。ドイツでジャズ歌手をしていた娘はナイトクラブを首になったことで、ニューヨークに向かいますが、プリマの彼女の母親の証言から、生みの親の存在を知ることに。
ドイツの緑あふれる閑静な街と華やかなニューヨーク。静と動が行き来する中で謎が深まり、ミステリーの旅が展開されていきます。そこに待ち受けていたのは、思いがけないカタリーナとゾフィの家族の過去でした。
今回の作品で光ってたのは、ハンナ・アーレントで冷静沈着な女性哲学者から自由奔放なプリマを演じたバルバラ・スコヴァ。そしてゾフィの父を演じたマティアス・ハービッヒは、ドイツで大ヒットした帰って来たヒットラーのヒットラー役が印象的でしたが、今回は過去に怯え、情緒不安定な男のシリアスな演技も見事でした。
立場や性格が異なる二人の女性の対立と父とその兄の対立。そこに、カタリーナの育ての母とマネージャーの存在が引き金となって、徐々に謎が解かれていいきます。そして二転三転するミステリアスな展開とラストでの感動。女性監督マルガレーテ・フォン・トロッタが仕掛けた罠は繊細にして徐々に感情を揺り動かされる巧妙な演出でした。