本年度のアカデミー賞が発表になりましたが、前年度が白いオスカーと揶揄され、今回は反トランプ旋風が吹き荒れ、作品賞ではアクシデントと例年になく荒れたアカデミー賞になりました。アカデミー賞受賞作品は、日本でも続々と公開されるので、後日に記すことにして、今回は、日本映画の隠れた話題作、妻夫木聡主演、満島ひかり共演の直木賞候補作品が映画化「愚行録」を観賞しましたので感想を述べたいと思います。
原作は、直木賞候補にもなった貫井徳郎によるミステリーの傑作。監督は長編映画の初メガホンの石川慶監督。巨匠ロマン・ポランスキーを輩出したポーランド国立映画学校を出た異色の経歴。
週刊誌の記者の妻夫木演じる田中が、未解決の一家惨殺事件を追う中で、そこに関わる友人たちの証言が、育児放棄により留置中の満島ひかり演じる妹との過去と事件が結びつき、犯人と共に衝撃的なラストを迎えるというもの。
証言をもとに繰り広げられる事件やそれぞれが抱える境遇、そして兄と妹に隠された十字架。重々しい中にも、日常の中に起こりうる出来事が何とも現実的で、それぞれの抱える嘘と罪が自分事として深く突き刺さる。後味の悪さが、むしろ病みつきになる毒を放っていて魔力のような作品でした。